軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

541 戦い終わって 5

「そして、他の者達のことだが、……勿論、多くの者達が昇格する。

但し、戦いに参加した者全て、というわけには行かん。それでは人数が多過ぎるし、昇格したばかりの者、昇格にふさわしいだけの実力がない者もいるからな。

実力に見合わないランクとなった者は、……死ぬ確率が跳ね上がるからなぁ……」

ギルドマスターの言葉に、黙って頷く『赤き誓い』一同。

「そして、組織として動いた兵士達はともかく、ハンター達の大半は、依頼を受けたわけではなく、勝手に参加した連中だ。……従って、依頼報酬は出ない。

うちも、慈善事業じゃないんだ。今回参加したハンター全員に、それに見合う報酬を払ったりすれば、大赤字で潰れちまうよ。

それに、一般民衆が無償で参加しているんだ、ハンターだけ特別扱いするわけにも行かん」

それは、仕方ない。マイル達が口出しできるようなことではなかった。

「その代わり、国からそれなりの報奨金が出る。そして亡くなった者達の遺族には、充分な額のお金と、子供達の教育、働き口に関して色々な配慮をしてもらえることになった。

それはうちの国だけの話だが、それを伝え聞いた他国も同様の対処をするだろう。

ここでカネを惜しんで大きく名を落とすという選択をする王族はいないだろうからな。

そんなことをすれば、国民からの信用を失うどころか、国内のハンター達がみんな他国に移動しちまうからな。

そんな国のために命を懸けて働きたいと思うハンターなんか、いやしねえよ。

ハンターは、土地から離れられない農民や、顧客を失いたくない商工ギルドの加盟者達とは違うからな。その街、その国を見限れば、簡単に拠点を変えちまう。

それがひとりふたりなら何の影響もないが、国中のハンターがみんないなくなっちまえば……」

そこから先は、言われなくとも分かる。

商隊の護衛。

魔物の間引き。

食肉や薬草の採取、納入。

宿屋や武器防具店、食堂や飲み屋の収入。

必要な仕事の受け手がいなくなるのに加えて、可処分所得が多い……、つまり金遣いが荒い連中がごっそりいなくなれば、街の景気は急落する。

つまり、ハンターを無下に扱う国はないだろう、ということであった。

また、別にこの日を予見しての行動ではなかったのであろうが、マイルのおかげで今、近隣諸国の孤児院は経営状況が好転しており、建物を増設して孤児の収容人数を増やすことも可能であろう。

国を、そして世界を守るために戦った英雄達の遺児である。邪険に扱う者がいるはずがない。

ギルドマスターの説明に、自分達に直接関係のあることではないものの、納得して頷く『赤き誓い』。

そして、ギルドマスターの口調がやや変わり、真剣そうな顔でマイル達に尋ねた。

「……で、アレは……、また来るのか?」

そう。

王宮での会議の席上でも尋ねられた、責任ある立場の者達が今、最も気になるであろうこと。

しかしマイルも、その答えを持ち合わせているわけではない。

「分かりません。連中の目的が……、いえ、そもそも目的があるのかどうかも分かりませんし、次元の裂け目ができた理由も分かりません。自然現象なのか、何者かの意志が介在する作為的なものなのかも……。

そしてあの最後の攻撃で、次元の裂け目を作る手段が完全に絶たれたのか、一時的なものなのかも……」

「そうか……」

多くを語ることなく、黙って俯く、ギルドマスター。

異次元世界からの脅威は、完全に解決されたわけではないかもしれないが、これはこれで良いところがないわけではなかった。

魔物達は再び襲い掛かってくるかもしれないが、もう二度と来ないかもしれない。

未来への不安は残るが、共通の敵、共通の脅威がある方が、他種族との争いも、人間同士での戦いも抑制されるであろう。

未来のことは、その世界で生きている人達が対処すればいい。

そこまでは面倒見切れないよ、と考える、マイルであった。

「 辛気(しんき) くさい話は、ここまでだ。

色々と被害は出たが、お前達のおかげでそれも最小限に抑えられた。

そしてハンター達は『世界のために無償で命を捧げ、最前線に立った勇者達』として、その立場が大きく向上した。あの戦いに参加した者達は、もう最底辺の落ちこぼれとか人間のクズだとかいって罵倒されることはないだろう。

また、我がティルス王国王都支部は、御使い様とそのしもべである『赤き誓い』、Aランクパーティ『ミスリルの咆哮』、その他大勢の『最前線の英雄達』を輩出した支部として、大陸中にその名を轟かせた。おかげで、俺のギルマスランク2階級特進と特別報奨金は確実……、げふんげふん!」

