軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

522 警 告 1

「「「えええええ~~っ!」」」

マイルから状況を説明され、驚愕の叫びを上げるレーナ達。

それは、驚くであろう。

未来方向へではあるが、これは一種のタイムトラベルである。

そしてレーナ達は、マイルの『にほんフカシ話』によって、過去や未来へと旅をする、という概念を理解している。勿論、調子に乗ったタイムトラベラー達が陥る落とし穴や教訓話を含めて。

「今回は、ただ時間が経過したというだけで、 時間の矛盾(タイム・パラドックス) とかの心配はありません」

マイルの説明に、ほっと胸を撫で下ろすレーナ達。

しかし……。

「でも、私達は貴重な時間を失いました。本来ならば、ギルドを通じて大陸中に警告し、異次元世界からの侵入者に対する備えができるはずだった、貴重な時間を……」

確かに、このような荒唐無稽な話、とても信じてはもらえなかったかもしれない。

しかし、マイル達『赤き誓い』は信用のあるパーティであるし、このような、バレれば全てを失うことが確実である嘘を吐く必要はない。それに、いざとなればメーヴィスとマイル……アデルの貴族としての家名を名乗るという方法もあった。なので、ある程度は信じてもらえる可能性はあったのである。

しかし、38日間のタイムロスは、大きかった。

あまりにも……。

レーナ達もそれを理解しているのか、自分達が『にほんフカシ話』の登場人物のように 時間の矛盾(タイム・パラドックス) によって消滅したり時空の狭間を永遠に 彷徨(さまよ) い続けたり、ということはないと聞いて安心はしたものの、その顔色は良くない。

(ナノちゃん、現在の各国の状況は……、って、駄目か。ナノちゃん達は、この世界の特定の勢力に加担したり便宜を図ったりはできないから、各国の情報は教えられないんだよねえ……)

脳内でそう呟くマイルであるが……。

【いえ、教えられますよ?】

(え? えええええ?)

【異次元世界からの侵入者は、『この世界の勢力』ではありませんから、マイル様に情報をお伝えしても、『この世界の一方の勢力への加担』にはなりません。そして今回の場合、侵入者対この世界の人々、という構図ですから、この世界側の人々は全てお仲間、ひとつの勢力と見なせます。

そして我々ナノマシンは当然この世界の生命体を守る立場ですので……】

(私に情報を流しても、仲間同士のことだから禁則事項には抵触しない、ってわけだ!)

【その通りです】

どうやら、ナノマシン達はかなり融通が利くようであった。

(で、スロー・ウォーカーから聞いたこと以外の、侵入者側の情報は分かる?)

【マイル様が輿を作っておられました間に、スロー・ウォーカーとコンタクトして侵入者に関する過去と現在における全てのデータを貰っておきました。

それに、リアルタイムでの大陸全土の 仲間(ナノマシン) 達からの情報を加え、ナノマシン中枢センターで分析すれば、かなりの高確率で今回の 主(メイン) 侵入地点とその時期が予測できます】

(よし! さすが、ナノちゃん達! さすナノ!!)

【ふっふっふ! この程度、我らにとっては造作もないこと! ナノマシンの科学力は、世界一イィ!!】

……何だか、ナノマシンのノリというか、様子が普段と違う。

マイルは、それに気が付いた。

いつも、人間相手だと他者の様子には全く気が付かないくせに……。

(無理しなくていいよ、ナノちゃん……)

【え? な、何のことでしょうか?】

(スロー・ウォーカーが割と自然な喋り方だったから、『自分達は、こんな原始的なガラクタとは違って、もっと人間のような思考や喋り方ができる、高度な機械知性体だ!』って私に示したくて、わざとギャグを挟もうとしてるんだよね? そんなことしなくても、普段のままでいいよ?)

【……】

【《…………》】

【《{[…………]}》】

周囲のナノマシン達が凍り付いたかのような気配がした。

……言ってはいけないことを言ってしまった。

それだけはよく理解してしまった、マイルであった……。

レーナ達は、驚きから立ち直っていないのか、それともどうすればいいのか分からずに呆然としているのか、まだ黙り込んだまま突っ立っている。

この間に、急いでナノマシンから情報を得なければ、と焦るマイル。

(と、とにかく、今の世界情勢を教えて! それを確認しなきゃ、私達『赤き誓い』の行動方針が決められないし、何をすればいいのかも分からないから!)

【はい、了解しました】

そしてナノマシンがマイルに語ったのは……。

現在は、マイル達が洞窟に入った日から38日後。

その間に、オーブラム王国の王都の東方に次元の亀裂が発生し、開きっぱなしに。

そこから大量の魔物が続々と出現、元々のこの世界の魔物達と共に、西方へと移動を始めた。

オーブラム王国は直ちに周辺各国に非常事態宣言。他国の軍や傭兵が国境を越えることを無制限で許可し、救援を要請。

各国は、これを放置すればオーブラム王国が壊滅した後、次は自国が、と正しく状況を認識し、自国の治安維持と万一の事態に備えた必要最小限の戦力を残し、大規模派兵を即座に決定。

しかし、アルバーン帝国は多めの戦力を残したため、ティルス王国とブランデル王国は、やむなくアルバーン帝国との国境に面した貴族領の領軍は残留措置とした。

現在、各国の合同軍はオーブラム王国の首都東方に陣を張り、数日後に迫った魔物との戦いに備えている。

(……勝てるの?)

【魔物の数が多いとはいえ、その多くは角ウサギ、コボルト、ゴブリン等の、武器を持ったこの世界の成人男子であれば戦闘職ではない者でも何とかなる相手です。……1対1であれば。

オーククラス以上の魔物の大半を兵士達が倒すことができれば、ゴブリン以下の魔物を取りこぼしたとしても、それぞれの国に残した兵力と参戦しなかった傭兵やハンター、腕っ節の強い一般の男性達で、合同軍の兵士達が戻るまで街を護ることが可能でしょう。

また、すぐ後方に大都市があるため、補給物資が潤沢であるという利点もあります。

ただしそれは……】

(それは?)

【他国の住民を護ることより自国民を護ることを優先して、他国からの派出軍の一部が取りこぼした魔物を追って戦場から反転離脱したり、自国の戦力を磨り潰すのを嫌がって戦闘正面を他国の軍に押し付けあったりと、愚かな行為をしなければ、の話です】

(あ~……)

【そして、人間の軍隊などものともせずに蹴散らす、Sランク以上の魔物の数が、どれくらいいるか……】

(……古竜とか?)

【いえ、 敵に古竜はいません(・・・・・・・・・) 】

(あ、そうか……)

そう、侵入者側には、地竜や土竜、飛竜とかの普通の竜種や亜竜はいるかもしれないが、古竜だけはいない。絶対に……。

それは、元々マイルも予想はしていたが、スロー・ウォーカーの説明により確証が得られていた。

(でも、そもそも、そこってメインの侵入地点じゃないよね、スロー・ウォーカーの説明によると……)

【はい。でも、人間達はそれを知りませんから……】

(あ~、仕方ないか……)

そして、さすがにそろそろ時間切れである。

レーナ達が、説明を求めてマイルを取り囲んでいた……。