軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

525 警 告 4

「ま、ままま、マルセラ様、オリアーナ!

そ、そと、 外(そと) を見てええぇ~~っっ!!」

「まあ、何事ですの、モニカさん。淑女ともあろう者が、はしたないですわよ……」

宿屋の、3人が借りている部屋へと息を切らせて全力で駆け込み、大声で叫んだモニカに、呆れたような顔でそう 窘(たしな) めるマルセラ。

「い、いいい、いいですから! そんなの、どうでもいいですから! と、とにかく外へ! 外へ出てくださいっっ!!」

モニカのあまりの様子に、これはただ事ではないと思ったマルセラとオリアーナは、再び外へと向かうモニカのあとに続いた。

そして……。

「な、ななな、何ですか、これはああああぁっっ!」

叫ぶマルセラと、ぽかんと口をあけ、呆然と立ち尽くすオリアーナ。

周りにいる人々も、概ね同じような状況である。

そして空に浮かぶ、常軌を逸したモノが吠えた。

『がおう!』

* *

「外だ! 空に、おかしなモノが!!」

ギルド支部に駆け込んできたCランクのハンターが、大声で叫んだ。

ハンターギルド支部でのんびりとたむろしている者達は、余裕のある者達、つまり中堅か上級者達である。駆け込んで来た者の様子から、ただ事ではないということはすぐに理解した。

なので、皆、それぞれの武器を掴んで外へと飛び出した。

勿論、ギルド職員達もあとに続く。

ワイバーンの来襲か、それともグリフォンか、ヒッポグリフか……。

そして、空を見上げた彼らが目にしたものは……。

『がおう!』

* *

「マイルお姉さん……。『 作戦行動中行方不明(M I A) 』になって、『赤き誓い』のお姉さん達は全員亡くなっただろう、ってハンターのお客さん達から聞いたのに……。

……そうよね、あのマイルお姉さん達が、そんなに簡単に死んじゃうはずないよね!

でも、いったい何をやってるんですかっ、お空の上でっ!

……あ、でも、お空に浮かんでいるということは、やっぱり死んじゃった?

あれ? えええええ?」

そして、大陸中の人々が見守る中、謎のライオン少女の頭上にある減算タイマーの数字が、遂にゼロを示した。

それと同時に……。

ばたん!

ライオンが描かれた書き割りが前方へ倒れ、ひとりの少女がその全身を現した。

そしてその口から 紡(つむ) がれた言葉は……。

『私の名はマイル。世界を征服……』

ぱしぃん!

画面の枠外からにゅっと伸ばされた1本の手に握られた紙筒のようなもので、画面の少女の頭が 叩(はた) かれた。

そして、もう1本の手が伸びてきて、その両手首がくるくると回された後、片方の手の人差し指が少女の方をビシッと指し示した。

……どうやら、『教育的指導』のようであった……。

『わ、私の名はマイル。神様からこの世界のことを託された者です……』

そして、何事もなかったかのように話を続ける少女。

空に映るその様子を見、その声を聞いていた人々は……。

「「「「「「何じゃ、そりゃあああああ~~!!」」」」」」

勿論、ワケが分からず、大混乱に陥っていた。

* *

いくら突っ込みたいと思っても、空に浮かんだ巨大な少女に言葉が届くわけがない。

なので、人々はただ、巨大な少女からの言葉を聞く以外に選択肢がなかった。

『私は、神様からこの世界を守るよう頼まれただけの、どこにでもいる、ごく普通の女の子です』

「「「「「「いや! いやいやいやいやいやいやいやいやいや!!」」」」」」

人々は、思い切り叫んだ。

((((((神様からそんなことを頼まれた時点で、『普通の女の子』であるものか!!))))))