まあ、いつも苦労を掛けているのだから、それくらいの余禄はあってもいいだろう。

そう思って、聞こえなかった振りをしてやる、『赤き誓い』一同。

「それと、祝賀パーティー……というか、ただのどんちゃん騒ぎになるだろうが、お祝いの宴会が予定されている。

店の中なんかじゃ収まりきらないから、大通りを一区画区切って、通行止めにしてそこでやる予定だ。中央大広場だと料理や酒を運ぶのが大変だし、ハンター以外の者が大勢紛れ込んでタダ酒やタダ飯にありつこうとしやがるからな……。

お前達は酒はあんまり飲まないらしいが、これは死んだ奴らの弔いの意味もある。

大騒ぎして、生き延びた者達の喜びと感謝の声を、死んだ奴らの許に届けねばならんのだ。

……だから、お前達も出てくれ」

「……分かりました……」

みんなを代表して、メーヴィスが頷きながらそう答えた。

そんなことを言われたら、断れるわけがない。

そして、ランク変更の手続きを待つ間にギルドマスターと様々なことを話し、1階の連中に捕まらないように建物の裏側にある外部階段を使ってギルドを後にするマイル達であった……。

* *

「……女子爵に叙する。

そして同じくCランクハンターパーティ『ワンダースリー』所属、ブランデル王国国民モニカ及びオリアーナ、 女準男爵(バロネテス) に叙する」

「「「…………」」」

固まって、言葉を発さない3人の少女。

介添え役としてそのすぐ後ろに控えた男性がマルセラの背中をそっと 突(つつ) き、慌てて口上を返すマルセラと、それに続くモニカとオリアーナ。

「ははぁ、ありがたき幸せ……」

「「ありがたき幸せ……」」

(((どうしてこうなった……)))

マルセラは、貴族の娘であるため、子爵位を。

そして平民であるモニカとオリアーナは、 女準男爵(バロネテス) に叙せられた。

女準男爵(バロネテス) は、正確には、貴族ではない。

あくまでも『平民に与えられた、名誉ある称号』であり、身分は平民のままである。

一応、世襲称号ではあるが……。

ナノマシンが意図的に3人の名シーンを放映したため、重傷でも自分の治癒より攻撃を優先したマルセラも、マルセラを支え抜群のチームワークでAランクの魔術師に匹敵する能力を示したモニカとオリアーナも、貴族、平民を問わず大人気なのであるが、いくら活躍したとはいえ、平民を正規の貴族に取り立てるには、保守的なこの国ではちょっとハードルが高かったようである。

御使い様であるマイルと一緒に戦ったパーティメンバーであり、世界を救った英雄達として自国の威光を高めるための旗頭として『赤き誓い』を利用する気満々のティルス王国のような柔軟な対応をするには、上層部の頭が固すぎたのであろう。

まあ、『赤き誓い』には貴族であるメーヴィスもいるため、貴族と平民に対する褒賞にあからさまに差を付けると王家に対する国民感情が悪化するかも、と心配したのかもしれないが……。

なのでブランデル王国は功績を『ふたりの平民を率いて戦った、貴族の娘マルセラ』に集約して、平民である『お付きの少女達』には平民としての最高の栄誉を与えるだけで充分、と判断したのであろう。

アデルとマルセラ。

旗頭は、ふたりの貴族の少女だけで充分であり、平民に過度な褒美を与える必要はないと考えたのかもしれない。

いくらマルセラと共に強力な連射魔法で大戦果を上げたとはいえ、所詮は『攻撃魔法の才能がある、強い平民』に過ぎない。貴族の血筋であり、以前から国王陛下夫妻や両王子、その他多数の貴族達から注目されていた、頭脳明晰、品行方正、貴族の矜持と慈愛に満ち、魔法の才に溢れ、平民からの信望も厚い美少女であるマルセラとは話が違う。

まあ、マルセラは王子妃としての箔付けが必要、という意味もあって、子爵位を賜ったのであろうが……。

いや、それでも攻撃魔法の才能と『御使い様の親友』という立場、そして王子妃候補筆頭であるマルセラの親友であり、あの謀略王女モレーナとも上司部下以上の関係とあっては、モニカとオリアーナは結婚相手としては引く手 数多(あまた) であろう。

……まあ、モニカとオリアーナのふたりは、どこかの貴族が養女として引き取り、その家から貴族家へ嫁がせるという形を取るであろうから、そのあたりはあまり関係がないのであろう。

また、マルセラの実家も、男爵位から子爵位に陞爵するらしい。

国王が、父親の爵位が娘より下というのは気の毒だと同情したか、実家の立場が弱いと他の貴族からちょっかいを出されてマルセラの弱点となることを心配したか、それとも『マルセラ』という人間を生み育てたという功績に対する褒賞なのか……。

そしてマルセラ達は、まだ同じことを考えていた。

(((どうしてこうなった……)))