軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

534 戦いの肖像 7

ずばしゃああああ~!

古竜のブレスが前方を薙ぎ払い、魔物で埋め尽くされていた地面が少し地肌を見せる。

しかしそれも、すぐにまた他の魔物や死骸で覆われ、姿を隠す。

『むぅ……』

古竜のブレスは、確かに強力である。同じ古竜とマイル以外には防ぐことはできないであろう。

しかし、100の魔物をひと薙ぎする間に、1000の魔物が湧き出せば。

1000の魔物を薙ぎ払う間に、万の魔物が湧き出せば……。

既に、敵味方の境目は1本の線ではなく、幅のある前線帯となっていた。

第一層の大部分が乱戦区域となり、素人集団である第二層はまだ『わざと後方に通された雑魚と、戦闘力をほぼ失ったCランクの魔物を処理するだけ』で済んでいる。

これが、第一層が処理しきれず強力な個体を後方に通してしまった時、第二層で本当の地獄が幕を上げる。

敵味方が混在する場所で古竜が下手に動けば、味方を踏み潰す。

なので古竜達は 最前線(フロントライン) から一歩前進した場所でドラゴンブレスの砲列を形成しているのであるが……。

『 鬱陶(うっとう) しい……』

魔物達は、通常であれば古竜に立ち向かったりはしない。その本能で、絶対強者に立ち向かうことに対する危険を、恐怖を感じ取り、さっさと逃げ出す。

しかし今は、後方から次々と湧き出す魔物に押し出され、下がることも逃げることもできない。

そう、前へ進むしかないのであった。

そして、この 生温(なまぬる) い世界で次第に退化し弱体化した魔物達と違い、過酷な世界で、より強靱に進化した高ランクの魔物達は、僅かなりとも古竜に一矢報いる程度のことができた。

自らの命と引き換えに、ウロコを1枚剥ぎ取る。

自らの命と引き換えに、ウロコを手で掴んで立て、隙間に噛み付いたり、毒針を差し込む。

致命傷には程遠いが、不快で鬱陶しいこと 甚(はなは) だしい。

そしてひとつひとつは軽傷であっても、それが百、千、万となれば、さすがの古竜も参ってくる。

飛行しながらの攻撃だと攻撃は受けずに済むが、それだと巨体を活かした肉弾戦はできず、ブレスのみしか攻撃手段がなくなる。

古竜ともあろうものが、雑魚の攻撃を恐れて空に逃げ、離れたところからの遠隔攻撃のみで戦うなど、そのような 無様(ぶざま) な真似ができようはずがない。

また、ドラゴンブレスも無限に吐き続けられるものではない。いつかは疲れが、そして魔力切れがやってくる。

『目標変更! 皆、ブレスを裂け目に撃ち込め!!』

古竜戦士隊のリーダーが、皆に指示を出した。

どうやら、いくら倒しても切りがない魔物を攻撃するのではなく、次元の裂け目そのものを攻撃し、潰そうと考えたようである。

「なる程、さすが古竜! 裂け目を維持するシステムを破壊するという手段に出ましたか!」

マイルが感心するが、実は、ただ単に広く散らばる前の密集場所に撃った方が効率がいいと考えただけである。

古竜達は、次元の裂け目が科学的手段によって維持されているなどとは思ってもいなかった。

……しかし、ドラゴンブレスの射程距離は、そう長くはない。

火焔弾であっても有効射程は短く、 火炎(フレア) となると、到底トンネル状の裂け目の向こう側まで届くとは思えなかった。

「駄目だ。裂け目の向こう側に被害を与えて次元貫通システムを破壊するには、強力な爆発物を叩き込むか、大出力のビーム兵器でもないと……。

実体弾兵器なら、せめてアイオワ級戦艦『ミズーリ』の 16インチ(40.6センチ) 砲くらいのがあればなぁ……。あれなら、宇宙人の戦闘機械でもぶっ潰せるんだけど……」

マイルは、周りの者達には理解できないことを垂れ流しているが、戦いの最中にそのようなことを気にする者はいないので、問題ない。

「何か、サンシャイン・デストロイヤーのような、ナノマシンに口頭で指示するだけで済んで私には全く負担がなく、いくらでも撃ち続けられる攻撃手段があれば……」

しかし、世の中、そんなに甘くはない。そのような都合の良いものが、そうそうあるはずがなかった。

そして、太陽光を遮る厚い雲を恨めしそうに見上げるマイル。

ずばしゃああああ!!

「……え?」

突如、厚い雲を貫いて大地に突き刺さった、1本の光の剣。

そして、その光が横に振られ……。

びちびちびちびちびち!!

虫眼鏡で一点に集束させた太陽光でアリの列をなぞるように。

その、あまりの高熱に、一瞬で身体が沸騰し、びちびちと 爆(は) ぜる。

びちびちびちびちびち!!

びちびちびちびちびち!!

びちびちびちびちびち!!

「なっ……」

あまりにも予想外の支援砲撃に、呆然と立ち竦むマイル。

そして……。

「うおお、女神様の御助力だあっ! 天は、我らに味方したああっ!」

「「「「「「うおおおおおお~~っっ」」」」」」

グレンの雄叫びに、皆が応えた。

本当のところがどうあれ、そんなことは関係ない。

少しでも利用できるものは利用し、戦意の高揚を計るのが、デキる指揮官というものである。

そしてこの光の剣は、明らかに自軍に味方するものであり、それを疑うような者はひとりもいなかった。

なのでグレンの言葉は皆の叫びで次々と伝達され、あっという間に全軍に広まった。

「こ、これは何!」

【衛星直撃砲による攻撃です。

マイル様の配下であるスカベンジャー達が、原始的な化学反応式噴射推進システム、いわゆるロケットエンジンにより宇宙に上がり、衛星軌道上にあった防衛衛星を修理したようです。

大半の衛星は破損状態が酷く、まだ攻撃が可能なところまでは復旧していないようですが、それでも移動可能なものはここの直上へと移動しており、その中の2~3基は主砲の発射が可能となったようです。

他にも、ラグランジュポイント、恒星周回軌道に乗っているものとかもあるようですが、それらは間に合わなかったようですね】

そして、ナノマシンの説明が終わると同時に、空から更に2本の光の剣が振り下ろされた。

ずばしゃああああ!!

ずばしゃああああ!!

そして2本の光の剣が大地に突き刺さり、魔物達を薙ぎ払った。

明らかに、ちゃんと敵味方を区別してくれている。

「……もしかして、地上のスカベンジャー達が弾着観測員の役目を果たしている?」

マイルはそんなことを考えているが、現代地球を遥かに超える科学文明の産物である防衛衛星やスカベンジャー達が、たかが雲如きで地上の観測ができないはずがなかった。

そして、ある程度魔物達の密集域を掃射した後、3本のビームは次元の裂け目へと向けられた。

「うん、勿論、考えることは同じだよね!」