軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

526 警 告 5

「「「「「「「…………」」」」」」」

大陸中の者達が、凍り付いた。

未成年の少女が言うところの、『私達』というのは、いったいどれだけの戦力なのか。

数人?

十数人?

少女が個人で集められる戦力など、パーティひとつ分がせいぜいであろう。

それも、魔物の群れの前に瞬殺されることが確実な、無駄死にに付き合ってくれるという奇特な者がいればの話である。

人々がそう考え、帝国から溢れ出る魔物の群れからどうすれば自分達が助かることができるのかと無言で考え込んでいると……。

『敵の主力を蹴散らす私達の、メンバーを紹介します!』

今まで喋っていた銀髪の少女に代わり、金髪の、凜々しい少女が映し出された。

『ハンターパーティ「赤き誓い」リーダーにして、オースティン伯爵家令嬢、そしてラディマール流剣術道場門下生の、聖騎士メーヴィス・フォン・オースティン!』

銀髪の少女に紹介され、にこりと微笑み歯を光らせるメーヴィス。

どうやら、自己紹介ではなく、全てマイルが紹介するようであった。

……確かに、自己紹介において、自分で『聖騎士』とか言うのは恥ずかしい……。

『同じく、「赤き誓い」所属、そしてハンターパーティ「赤き稲妻」最後の生き残り、大魔導師赤のレーナ!』

レーナの望みである、『赤き稲妻』の名を歴史に残すこと。

レーナがAランクハンターになってから自伝を書くことにより成し遂げようと考えていたそれを、今、果たす。

たった4人で魔物の大軍に挑む英雄を生み出したパーティとして、その名を歴史の1ページに刻み込む……。

『同じく、「赤き誓い」所属、中堅商家ベケット商会の娘、大聖女ポーリン!』

杖を手にし、にっこりと微笑むポーリン。

これで、実家の商店の名は大陸中に知れ渡った。

自分が死んでも、母親と弟、そして父が 遺(のこ) した店は安泰であろう。

そして、映像は再びマイルの姿を映し出した。

いよいよ、トリの出番である。

『ある時は子爵家令嬢、ある時はエクランド学園の平民生徒、ある時はパン屋の店員、またある時は女子爵アデル・フォン・アスカム、そしてある時は売れっ子作家ミアマ・サトデイル、そしてまたある時は神の御使い。

……しかして、その実体はッッ!』

そしてマイルは、びしぃっ、とポーズをキメた。

『どこにでもいる、平凡なごく普通の女の子、ハンターパーティ「赤き誓い」所属のCランクハンター、マイルさッッ!!』

「「「「「「……いや! いやいや! いやいやいやいやいやいやいやいやいや!!」」」」」」

そして、大陸全土が突っ込みの叫びに包まれた。

* *

実は、メーヴィス達がこのような肩書きで紹介されたのには、 理由(わけ) があった。

これからの作戦が概ね決まった、あの日……。

「マイル、頼みがある。……私の身体の制限を、全て解除してくれないか?」

メーヴィスが、そんなことを言ってきたのである。

「えっ……」

「この身体は、本当はもっと優れた力が発揮できるのだろう?

土竜の攻撃を支えられたんだ、もっと力があるに決まってる。

……分かっている。マイルが、私の身体が人間を超えてしまうのを恐れ、心配してくれていることは……。

しかし今、私はその力を必要としているんだ。ひとりのハンターとして。ひとりの騎士を目指す者として。……そして、メーヴィス・フォン・オースティンとして!!」

「メーヴィスさん……」

「勿論、私が編み出した必殺技、『 余(ヨ) が、 炎の化身である(ファイヤー) !』も解禁してくれ!」

「え……」

目を剥く、マイル。

「そして実は、もうひとつ、頼みがあるのだが……」

「はい、もう、何でもどうぞ!」

最後まで自分に付き合ってくれる仲間達である。自分にできることであれば、もう、何でも望みを叶える。そう決めているマイルであるが……。

「私を、マイルの騎士にしてくれ!」

「え? ええ?」

予想の右斜め上45度の頼みであった……。

「あ、マイルちゃん、私も! 神の御使い様に任命してもらえるなら、そのあたりの国王陛下や教皇様に任命されるより、ずっと権威がありますよっ!」

「……なら、ついでに私も、何か任命してもらおうかしらね。天国で、『赤き稲妻』のみんなに自慢できそうだし……」

「えええええええ?」

驚くマイルに、メーヴィスがにこやかに告げた。

「ポーリンが言う通りだ。国王陛下に任命されるよりも、私はマイルに騎士に任じてもらいたいんだ。

国が認めたかどうかとか、正規の登録書類がどうとか、そんなのはどうでもいい。

私は、会ったこともない、先祖が国王だったからというだけの理由で玉座に座っているただのおっさんではなく、マイルの騎士になりたいんだ。

本当に守るべき者のために命を懸けて戦う。……お願いだ、私を『騎士』として戦いの場へ 赴(おもむ) かせてくれ!」

口には出さないが、おそらく、それは『 最後の戦い(・・・・・) 』という意味なのであろう。

まともに考えて、魔物の大軍相手にたった4人で生き残れるとは思えない。

いくら強くても、数の暴力の前には無力。

100対1000とかであれば、100の方がとんでもなく強ければ勝てる確率はゼロではないかもしれない。

……しかし、4対数万、数十万であれば、いくら個人が強かろうが、勝てるわけがない。

体力も魔力も無限ではないし、かすり傷であっても、数千、数万となれば命に関わる。

そして疲れ果て、注意力が散漫になれば、格下の雑兵の一撃を喰らうこともあるだろう。

最後の戦いとあらば、ただのリップサービスに過ぎなくとも、少しでも満足してもらいたい。

なので……。

「分かりました。そこまで言われるのであれば……。

では……。

メーヴィス・フォン・オースティン。神のしもべマイルの名の許に、聖騎士に任ずる。

赤のレーナ。大魔導師に任ずる。

ポーリン。大聖女に任ずる」

「「「……慎んで、お受けいたします……」」」

斯くして、聖騎士、大魔導師、大聖女が誕生したのであった。

* *

『次元の裂け目ができて、魔物達が溢れ出る場所は、アルバーン帝国の小さな町クロトの前に広がる荒野です。クロトの住民の皆さんは、すぐに城郭で護られた大きな街へと避難してください。

……あ、私達は敵が現れるまでクロトで待機しますので、宿屋を勝手に使わせてくださいね。ちゃんとお金は置いておきますので……』

せっかく町で待機するのであるから、テントではなく宿屋で寝たい。そう考えるマイルであった。

……但し、宿の裏庭に携帯式要塞浴室と携帯式要塞トイレは設置するつもりであるが……。

『では、皆さんの御健闘と、御無事を祈っています……』

ぷつん

そして、空に映った映像は消えた……。