軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

441 エルフの里 7

長老の訓示の後、 自由時間(フリータイム) が始まった。

この後、色々とイベントが用意してあるらしいが、参加者の多くが元々顔馴染みである。

この 顔合わせ(おみあい) 自体が定期的に開かれている上に、同じ村の者は勿論、近隣の村の者達にも結構知り合いが多いのである。

いくらエルフとしては『若い』といっても、何十年もここで暮らしているのだから、そりゃ、他の村の者と知り合う機会はそれなりにある。祭りだとか、合同での狩猟大会だとか、様々な交流会、不作の時の援助のための交流、そして将来のために子供同士を仲良くさせるための催しとかで……。

そういう、『元々知り合いで、割と仲の良い者達』が、まず始めに少々お酒を飲みながら歓談していい雰囲気に、という狙いなのであろう。

そしてその後、少しお酒が回ったあたりで、更にそれを後押ししたり、初対面である者同士が話す切っ掛け作りのために、何らかのイベントを行う。

こういう世界、こういう時代としては、かなり先進的である。色々と工夫し考えているということは、やはり少子化で困ってでもいるのだろうか……。

「さすがエルフ、年の功だけあって、ちゃんと考えていますね……」

「無駄に年を取っているわけではない、ということですか……」

マイルとポーリンが適当な批評を口にしているが、他の者は聞いていないので、問題はない。

「クーちゃん、久し振りだね! 前回の『顔合わせ』以来だっけ?」

「うおっ、イケメン、来たぁ!」

『赤き誓い』の側に立っていたエルフ3人娘のところに、十代後半くらいの少年……おそらく、実年齢は数十歳……がやってきて、クーレレイアに話し掛けた。

そして、反射的にそう叫んでしまったマイル。

そう、エルフは美男美女揃いなのである。

今までに会った年配組もイケメン揃いであったが、それらは、マイル達から見れば中年や老人であるため、美形ではあってもそうインパクトはなかった。なぜか『赤き誓い』は4人共、中年のおっさんは美形より渋いのが好みだったので。

いや、ただ単に、みんな同年代の男と付き合ったことがないため理想の男性像が父親のままなだけであるが……。

そして、今やってきた若者……人間基準だと、おそらく老人の年齢……は、線の細い、何というか、『庇護欲そそり系』なのであった。そのため、観賞用としてであれば『赤き誓い』の面々も興味を 惹(ひ) かれるが、『付き合いたい男性』としての価値は全く感じていなかった。

「げっ、リーベルク……」

そして、あからさまに嫌そうな顔をしたところをみると、クーレレイアも同様であるらしかった。

クーレレイアはあれだけ父親べったりなのだから、『赤き誓い』の面々のように、『その傾向がある』というようなレベルではなく、完全無欠のファザコンであるから、こういうタイプには惹かれなくても無理はない。

「どうだい、そろそろ人間の街で暮らすというような物好きなことはやめて、里に戻ってきては……」

そう言って、ポーズを決め、白い歯をキラリと光らせて微笑むリーベルク。

そして……。

「里は退屈だから、ヤダ!」

クーレレイア(クーちゃん) 、敵を鎧袖一触。

「え……」

どうやら、今の攻撃には絶対の自信があったらしく、呆然としているリーベルク。

「アイツ、昔からクーレレイアにしつこく絡むから、嫌われてるのよねぇ……」

小声で、そう教えてくれるシャラリル。

「「「「あ~……」」」」

あまりにも、分かりやすすぎた。

エルフは美形が多いから、『美形』というのは武器にはならない。

そして、リーベルクと同じく線の細いスリムで高身長な者が多く、一部の年配者だけが鍛え上げたがっしりとした身体をしている。そういう父親を持っており、そして極度なファザコンであるクーレレイアが、なよなよとした 耽美系(たんびけい) の男に惹かれようはずもない……。

