軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

546 新天地 1

ずばしゃああああ!

どしゅっ!

すぱん!

すぱぱーん!!

4匹のシーサーペントの首が飛び、すたん、と船の甲板に降り立った、4人の少女達。

「ポーリンさんは、怪我人の治癒を! 他の者は、シーサーペントを殲滅!」

「「「おおっ!」」」

周りが水であるし、船が燃えるのを避けるため、レーナは得意な火魔法ではなく水魔法を連射した。火魔法が得意だというだけで、別に他の魔法が苦手だというわけではないため、攻撃力には全く問題ない。

マイルとメーヴィスは、当然ながら、剣での攻撃である。

ずば、どしゅ、すぱぱ~ん!

「「「終わった……」」」

「早過ぎですよっ! まだ、治癒を始めてもいませんよっっ!!」

ポーリンが文句を言うが、そう言われても、仕方ない……。

そして、怪我をしている船員達に治癒魔法を掛け始めたポーリン。

「あ、あああ、あの……」

固まっていた、シーサーペントと戦っていた者達のうちのひとりが、ようやく震えながらマイル達に向かって話し掛けてきた。

「あ、あなた様方は……」

「「「「あ!」」」」

目立たず、普通のハンターとしてやり直すつもりで別の大陸へと移動しているというのに、古竜に乗って現れてシーサーペントを瞬殺して、どうするというのか……。

「「「「むむむむむ……」」」」

そして、小声でこっそりと相談するマイル達。

「名前を名乗ったわけじゃありませんし、顔なんて正確に伝えようがありません。ここは、名乗らずに……、いえ、適当な名乗りを上げて、さっさとお 暇(いとま) しましょう! 別に、この人達の母国に行くわけじゃないですから、問題ありませんよ!」

「「「なるほど!」」」

先程、ポーリンの名を口にしたことは忘れているらしい。

そして、マイルは誤魔化すために適当な名乗りを上げた。

「我ら、正義と真実の使徒、竜巫女4姉妹! 心正しき者達よ、 精進(しょうじん) するがよい。

では、さらばじゃ!!」

そして、 重力魔法(ケイバーライト) でみんなを連れて空へと上がり、上空で旋回待機していたケラゴンに乗ると、シールドを展開して離脱!

それを、ただ呆然と見送る船の乗員達。

「たす……かった……、のか……」

「竜巫女……、様……」

「竜巫女、4姉妹……様……」

「ば、ばんざ~い! 竜巫女様、ばんざ~い!」

「「「ばんざ~い!」」」

「「「「「「竜巫女様、ばんざ~い!!」」」」」」

そして、船の周りに浮かんでいるシーサーペントの死体を引き上げ始める船員達。

かなり高く売れることと、竜と竜巫女様に救われたという奇跡を信じてもらうための証拠として、持ち帰るに決まっている。

素材の売却益と、この話を有料であちこちで話すだけで、一生食って行けるだけのお金になる。

このような幸運は、そうそうあるものではない。

船倉に籠もっている乗客達は、奇跡を目にすることもなかったし、シーサーペントの素材の分け前に 与(あずか) ることもない。

全ては、命を懸けて戦った自分達のものである。

((((((竜巫女様……))))))

ここに、新たな宗教が誕生した。

* *

「大洋を渡るような船じゃなかったですから、陸岸部が近そうですよね」

「……でも、それなら普通は陸地が見える距離で航行するものなんじゃないの? 陸地が見えなくなるほど離れて航行しなきゃならない理由がないでしょう? 外洋は大型の魔物がたくさんいて危険なのに……」

マイルの言葉にそう反論するレーナであるが……。

「良い漁場が陸から少し離れているとか、海峡部を渡る輸送船だとか……」

「まあ、あまり漁船には見えませんでしたけどね。定期航路とかではなく、何かそれなりの理由があったのではないかと。離島との往復便とかかもしれませんし……」

メーヴィスとポーリンが、そう指摘した。

「ま、いくら考えても推測の域を出ませんから、考えるだけ無駄ですよね。

ともかく、すぐに陸岸部が見えてくると思います。ケラゴンさん、地上から見られて騒ぎにならないよう、再度、高度を取ってください。

陸岸部に到達しても、しばらくは上空から偵察して、街や村の位置を確認します。それから、着陸に適した場所、そして私達の『始まりの街』をどこにするか、みんなで相談しましょう!」

