軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

446 エルフの里 12

「でも、何だか意図的なものを感じますねぇ……」

体形が似通っている、5つの種族。

獣人は更に細かく分かれているが、一応、便宜上ひとつの同じ種族ということにしておこうと考えるマイル。

「人間と交配できるくらいみんなとても近い種なのに、人間とは交配できるのに他の種とは交配できない。そして遺伝子が強いのか、交配できるくせにすぐに人間の遺伝子を押しやって、元の種に復元しようとする。それは、種族特性が薄れるのを避けるため? ……どうも、不自然な気がします……」

「そんなことを言っても、どうにもならんじゃろう。全ては、そう定められただけのことじゃからのう……」

普通ならば、そこは『神がそう定められた』と言うところであろうに、不自然に主語を省いた長老。……しかし、マイルは気付いていたにも拘らず、それに対して言及することはなかった。

* *

そして、その他にもいくつかの当たり障りのない話や伝承を聞き、長老達と別れた『赤き誓い』。

「まぁ、他の種族と混血できるのは人間だけ、ということは、わざわざエルフに聞くまでもなく、当然みんな知っているんだけどね……」

後で、みんなにそう告げるメーヴィス。

当たり前である。その程度のことが知られていないわけがない。混血やら異種族間婚姻というものは、エルフだけではなく、当然のことながら『相手側の種族』がいるわけであり、子ができるできないについては、双方に情報が得られるのだから。

そしてそういう歴史が、何千年、何万年続いてきたと思っているのか……。

「え? 私、知らなかったわよ?」

「私も、初耳です……」

マイルはともかく、レーナとポーリンも知らなかったようであるが……。

「そりゃ、子供にわざわざ積極的に教えるようなことじゃないからね。自分の子供が異種族の異性と仲良くなりかけたら、それとなく、誰かそういうことを知っている者が教えてやるんだよ。

片方が人間ならば子はできるし、そうでなくとも、子を成すことさえ諦めれば結婚できないわけじゃないからね。そういうのに差別的な国や、反対する親族がいなければ……。

ま、駆け落ち、養子を取る、長命の種族なら子供は次の結婚で、とか、色々と 途(みち) はあるしね」

貴族の子女でありながら、メーヴィスはそのあたりは結構 自由主義者(リベラリスト) であるらしかった。

とにかく、こうしてエルフの里でやることは全て終わった。

あとは、帰投の日まで男達からのお誘いを断り続ける日々が続くだけであった。

「勘弁してよね……」

「全くです……」

「「ケッ!!」」

アプローチが多くて参っているらしきレーナとマイルに対し、吐き捨てるように言葉を溢すポーリンとメーヴィス。

申し込まれてもどうせ断るくせに、やはりモテ具合に差が付くのは面白くないらしい。

しかし、人間の街では逆なのであるから、今くらい我慢して、レーナとマイルにひとときのモテ期を堪能させてやり、祝福してやればいいものを……。

大人気(おとなげ) ない、ポーリンとメーヴィスであった……。

* *

「やっと、帰投です!」

「「「長かった……」」」

実際にはほんの数日であったが、見るところがあまりない観光は初日で終わってしまい、あとは面倒な日々が続いたため疲れてしまっていた『赤き誓い』は、やっとやってきた帰投日に、ほっとしたような顔をしていた。

マイルだけは、お年寄り達に色々な話を聞かせて貰い、可愛がられてたくさんのお菓子を貰っていたようであるが、お年寄りの話に付き合うのはあくまでもサービス精神によるものであるメーヴィスや、そういうのが苦手なレーナとポーリンにとっては、確かに退屈な日々であっただろう。

しかし、それもようやく終わり、やっとエルフ3人組を護衛しての帰投の日がやってきたのである。

「色々とお世話になったわね……」

「しかし、大丈夫なのかしらね、長老達が乗り気になっている、あなた達が勧めた計画……」

「「「「あはは……」」」」

たらりと顔に汗を伝わせながら、誤魔化し笑いを浮かべるマイル達。

((((知~らない!!))))

