軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

531 戦いの肖像 4

どかん、どごん、ばしゅん!

周りで爆発音が響き、そして離れた場所でも攻撃魔法の炸裂音が響き始めた。

第一層を形成する兵士やハンター、エルフや獣人達の戦闘要員による合同部隊は、前線を形成して、マイル達前縁部の者達が刈り残したBランクの魔物全てと、Cランクの魔物達をできる限り潰す。

それより後方の、第二層を形成する素人集団、義勇軍に流していいのは、ボロボロにしたCランクの一部と、Dランク以下だけである。

オークであっても、無傷の状態の新種……変異種……であれば、いくら大勢で掛かるとはいえ、素人には荷が重い。素人達の集団である義勇軍に通すには、少しでも傷付けて、戦闘力を低下させておかねばならなかった。

義勇軍では、食用になる 角ウサギ(ホーンラビット) 以外は、ゴブリンだろうがコボルトだろうが一匹も通さない、と、農具や工具、モップの柄を握り締めた一般の人々が決死の覚悟で立ち塞がっていた。

大人も、老人も、まだ未成年の子供達も。

男も、女も、雌雄がはっきりしない者も。

「オークは、少し後ろに流してもいい。兵士やハンター達を信じろ!

……しかしオーガ、てめーは駄目だ!!」

最前線(フロントライン) では、『ミスリルの咆哮』のリーダー、グレンがオーガ相手に奮闘。

新種のオーガは、普通の兵士やCランク以下のハンターには荷が重い。

いや、『赤き誓い』もCランクハンターではあるが……。

『赤き誓い』は先頭に立ってはいるが、他者を指揮するという能力はない。なので、指揮は他の者に任せて、自分達はひとつの戦闘ユニットとして攻撃に専念している。

【マイル様、戦場の各部の映像を中継いたしましょうか? マレエット様が危険な状況になったりするかもしれませんし……】

(あ、お願い! 激戦区の映像を、ナノちゃん達の判断で映してね。私以外の、余裕がありそうな人達のところにも流して!)

これで、危なくなったところには支援戦力が向かうことができる。

そう考え、ナノマシンの提案をふたつ返事で了承したマイル。

【了解いたしました!】

マイルには、肉眼でナノマシン達の姿を見ることはできない。

なので勿論、その時にナノマシンが浮かべていた、邪悪そうな笑みを見ることも……。

ぶぅん!

マイルの周囲に展開した、たくさんのスクリーン。

そのひとつひとつに、マイルの友人、知人達の姿が映っている。

どうやらナノマシンは、危険度の度合いよりも『マイルの知り合いであるかどうか』ということの方を優先したようである。

大規模な戦いで、死傷者ゼロなどというお伽噺が存在しようはずがない。そして、全ての者に救いの手を差し伸べることができようはずもない。

なのでナノマシンは、マイルの知り合い、マイルが大切に思っている者を優先したのであろう。

それは、ヒト種の個々の命になど興味のないナノマシン達にとっては、至極当然の判断であった。

ナノマシンはいつも、『魔法の行使』という形で、正義も善悪も関係なく、多くの知的生物達を平然と殺しているのだから……。

「オークとオーガの混成部隊、来ます! 更にその後方、マンティコア、グリフォン、ヒッポグリフに、土竜、地竜がちらほら。

私達は、竜種を貰います!」

「おお、雑魚は任せろっ!!」

マイルの宣言に、グレンが叫ぶ。

……ここで言う『雑魚』とは、B~Aランクの魔物のことである。

「 位相光線(フェイザー) 、ビイィィィ~~ムっっ!」

「炎熱地獄!」

「ホット・クラウド!」

「…………」

次々と攻撃魔法を放つ、マイル、レーナ、そしてポーリン。

メーヴィスは、高ランクの魔物相手にウィンド・エッジを放っても大した効果はないので、出番はもっと接近して近接戦闘になってからである。無駄に体力を減らしても意味はない。