『了解いたしました、マイル様!』

どうやら、マイル達がいた大陸……旧大陸……と新大陸との間は、太平洋を挟んだ日本と北米大陸のようにすごく離れてはいなかったらしい。それらに較べれば、割と近距離のようであった。

まあ、そうは言っても、古竜の飛行速度であれば、の話であるが……。

少なくとも、初期的な小型の帆船で、海棲や飛行型の魔物が多い中を簡単に渡れるような距離ではない。

大陸間の行き来が 途絶(とだ) えたのは、どれくらい前のことなのであろうか。

それは、高性能な船や航海技術が失われたからなのか、それとも、魔物の 蔓延(まんえん) が先だったのか。

いずれにしろ、大陸間の行き来も通信手段も、失われてからかなりの年月が経過しているようであった。

* *

「あそこなんか、いいんじゃないですか?」

かなりの上空を飛行するケラゴンの背中から、地上にある街を指差すマイル。

「う~ん、悪くはないけど、もっと国の中心部近くだとか、首都とかの方がいいんじゃないの?」

しかし、レーナはやや難色を示した。

地方都市より、首都の方が依頼件数が多く、難易度の高い……面白い……依頼があるからであった。

マイルが示した街は、海辺の街である。漁村とかではなく、かなり大きな街である。

この世界としてはそこそこ大きな港らしきものがあり、小さな漁船だけではなく貨物船の母港としての機能もあるように見える。

マイルがそこを選んだ理由は、元日本人としては至極当然のものであった。

……新鮮な魚が食べたい。魚以外の海産物も食べたい。

大きな港があるなら、遠方の珍しい食材が集まってきたり、様々な料理法が伝わってきているかもしれない。

それは、マイルがその街に固執するには充分な理由であった。

そしてレーナがあまり乗り気ではないのは、どうもその街は大きいとはいえ首都……王都や帝都……ではないらしく、ただの地方都市に過ぎないように見えたからである。

まあ、首都と最大都市……その国で最も栄えている大都市……が別である国、首都が複数ある……国家の中枢機能が複数の都市に分散している……国、そして首都がない国とかもあるが、ここは別にそういうわけでもなさそうである。

そしてこの港町は、どう見ても首都だとは思えなかった。

上空から見ただけなので確証はないが、王宮とか帝都城とかの特徴のある建物が見当たらなかったので……。

マイルとしては、海運の中心地である大きな港町を首都にすればいいと思うのであるが、まだそんなに船による遠方との交易が普及していない現在では、首都はそんな端っこではなく、国の真ん中付近にした方が政治や物流的に便利なのであろう。

そして当然ながら、ハンターとして活動するには、首都の方が効率がいい。稼ぐにも、名を売るにも……。

「でも、今の私達は、もうそんなに急いで稼いだり名を売ったりする必要はないよね? 今度はのんびりゆっくり、楽しみながらやるのもいいんじゃないかな?」

「急いで稼ぐ必要はない、というのには異議がありますけど、首都ではなく地方都市なら、マイルちゃんが何かやらかしても、 集(たか) ってくる貴族や商人達の数が限られるから楽ちんかもしれませんね。

それに、もしもの時にも、情報が他の街に広がる速度が首都の場合より遅いですし、逃げ出して本拠地を他の街に変える時にも、少しやりやすいかもしれませんね」

「なっ……」

ポーリンの言い方に少し言いたいことはあったものの、メーヴィスとポーリンは、マイルが選んだ街に、特に不満はないようであった。

そして、ポーリンとメーヴィスが言葉を続けた。

「それに、この街なら、マイルちゃんが魚介類で色々な美味しい料理を作ってくれますよ?」

「そして、いきなり首都から始めるのではなく、地方都市で活動を始めて、それから首都まで冒険の旅、というのもいいよね!」

「……とりあえず、その街の確認をしましょ。気に入らなければ、すぐに移動すれば済むことだし!」

レーナ、チョロかった……。

それに、『赤き誓い』はハンターパーティなのであるから、一時的に腰を落ち着けることはあるが、若い間はあちこち旅をしたり拠点を変えたりするのは普通のことである。なので、最初の街を選ぶのに、そう 拘(こだわ) る必要はなかった。

「じゃあ、とりあえず、あの街に行きましょうか。

ケラゴンさん、近くの、 人気(ひとけ) のない森に着陸してください!」

『分かりました!』

斯(か) くして、『赤き誓い』の新たなる拠点予定地が決まった。