皆の心の中は、その思いでひとつになっていた。

そして、理解し 難(がた) い少女の話は一方的に続けられた。

……勿論、『理解し難い』というのは、『少女の話』ではなく、『少女』の方である。

『世界中の皆さん。ヒト種、獣人、魔族、妖精、古竜、その他諸々の知的生命体、精霊、動物、植物、その他全ての、この世界に存在するありとあらゆるもの達に、神様からの重要なお知らせがあります』

そして、マイルはすうっと息を吸って……。

『ボクの名はマイル。世界は狙われている!!』

((((((…………))))))

みんな、おおむね理解した。

* *

そして、マイルは人々に説明した。

遥か昔にこの世界で栄えた文明のことを。

そして降りかかった災難、異世界からの侵入者である魔物達のこと。

何とか危機を乗り越えたものの、人々は僅かな者達を残し、この世界から去ったこと。

しかし、残されし者達を憐れみ、この世界を去ることなく残った、慈愛の人、七賢人。

再び襲い来るであろう危機に備えるには、あまりにも脆弱な人々。

そして七賢人は決断された。

『そうだ、人々を強くしよう!』

文明が滅びても、自然と共に生きられる森の種族。

最低限の文明を維持できるよう、金属の精錬と加工に秀でた、山の種族。

動物の能力を備えた、頑健な種族。

……そして、後に存在が発見された『魔法』の能力強化と、頑健な身体能力を持たせた、魔族。

更に七賢人は、いくつかの種族を生み出した。

文明が失われ食べ物が無くなっても、僅かな食料で生きられるようにとサイズを7分の1に縮小した人間。

そして小さな身体でも生き延びられるよう、その者達には羽根が与えられた。

寿命が短い、か弱き人間達を見守るための導き手として、温厚な生物に知能と大きな身体を与えた。巨体を支えたり宙に浮かせるには、『7分の1計画』と同様に、神のお力添えを得て加護を賜った。

また、七賢人は万一の時に備え、世界各地にしもべを配備した。

ゴーレムと、スカベンジャー達である。

彼らは、ヒト種を始めとするこの世界の者達の味方である。攻撃するなかれ。

そして今、『その時』が訪れた……。

『いま、合同軍が 対峙(たいじ) しているのは、侵入者達の主力ではありません。

それらは全体の約4分の1に過ぎず、本隊は13日後に、アルバーン帝国の山間部に次元の裂け目を開いて出現します……』

マイルの爆弾発言に、大陸中の者達が悲鳴を上げた。

……勿論、間もなく始まる魔物の群れとの 交戦(エンゲージ) を控えている合同軍の兵士達も。

自分達がここで勝利すれば、世界が救われる。

そう信じて命を懸けるつもりであったところへもたらされた、『実は、そこの敵は全体の4分の1に過ぎず、主力は反対側から、戦力の大半がいなくなった自分達の母国に襲い掛かる』という凶報。これで、動揺するなと言われても無理であろう。

しかし……。

『オーブラム王国の王都東方に展開された合同軍の皆さんは、そのまま前方の魔物達と戦ってください。

今から反転してアルバーン帝国へと向かったところで、重い武器や防具を身に付け、輜重部隊を引き連れての行軍では、到底間に合いません。

それに、たとえ間に合ったところで、10日以上の強行軍でボロボロになってまともに戦えない上、止める者がいなくなった東方の魔物の群れがオーブラム王国の町々を襲い、その後各国を襲ったり、無理な強行軍で疲弊した合同軍を後背から襲ったり……。多分、碌なことにならないでしょう。

なので、皆さんはこのまま、予定通りオーブラム王国の魔物達を討伐し、その後、態勢を立て直して反転してください。急がず、体力を温存しながら……』

そして、マイルはにっこりと微笑んだ。

『アルバーン帝国に出現する魔物達のうち、上位種は、私達が蹴散らします。

Aランク以上の魔物は全て。そしてBランクの魔物の大半とCランクの一部は何とか倒します。

各国の人達は、壁のない小さな町村の人達は近くの城塞都市へ避難し、治安維持と街の防衛のために残っている兵士やハンター達が力を合わせて、私達が討ち漏らしたBランクの魔物の一部とCランク以下の魔物相手に持ち堪え、合同軍が東方の魔物達を撃破して戻ってくるまでの時間を稼いでください』

それは、どう見ても、自分達は上位の魔物を倒すために人々の盾となって戦い続け、そしてそこで死ぬ、という宣言であった……。