軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

469 獣人の村 1

「……しかし、どうしてヒト種にこんな依頼を? 獣人って、誇り高くて腕自慢なのでしょう? こんな依頼をヒト種のギルドに出すなんて、何だか違和感が……」

「それはだな……」

マイル達の話を聞いていたらしい年配のハンターが、後ろから声を掛けてきて、説明してくれた。

「獣人を奴隷として狩るなんざ、亜人大戦終結時の基本合意事項、締結された条約に真っ向から喧嘩を売る行為だ。それをやめさせるのに、自分達が血を流す必要はない、ってことらしい。

……つまり、 ヒト種側(そっち) で責任持って対処しろ、ってこった」

「え? でも、依頼元が……」

「そりゃ、領主に文句言ってきたのは向こう側だし、仕事の前の打合せとかは連中とやらなきゃなんねぇから、そうするしかねぇだろうが。

そういう事情だから、報奨金は領主から出る。だから、金額は渋いぞ……」

「「「「あ…………」」」」

「勿論、奴隷狩りの連中はその領どころか、この国の者ですらない。獲物を捕まえれば、さっさと国境を越えてトンズラさ。

当たり前だよな、そんな危険行為をされちゃ領主も王宮の連中も堪んねぇから、全力で組織の叩き潰しにかかるからな。

その点、他国の者にとっちゃあ、そんなこたぁあんまり関係ねぇ。

亜人大戦の二の舞になるようなことはさすがに看過しねぇだろうが、獣人側も、これは国家レベルじゃねぇ単なる犯罪組織の仕業だと分かってるから、そこまでにはならねぇよ。

だから、その国に揉め事が起こって国力が低下すれば自分達の利になる、と考えて、他国で起きた犯罪行為についちゃ、知らん振りさ。それどころか、貴族や金持ち連中は狩られた獣人を買ったりしてやがるぜ。

……まぁ、確かに猫獣人とか兎獣人、狐獣人とかの女は……、ヒイッ!」

「そおぉぅですかぁ……。そおぉうなんですかあぁ……」

「「「あ~……」」」

((((((あ~……))))))

「これ、お願いします」

まだマイルが怒りに震えている間に、さっさと依頼票を受付窓口に提出したメーヴィス。

そして、レーナ達と同じく、ギルド従業員や他のハンター達の、犯人達に対する想いはひとつであった。

((((((百万回死んだねこれ!))))))

「そういうわけでえぇ、この依頼を受注したわけなんですけどおぉ……」

こくこくこく!

必死で頷く、少し顔色の悪いレーナ達。

……そう、あれからずっと、マイルの不機嫌が続いているのである。

「さ、さっさと片付けるわよ!」

こくこくこく!

マイルの言葉を遮ったレーナに、再び必死で頷くメーヴィスとポーリンであった……。

* *

「……ということで、やってきたわけなんですが……」

既に、マイルの機嫌は完全に直っていた。

奴隷狩りというか、誘拐というか、とにかくその犯罪者連中に対する怒りが治まったわけではないが、憧れの、そして夢の『もふもふランド』、ケモミミ幼女達の楽園を目の前にした希望と喜びがそれを遥かに上回っているからである。

「そろそろ、案内の人が……」

そう、このような状況で、獣人の村が無防備であるわけがない。ちゃんと事前に通達して案内の者に先導してもらわないと、いつどこから槍や矢、投擲された石等が飛んでくるか分からない。

そして勿論、罠や道を迷わせるような仕掛けもされているであろうし……。

わざと本道を細く、支道を太くしたり、直線路がフェイクで本道は横に逸れる方の細い道であったり、よく似た枝振りの木や同じような切り株を配置して同じ場所をぐるぐる回っていると錯覚させたりと、混乱させたり方位感覚を失わせたりさせる方法などいくらでもある。