この世界には、敵のど真ん中に砲弾の雨を降らせてくれる、 戦場の神(砲兵) はいない。

そして両軍は、決して 退(ひ) くことはないし、敗北を認めることもなく、最後の一兵まで戦い続ける。

人間側は、後退すれば次々と都市や町村が魔物の群れに飲み込まれ、多くの人々が死ぬ。

魔物側は、そもそも後退し逃げ帰る場所などない。

どちらかが殲滅されるまで。

ここには、3割が死んだ時点で『全滅』と判断して撤退する、などという概念はない。

5割が死ぬ『壊滅』を更に過ぎ、兵士も将官・士官も含めた10割全てが死に絶える、『殲滅』となるまで……。

なので、当然ながら戦いは長引く。

そして、メーヴィスが封印を解いた。

「マイルの名の許に、メーヴィスが命じる! 第一の 剣(つるぎ) よ、元の姿に!!」

そして、しゃらしゃらと金色の粉を落とし、その 神々(こうごう) しくも 禍々(まがまが) しい、本来の姿を現した愛剣の剣身。

そして……。

「第二の 剣(つるぎ) も、元の姿に!」

予備の小剣も、本来の姿に。

剣を左手に、小剣を右手に握り、二刀流の構えを取るメーヴィス。

封印を解かれた、強力な機械の左手であれば、片手で楽々剣が振れる。

そして生身の右手には、短く軽い小剣を。

圧倒的多数の魔物相手であれば、手数は多い方がいい。

相手は、別に優れた剣技で立ち向かってくるわけではないのだから……。

「EX・真・神速剣!」

Bランク以上の魔物に、神速剣や真・神速剣では相手にならない。そのため、最初からミクロスを使用してのEX・真・神速剣二刀流を使うメーヴィス。

ナノマシンによって機械化された左腕の反動に耐えるため魔改造されたメーヴィスの身体は、ミクロスの使用による筋肉や腱、骨格への負担にも耐えられるようになり、なるべく無理な動きや激しい動きを避けるようにすれば、かなりの時間に亘り戦い続けられるようになっていた。

更に、マイル特製の剣を振るい、オマケに左腕と全身のサポート部分の制限を解除されている。

……そして、これは『聖騎士』に任命されての、世界を護るための侵略者との戦いである。

メーヴィス、幸福の絶頂であった……。

「「「「「「ぎゃあああああ!!」」」」」」

突然、前線の者達から悲鳴が上がった。

「あ……」

どうやら、ポーリンが放ったホット魔法が風で味方の方に流れたらしい。

ホット魔法は、あまり遠くまで届く魔法ではない。なので、こういうこともある。

しかし、最前線にいる精鋭達が被害を受けると、敵よりも味方の方がダメージが大きい。

「ポーリンさんは、下がってください! 攻撃ではなく、治癒魔法を!

重傷者には、死なない程度に。戦線に復帰できそうな人には、戦えるように。綺麗に治す必要はありません、応急処置で充分です! 完全な治癒は、戦いの後でゆっくりやればいいですから!」

「分かりました!」

マイルの指示で、後ろに下がるポーリン。

元々、ポーリンは攻撃魔法は得意ではない。それが、ホット魔法により強力な 攻撃者(アタッカー) となったが、こういう密集した混戦の場合は、使い勝手が悪い。

ならば、戦線から脱落した戦闘力が高い者達を復帰させる方に廻ってくれた方が遥かに役に立つ。

(マルセラさん達も、下げて治癒の方に廻ってもらった方がいいかな。その方が安全だし、マルセラさん達は元々魔法の才能はあまりなかったから……。

ただ、私が教えた知識で底上げされただけであって、攻撃魔法とかは得意じゃないはずだし……。

でも、治癒魔法については人体の構造と共にかなり詳しく教えたから、ポーリンさん以上の成果を出せるはず……)

そう考え、ちらりとワンダースリーが映された空中のスクリーンへと目をやるマイル。

ナノマシンが気を利かせて、そのスクリーンに映っている場所との 音声伝搬回廊(ダクト) を形成した。

そしてそこに映っていたのは……。

『マルセラ様、アレをやりましょう!』

どうやらオリアーナが、何か必殺技を使うことを提案したようである。

『ええ、よくってよ』

『了解です!』

それに、マルセラとモニカが答え……。

そして、『ワンダースリー』の3人が、ポーズを決めた。

『ワンダー……』

『パルス……』

『『『 魔神丸(マシンガン) !!』』』

マイル、いや、アデルから聞いた『にほんフカシ話』に出てきた、高速連射できる魔導具武器。

それを元として3人で考えた、オリジナルの決戦魔法であった。

モニカが、空間上に魔力による 銃身(バレル) を形成。

オリアーナが、その銃身を制御し、狙いをつける。

そしてマルセラが、そこに魔力を供給。

ぱぱぱぱぱぱぱぱぱ!

極小の小さな魔力の塊が高速で連続発射され、魔物達を薙ぎ払う。

パルス状であり、一発あたりの魔力量が少ないため、太いビームや広がった火焔を放つのに較べ、消費魔力量が少なくて済む。

……そしてその割には貫通力が高いため、そこそこの威力があった。

狙いをつけてから撃つのではないため射撃速度が速く、『着弾点を見ながら銃身を振る』ので、無駄弾も多いものの、命中率はかなり高い。

魔力がそれ程多くない3人が万一の時のためにと考えた、対集団戦用最終奥義。

当初は、一発ごとの威力は弱く、殺傷力はそれ程高くはない魔法であった。なので、主に 攪乱(かくらん) 用として使うつもりであったのだが……。

それが、専属ナノマシンの存在と権限レベル上昇のため、充分に対大物用の攻撃魔法としての役目を果たせるようになったのである。

以前は 短機関銃(サブマシンガン) 程度の威力であったものが、軽機関銃を跳び越えて、重機関銃になったが如く、その威力には拳銃弾と12.7ミリ弾くらいの差があった。

(…………)

そして、そのスクリーンからそっと目を 逸(そ) らす、マイルであった……。