軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

462 刻 印 1

「……何だって?」

さすがに、あの場で手紙を読むわけにはいかなかった。

なので、宿に戻った『赤き誓い』であるが……。

「ケラゴンさんから、また会いたい、って。それも、今度は族長と長老を含む、首脳陣勢揃いで。

あ、あの、指導者とかいう子供は抜きだそうです。ベレデテスさんも抜き。……つまり、『子供や若造抜きの、大人の話』ってことらしいです。何か、ちゃんとした話ができそうですね」

「いくら向こうが子供を抜いても、こっちには子供がいるんだけど、それはいいのかしら?」

「なっ……」

レーナの茶々入れに、ぷくっと頬を膨らませるマイル。

この中では、未成年なのは13歳のマイルだけである。出会った時はポーリンが14歳であったが、今はとっくに15歳になり成人している。

まぁ、古竜相手にマイルがいなくては始まらないので、ただのレーナの冗談であるが……。

「……それで、古竜達の目的は?」

メーヴィスは、真剣な表情である。

そう、相手が相手である。こんな場面で冗談を言えるなど、余程肝が据わっているか、馬鹿だけである。

そして勿論、レーナは前者である。

あれだけ何度も古竜と戦ったのである。それは、肝も据わるであろう。

……慣れた。

ただ、それだけのことであった……。

「彼らの目的は……」

ごくり

メーヴィス達3人が、息を飲んでマイルの言葉を待つ……。

「書いてないので、分かりません!」

ズコ~!

「そんなことだろうと思ったわよ!」

「想定の範囲内です……」

「ははは……。まぁ、マイルだからねぇ……」

ずっこけたレーナ達がそんなことを言うが、マイルは心外な様子。

「私のせいじゃありませんよっ! この手紙を書いた、ケラゴンさんのせいですよっっ!!」

実際には魔族か獣人に書かせたものであろうが、まぁ、マイルが言っていることは間違ってはいない。

「で、何て書いてあるのよ?」

レーナに促されて、みんなに手紙の内容を説明するマイル。

「ええと、長老、族長を含めた首脳陣8頭を案内していくから、来い、って。

場所は、ここからそう遠くはないところだそうです。『現地の人間達が、静かの森と呼んでいるところ』って……」

「ああ、ここから半日とかからないところだね。古竜の里から真っ直ぐ飛んだとして、途中で大きな街の上空を飛ぶこともなく来られるところだ。深い森だから、中央付近なら近くには人間の村とかもないし……」

多分マイルはその森のことを知らないのだろうな、と思ったらしいメーヴィスが、解説してくれた。

「……で、日時は?」

当然、それを確認しようとしたレーナであるが……。

「書いてありません」

「はァ?」

何だそれ、という顔をするレーナ。

「いや、前回もそうだったじゃないか。日時指定は無しで、『この手紙を読んだら、すぐ来い』っていうニュアンスで……。

古竜にとって、自分達が呼び出したら、他の生物はどんな用事よりも優先してすぐに駆け付けるのが当然であり、そして自分達が行くまでいつまでも待ち続けるのが当然だから、日時の指定をする、という概念がないんだよ。

ケラゴンさんは私達に良くしてくれるけど、そのケラゴンさんですら、それが当然だと身体に染み付いているんだろうね、多分。……だから、悪気はないんだろうと思うよ」

メーヴィスの再びの解説に、なる程、と納得するレーナ達。

「あ……」

しかし、マイルが何かに気付いたように声を漏らした。

「私達、長期不在にしていましたよね? あの手紙、どれくらい前に届いていたのでしょうか?」

「「「あ……」」」

ちょっとマズいかもしれない。

そう思い、たらりとコメカミのあたりに汗を伝わせる、4人であった……。

* *

「遅い!!」

マイル達が主要街道から外れて『静かの森』の外縁部に辿り着いたら、小径の脇にひとりの獣人が立っていた。

見ると、その後ろの草むらに小さなひとり用テントがあり、その側には石で組んだ簡易かまど、そして退屈凌ぎに剣の練習でもしていたのか、木で適当に作られた木人形が立ててあった。