「レイア、まだ戻ってこないのかい?」

「クーレレイア、人間の街にもそろそろ飽きたんじゃないか?」

そして、次々と男達が寄ってきた。

「おおお、クーレレイア博士、モテモテです!」

幼い外見で、胸が皆無のクーレレイア博士のモテ振りを見て、思わず歓喜の声を上げたマイル。

「……馬鹿ね、それでモテるのは、エルフだからよ……」

しかし、事情を知っているらしきレーナは、せっかくのマイルの喜びにそう言って水を差した。

そして、エートゥルーが小声で詳しく説明してくれた。

そう、エルフは大半の者が貧乳であるため、そこはマイナス要素にはならないのであった。

そして、幼い頃は比較的早く成長するエルフは12~13歳から15~16歳くらいに見える期間(実際には、その数倍の年齢であるが)は、数十年くらいしかない。そしてその後の、人間にとって17~18歳から40歳前後くらいに見える期間が非常に長く続く。そのため、適齢期に入ったばかりであるクーレレイアくらいの年齢、外見の女性と付き合える機会は、そう多くはない。

大抵は初婚の相手と50年以上は連れ添うため、再婚する頃にはもう人間の17~18歳くらいの外見になっているからである。そして、初婚が遅く、その年代になってからという者も多い。エートゥルーやシャラリルのように……。

なので、クーレレイアくらいの年齢の者と結婚するには、早期の死別とかの特殊な場合を除き、チャンスは結婚適齢期になったばかりの女性との初婚の時しかないのであった。

「ロリコンかッッ!」

エートゥルーからの説明を聞いたマイルは、ファザコン、シスコンに続くエルフの 業(ごう) の深さに、思わずそう吐き捨てるのであった……。

レーナはファザコンを、メーヴィスは兄達のシスコンを、そしてポーリンはブラコンを普通のことと思っているため、それら3つ全てを異常だと思うのはマイルだけであるが、さすがにロリコンはみんなが嫌悪するだろうと考えているマイル。

……しかしマイルは、レーナ達3人が自分の事をロリコンだと思っていることには全く気付いていなかった。自分はただの子供好きに過ぎない、と考えていたので……。

そして、そこでクーレレイアがマイルの腕を掴み、ぐいっと男性達の前に引き出した。

「紹介するわ。私達が人間の街でお世話になった、ハンターの子達よ。みんな純血の人間らしいけど、凄いのよ!」

((((あ、ここで私達の出番なんだ……))))

どうやら、『赤き誓い』の出番がきたようである。

そして、ハンターの禁忌には触れない範囲内で、『赤き誓い』の活躍や、自分達が人間の世界でやっている色々なことを面白おかしく説明する、クーレレイア達、エルフ3人組。

「そして、もう人間の平均寿命の4分の1くらいを過ぎているというのに、この子達を始めとして人間の同年齢の子達は結婚どころか、男の影も無し! でも、本人達も周りの人達も、全く気にした様子もないのよ!!」

((((うるさいわっっ!!))))

そういう話に持っていく、ということは知っていたレーナ達であるが、さすがに大勢の男性達の前でそういう言い方をされるのは不愉快であった。

「「「「「「え……」」」」」」

いつの間にか、熱弁を振るうクーレレイア達の周りに集まっていた、参加者と世話役の者達。

「そうか、人間だから、その姿でも未婚か……」

「しかも、実年齢が十代という幼児でありながら、結婚適齢期であり、誰にも非難されることはない……」

「そして、他の男に乗り換えることなく、ひとりの男だけに自分の全生涯を捧げ、その男の思い出だけを胸にしてこの世を去る……」

「俺達にとって、人生のうちの40~50年をひとりの女性に捧げることなど、どうということのない普通のことだ……」

「そして、若き時から成熟し最期を迎えるまでの、ひとりの女性の美しき生涯の全てが自分のものに……」

「しかも、人間の街ではエルフは優遇されるみたいで、楽に、楽しい生活が送れそうだ……」

「若い間の数百年くらい、人生経験のために里を出てもいいよな……」

((((((マズい!!))))))

長老と世話役の年配女性達が蒼くなったが、時すでに遅し。

ずいっ、と『赤き誓い』に向かって一歩踏み出す男性陣と、それを呆れたような冷たい視線で眺める女性陣。そしてその双方に共通する、興味津々、といった様子。

そう、勿論、若い女性達にとっても、閉鎖的で男尊女卑のクソ田舎よりも、華やかで文明的でエルフというだけでちやほやされるという人間の街でしばらく暮らしてみるのも悪くはないかも、と思えたのである。

勿論、男連中と全く同じ理由で、『人間の男性と結婚してみるのもいいかも……』という、わくわくするような想いと共に……。

……今回の 顔合わせ(おみあい) は、前途多難のようであった……。