なので当然、案内の者を用意するようギルドから連絡が行っているはずなのであるが……。

「おぅ、やっと来たか……、って、お前達は!」

「「「「あ……」」」」

何と、案内人として待っていたのは、顔見知りの相手であった。

「「「「古竜の時の人……」」」」

そう、以前にも案内役をしてくれた獣人であった。

「いつも案内役担当なんですね……」

「マイル、失礼だよ! いくら下っ端仕事しかさせてもらえないからって、仕事に貴賤は……」

メーヴィスが、無自覚にマイル以上の暴言を放った。

「うるさいわっ!」

悪気はない。悪気は全くないのである……。

「この国の王都近くで繋ぎ役を務めるなら、この国の村の者が指名されるのが当たり前だろうが!

そして俺は王都付近にも詳しいし、猟師だから単独行動や野営に慣れているし、魔物が出ても倒したり逃げたりできるから適任なんだよ! 適材だから選ばれてるんだよ、案内役しかできないわけじゃなくて、何でもできるからなんだよ!

そして今回は、俺が住んでる村なんだよ、ここが!! はぁはぁはぁ……」

何だか、ムキになってそう怒鳴りつける獣人男性。

……どうやら、結構ダメージが入ったようである。

「……まぁいい。お前達なら、実力には問題ない……というか、やり過ぎるな。古竜様方から、お前達については色々と注意事項を説明されているから、お前達の正体は知っている」

「「「「…………」」」」

本当であれば、『何よ、ソレ!』と怒鳴るところであるが、何やら身に覚えがあったのか、黙って俯く『赤き誓い』の4人であった……。

* *

「ここだ」

案内なしでは到底辿り着けそうにないトリック的な道を案内されて、ようやく獣人の村に着いた一行。

(私なら、上空からの偵察や臭跡を辿るとかで、ひとりでも到達できそうな気がしますね……)

マイルがそんなことを考えていると、レーナが突っ込んだ。

「あんたなら、邪悪な欲望の力だけで辿り着けるわよ。『こっちから、ケモミミ幼女の匂いが!』とか言って……」

「ど、どうして、私が考えていることが……」

「「「分からいでかっ!!」」」

どうやら、全員に読まれていたようであった……。

村の入り口……別に村全体が柵で囲われているというわけではないが、単に森から続く細い道がそのまま村に入るところ……に、ひとりのやや年輩の獣人が立っていた。

「御苦労。あとは俺が案内する」

どうやら、『赤き誓い』に状況を説明する側、つまり村の役職者らしかった。案内役の猟師の出番は、ここまでのようである。

タイミングよくここで待っていたのは、当然、こんな事態の最中なのであるから村の周囲には何重もの警戒線というか索敵線というか、奴隷狩りや魔物に備えた見張りがおり、その連中から『赤き誓い』一行の接近を知らされていたのであろう。

「お前達のことは、ギルドの者から書状により説明されている。我らは女子供を戦いの場に出すことは好まぬが、例外もあるし、他の種族の男が、自分達は後方に引っ込んで女子供に戦闘を押し付けようが、別に文句は言わん。それは、それぞれの種族の勝手だからな。

我らはただ、戦いの場に出た者の勇気と、その実力を見せてもらい、評価するのみ。

人間共が我らを 謀(たばか) って捨て駒の弱者を送り込んできたのではないことを祈っているぞ。お前達と、そしてこの国の人間共のためにな……」

『赤き誓い』の案内の引き継ぎを済ませたものの、まだその場を離れていなかった猟師の獣人が、出迎えてくれた獣人の台詞を聞いて、必死で顔の前でパタパタと手を振って『やめろ!』と合図していたが、『赤き誓い』を睨み付けながら御高説を 宣(のたま) っている獣人には全く気付いてもらえてはいなかった。

そして、それに気付いていた『赤き誓い』一同は、気の毒そうな顔をするのみであった。

そう、古竜達から『あの連中には手出しするな』と言われてはいても、この村でその『あの連中』の顔や匂いを知っているのは、この猟師の男だけなのであるから、それは仕方のないことなのであった……。