「どんだけ待たせるんだよ、ふざけんなよ! 時間感覚がアレで、何日でも平気で森で寝っ転がっている古竜様達はいいよ。でも、俺はひとりでこんなところで何日も待ち続けるのはキツいんだよ、分かるだろうが! 用意していた食料なんかとっくに尽きて、ここ数日は碌なもんを喰っちゃいねぇよ! どうしてすぐに来ないんだよ!!」

獣人のおっさん、激おこ。

「仕方ないでしょ! 私達が、依頼を受けて行っていた他国への旅から戻ってきたの、昨日なんだから。私達が不在なのも確認せずに勝手に手紙を送ったり、同意も得ずに一方的に待ち合わせを決めたり、そして逆に日時は決めなかったりしたのは、あんた達じゃないの。

そんな手紙が来ていることも知らず、他国で依頼任務の遂行に努めていた私達が悪いの?

どこが、どういうふうに悪いのか、教えてもらえるかしら? ええ?」

「うっ……」

レーナの剣幕に、口籠もる獣人。

確かに、『赤き誓い』には何の落ち度もない。

「……分かったよ。じゃ、上空に向けてファイアー・ボールを3発、打ち上げてくれ」

((((また、それか……))))

しかし、以前それについて突っ込んだら返り討ちに遭ったため、何も言わずに黙ってファイアー・ボールを打ち上げる、『赤き誓い』であった。

そして、空腹であるらしい獣人のために、アイテムボックスから食べ物を取り出して渡してやるマイル。食べ物関連については、マイルはよく気が回るのであった。

* *

「来た来た……」

ファイアー・ボールを打ち上げてから2~3分後、空に 九(ここの) つの影が現れた。

……言わずとしれた、古竜達である。

この森のどこかにいたと思われるのにそんなに時間がかかったのは、おそらく寝ていたり動物にちょっかいを出して遊んでいたりしていた者たちを集めるのに少し時間がかかったのであろう。

そしてわざわざ上空に上がってから降下してきたのは、……勿論、その方が『カッコいいから』なのであろう……。

どん!

どん!

どどどどどどどん!!

九つの地響きと共に、古竜達が降り立った。

(ええと、今回はガキんちょもベレデテスさんもいなくて、ケラゴンさんがお偉いさん達だけを案内するとかで、戦士隊の人……竜たちはいなくて、1頭だけ少し離れた場所に立ってて、その竜の爪に私が彫った飾り彫りがある。ということは……)

「お久し振りです、ケラゴンさん!」

そう、彼がケラゴンに間違いない。

『うむ、壮健そうで何よりである、マイル殿』

(よかった、当たった……)

まぁ、こんなピンポイントなヒントがあれば、当たらない方が不思議である。

しかもマイルは、相手の顔が識別できない状態で状況から判断して相手が誰かを判別するのは、前世の海里の時に散々やっていたので、得意であった。

そしてケラゴンは、前に一頭だけで会った時には『マイル様』と呼んでいたが、さすがに他の古竜達の前で人間を『様』呼びするのは 憚(はばか) られたのか、今回は『マイル殿』と呼ぶことにしたようであった。

「で、今回は、何の御用件で……」

マイルも、空気を察して、ケラゴンに対して少し固い言葉使いをすることにしたようである。

古竜の首脳陣を引き連れてきたということは、やはり、相当重要な用件であると思われた。

しかも、近隣諸国で不穏な事象が生起している、この時に。

これは、やはり……。

『うむ、今回は、非常に重要な案件で参った。こちらにおられるのは、我が氏族の族長、長老、そして評議委員会の重鎮6頭である。そして、用件は……』

ごくり、と息を飲むレーナ達。

『皆の爪と角に、飾り彫りをして戴きたい、と……』

そして、ケラゴンのその言葉に、こくこくと頷く、他の8頭の古竜達。

「「「「な、何じゃ、そりゃあああああ~~!!」」」」