そして、マイルは考えていた。

(もし、エルフ街計画が大失敗に終われば、それはエルフ達にとってとんでもない悪夢に……。

うん、まさに、『エルフ街の悪夢』……)

エルフ達のことを考えて心配しているかと思いきや、相変わらず、マイペースのマイルであった……。

(しかし、人間の街から色々なものを買い込むようになれば、輸送手段が必要かなぁ……)

そう、今回はマイルの 収納魔法(アイテムボックス) があったが、普段は里帰りする者が自分で背負う分しか運べないらしいのだ。

魔力が強いため、人間よりは多くの割合で収納魔法を使える者がいるらしいエルフであるが、それでも、使える者の数は決して多くはない。使える者がひとつの国に二桁くらいしかいない人間に比べれば割合が多いと言っても、母数が違いすぎるため、この里にひとりいるかいないか、という程度であろう。それに、マイル程の馬鹿容量というわけでもない。

(何か、物資を大量に運べる手段はないかなぁ……。小型のキャブオーバートラックみたいな……)

そして、マイルの頭にひとつの言葉が浮かんだ。

「いすゞ、エルフ!!」

突然の叫び声に、一瞬ビクッとしたレーナ達であるが、スルーしてすぐに元の様子に戻った。

……慣れた。ただ、それだけのことである。

そして、マイルの奇行に慣れておらず、しかもマイルの叫び声の中に『エルフ』という言葉が含まれていたために、何事かと動揺しているエルフ3人組であった……。

しかし、里の位置を分かりにくくするため獣道のようなところを通るようになっているエルフの里へのルートは、勿論馬車も小型トラックも通れるような道ではなかったし、道を整備すれば誰でもエルフの里に簡単に行き来できるようになってしまう。

……それ以前に、日本のトラックを入手する 術(すべ) がなかった。

ここは、エルフ街までの道を1頭立ての小型馬車が通れるよう整備して観光客の移動や物資の輸送が楽にできるようにし、そこからこっそりとエルフの里へ物資を運ぶようにすべきであろう。

「うむむ、とりあえずは、エルフ街と里の間の輸送用に、一輪車でも開発すべきかなぁ……」

ここでマイルが言っている『一輪車』とは、勿論、乗り物である 一輪車(ユニサイクル) ではなく、工事現場とかで使われる 一輪車(ねこぐるま) の方である。あれならば、理論上は、タイヤ1本の幅さえあれば獣道でも使うことができる。……あくまでも、理論上は、であるが……。

そして、帰路も何事もなく終わり、無事護衛任務を果たした『赤き誓い』。

依頼料はギルドで受け取るため、王都での解散時にはエルフ3人組からは何も受け取ることはない。

普通であれば、契約外のことを色々と頼んだのであるから別途割増し金とか追加の謝礼金とかが支払われてもおかしくないパターンであるが、ポーリンからのわざとらしい視線を避けるようにして、礼を言ってさっさと逃げる3人組。どうやら、今回の依頼料や家族へのお土産代等で散財して、かなり苦しくなっているらしかった。

ポーリンが苦々しげな顔をしているが、仕方ない。元々、苦境に立った知り合いへの無料サービスのつもりで少し手伝っただけなのだから……。

依頼完了届けにサインと共に書かれた評価は勿論Aなので、それで良しとするしかない。

「よし、今回も無事任務完遂、それもエルフからの指名依頼で、A評価だ。我ら『赤き誓い』の名を挙げるには充分な成果だ。さぁ、ギルド支部に凱旋するよ!」

「「「おお!!」」」

さすが、パーティリーダーのメーヴィスである。追加報酬が貰えずに少し不満げであったポーリンも、機嫌を直したようであった。

「しかし、エートゥルーさんとシャラリルさんは、これからマファンの街に戻られるんですよね。ここで解散しちゃっていいのかな……」

「そんなの、乗合馬車か商隊の馬車に便乗させて貰うに決まってるじゃない。水がいくらでも出せて、治癒魔法と攻撃魔法が使える美人のエルフふたり組なんて、乗車賃どころか、お金を払ってでも乗せてくれるわよ」

「あ、なるほど……」

レーナの説明に納得するマイル。

「それに、ふたりだけで徒歩で旅をしても、主要街道付近に出る魔物程度なら問題なく追い払えるだろうし、盗賊も、遠距離から爆裂魔法を連射した時点で逃げ出すだろうからね」

「……護衛、要らないじゃないですか……。というか、自分達が『護衛する方』じゃないですか、それって……」

レーナに続くメーヴィスの説明にそんなことを言うマイルであるが、今更であった。

そしてそれから数カ月後、ドワーフの村から代表者がやってきて、『ドワーフ街』の建設計画の相談に乗ってくれ、と頼まれることになるとは、この時のマイル達は思ってもいなかった。

どうやら、『エルフ街』計画が思った以上に当たり、それを知ったドワーフが自分達も、と考えたらしい。やはり、ドワーフはエルフに対する対抗意識が強いらしかった。

そして勿論、マイル達の返事は……。

「「「「知らんがな~~!!」」」」