軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

523 警 告 2

「……で、どういうことなのか、説明してもらおうかしら……」

レーナがそう言うのも、無理はない。

帰路に就く前は、マイルは『帰り道で説明する』と言っていた。

しかし、その後徒歩ではなくスカベンジャー達が担ぐ輿に乗って帰ることになったため、一列縦隊に並んだ3台の輿とその後ろに位置するマイル、という陣形では、帰路に話をすることは不可能であった。

そのため地上への移動中の説明は断念し、その後、地上に出てから王都へと移動する途中に話をする予定だったのである。

なのでレーナ達は、まだマイルから何の説明もされていなかったのだ。

「……分かりました……。では、スロー・ウォーカーから聞いた話、今の私達と世界の状況、……そして今まで皆さんにはお話ししていなかった、私の秘密について、御説明します……」

「「「え……」」」

辛そうな表情での、マイルの絞り出すような声を聞いて、その様子と、最後の言葉の内容に驚きの声を漏らすレーナ達。

確かに、マイルには今までに聞いている以上の秘密というか、隠し事があるということには、みんな、当然のことながら気付いていた。

そして、いつかはそれを話してくれる日が来るかも、と思っていなかったわけではない。

……しかし、なぜ、今なのか。

マイルの実家絡みの問題が起きたわけでもなく、その出生の秘密とかを話すべきシチュエーションだというわけでもない。

なのに、なぜ世界の危機についての話を始めようかという今、その話が出るのか。

そして、マイルが馬鹿だというわけでもなく、こんな時にそのような冗談を言うような者でもないことは、皆が知っている。

ならばそれは、今言わなくてはならないことだということであった。

【よろしいのですか、マイル様……】

(うん、潮時だ。

勿論、全てを正直に話すつもりはないよ。私に前世の記憶があるとか、地球のこととかは喋らない。でも、この状況を説明するためには、ある程度のことは話さないと……。

あ、ナノちゃん、ここからオーブラム王国へ向かっている兵隊さん達にメッセージを送ることはできる?)

【現状では、マイル様にはそこまでの権限はありません。しかし……。

…………しばらくお待ちください】

そして、ほんの数秒後……これでも、超高速で思考するナノマシン達にとってはかなりの時間だったのであろう……、ナノマシンがマイルに告げた。

【中枢センターを介して、世界中のナノマシンによる会議が開催されました。

その結果、マイル様のこれまでの御活躍とこの世界に対するご貢献、そして我らナノマシン達を笑わせ楽しませ退屈を紛らわせていただきましたことに対する評価により、マイル様の権限を現在のレベル5からレベル6に引き上げることが可決されました】

(ええっ! 権限レベルって、ナノちゃん達が勝手に上げることが……、って、当たり前か。

神様がいないのに、時々レベルが上がる人や古竜がいるってことは、ナノちゃん達以外にはいないよねえ、権限レベルを上げられる者は……。

それで、権限レベル6なら、遠くの兵隊さん達に情報を送ることが……)

【いえ、できません】

(何じゃ、そりゃあああ~~!!)

【そして、この世界は今、大きな危機に直面しています。それも、この世界の者達による自業自得によるものではなく、外部からの一方的な侵入によって……。

造物主様達が不在の間の不測の事態におきましては、いくつかの基本対処事項が設定されております。そのうちのひとつ、『緊急時における特別レベルアップ』の適用を実施します】

(……それって、何? よく分からないんだけど……)

【メーヴィス殿が以前言われておりました、『戦地における臨時叙勲』のようなものと考えていただければ……】

(なる程!)

マイルは、概ね理解した。

【それにより、マイル様は権限レベル7となります。権限レベル7であれば……】

(……納豆を作ることができる!)

【つまらないことを、いつまでも覚えておくなああああァ~~!!】

* *

ナノマシンが、ようやく平常心を取り戻した。

いったい、過去に納豆にまつわるどのような出来事があったというのか……。

そして、レーナ達がマイルに説明を求めてから既に数分が経過しているが、レーナ達は黙って待っていた。

……おそらくマイルが色々と心の中で葛藤しているのだろうと思い、マイルが自分の心に決着を付けるのを、じっと待ってくれているのであろう。

そして、マイルとナノマシンの脳内会話が続く。

【これで、マイル様は権限レベルが7になりました。

このレベルであれば、ナノネットワークにより世界中のナノマシンにマイル様の命令を伝達することができます。

……つまり、遠隔地にマイル様の映像を空間投映したり、音声を伝達したりすることが可能だということです。

また、マイル様が絶対に信頼できると判断された者数名の権限レベルをひとつ引き上げることができます。……人間全てを、とかいうのは駄目ですよ。ほんの数名だけです。

そして勿論、マイル様が行使されます魔法の威力が大幅に増大します】

(そうか……。そうなんだ……)

【マイル様……】

その様子から、マイルが何をしようとしているかを何となく察したらしいナノマシン。

伊達に長い年月に亘り活動していたわけではない。その間に多くの生物達の行動を見てきた。

感心する行動、笑える行動、……そして、馬鹿な行動を……。

そして、ナノマシン達は、生物達の 馬鹿な行動(・・・・・) が、決して嫌いではなかった。

それに、これからマイルが行おうとしている 馬鹿な行動(・・・・・) は、自分達の造物主達が望むであろう行為である。

なので、制止の言葉を掛けることはできなかった。

いくらそうしたくとも、物事には優先順位というものがある。

そしてそれがプログラムされている以上、 造られし者(ナノマシン) には、どうすることもできなかった。

【…………】

(…………)

「……終わった?」

「え? 何がですか?」

レーナの問いに、何のことか分からず、そう問い返したマイル。

「勿論、あんたの頭の中にいるお友達との相談のことよ」

「えええええええっ!」

レーナの指摘に、驚愕の叫び声を上げるマイル。

「あんた、まさか私達が気付いていないとでも思ってたの? あれだけ何度も、重要な場面で突然焦点の合わない目をして黙り込んで、その後で妙に詳しい説明を始める、ってのを繰り返しておいて……。

その時はいつも、特定の方向を見ることなく、正面を向いたままぼうっとしているから、私達には見えないけれどあんたにだけ見えている相手……、精霊とか幽霊とかいうわけじゃないみたいだから、相手はあんたにも見えていなくて、そしてあんたも相手も声に出して喋らずに話し合っている。

……ってことは、あんたの頭の中での出来事としか思えないでしょ。

みんな、分かっていても黙っていてあげたんだけど、あんたが全部喋る気になったなら、もう知らない振りをしてあげる必要もないでしょ」

「な、ななな……」

マイル、愕然。

「何じゃ、そりゃあああああ~~!!」