軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

438 エルフの里 4

「「「すみませんでしたああぁ~~!!」」」

連れていかれた村長の家で、他の3人のエルフの前で3人組に土下座で謝罪された『赤き誓い』。

どうやら、本当に悪気はなかったようなので、マイル達も矛を収めたようであった。

但し、これは大きな『貸し』として、今後クーレレイア博士やエートゥルー達が調子に乗った時には大きな武器となるはずであった。

今ここにいるのは、エルフ3人組と『赤き誓い』の他には、他の3人のエルフだけであった。

ひとりは、この家の持ち主である村長。他のふたりは、長老と呼ばれている老人と、戦闘職っぽい感じの30歳過ぎくらいの男性である。男性はおそらく、長老の護衛役か何かなのだろう。

勿論、30歳くらいに見える男性も、同じくらいに見える村長も、当然見た目通りの年齢ではないのだろうが……。

あ、いや、エルフにとっては『見た目通り』なのかもしれないが、人間にとっては、ということである。

エルフは外見が若い状態が長く続くため、護衛っぽい男性と村長とは、見た目は同年齢くらいに見えても、おそらく実際にはかなり年が離れているのであろう。

そして、見た目が老人ぽい長老は、本当に凄く年を取っているのであろう。若く見える期間が過ぎて、人間よりやや遅いくらいの速さで老化が進んでいる年齢だということは、エルフにとってはほぼ寿命の終盤である。……まぁ、まだ若い姿で『長老』と言われても違和感があるが……。

「いや、すまんかった。儂はただ、『その少女を里に連れてくるように』と指示しただけなんじゃ。なので当然、ちゃんと説明して招待すると思っておった。それを、こやつらときたら……」

そう言って、手にした杖で3人組の頭を小突く長老。

「まぁまぁ……。世間知らずの子供がやったことですから……」

村長がそう言って 庇(かば) うが、それは今言ってはいけない台詞である。

「馬鹿もんが! それを言っていいのは、被害者である人間の子供達だけじゃ! 加害者側のお前が、被害者の前で言っていいことではないわ! 世間知らずはどっちじゃ!!」

村長の言葉には少しムッとしていたレーナ達であるが、さすが長老は年の功だけあって、物事が分かっている。その言葉に慌てて謝罪する村長の姿に、皆の機嫌も直った。

「そういうわけで、正直に言って断られたら困ると思って……。以前、里に招待するという条件でおかしな魔法について教えてもらおうとした時、断られたから……」

エートゥルーの言葉に、確かにそういうことがあったなぁ、と思い出した『赤き誓い』の4人。

これは、少し情状酌量の余地がありそうであった。

それに、いくら実年齢はマイル達の数倍であるとはいえ、エルフの中ではまだ子供扱いされる年齢なのであろう。

5歳の人間と5歳の狼を較べて、どちらがより幼い行動を取るか。

エルフ3人組は、自分達の寿命のうちまだ1割そこそこしか生きていないのであろう。ということは、それは人間にとっての10歳未満の立ち位置であると言える。

(仕方ないか……)

マイルは、本当に全く悪気はなかったらしい3人を許してやることにした。

「今日は、このへんで勘弁しといたろか!」

何じゃそりゃ~、と思いはしても、それを口にできる立場ではない。黙って平伏する、3人のエルフの少女(?)達であった……。

「……で、長老さんが私達に会いたいと言われた理由は……」

ぐだぐだになり、一応村長と長老にも謝罪された後、薬草茶と焼き菓子(トウモロコシのようなものの粉に木の実を練り込んで焼いたもの。割と美味しい)を出され、話し合いを始めた『赤き誓い』一行。

レーナも、さすがに相手がエルフの高齢者とあって、ちゃんと敬語を使っている。

普段は小娘と舐められないようにわざとキツい喋り方をしているが、一応はちゃんとした喋り方もできるのである。昔は父親を手伝って接客もしていたのだから……。

それに、エルフでこの外見になる年齢となれば、人間にとっては『数十世代前の、御先祖様』レベルであり、殆ど神様の域である。失礼な真似など、できようはずがない。

「うむ、それなんじゃがな……、ちょっと待ってくれ」

くんくん

「え?」

突然、自分の方に顔を突き出して匂いを嗅ぐ長老に、ドン引きのマイル。

そして……。

「うむ、やはりクーレレイアが手紙に書いておった通りか。おぬし、どこの氏族の係累じゃ?」

それを聞いて、愕然とするマイル。

「臭いんですか! 私、やっぱりエルフ臭いんですかああああぁっっ!!」

「「「ちょっと待てええぇっ!」」」

『エルフ臭い』というパワーワードに、激昂するエルフ三人娘。

「オマエラ、ちょっと落ち着けええぇ!!」

女性にとってデリケートな話題であったため、一瞬口出しを躊躇った長老と村長に代わって、レーナが怒鳴りつけた。

そして、メーヴィスがポツリと呟いた。

「話が全然進まないよ……」

「……というわけで、うちは貴族の本家筋ですから、少なくともここ十世代くらいは人間以外の血は入っていないと思うのですが……」

マイルが、以前ベレデテスにしたのと同じような説明をすると、長老と村長は頭を捻っていた。

この説明は、あの時、クーレレイア博士も聞いていたはずなのであるが、手紙による報告とやらではそれは書いていなかったのであろう。

「じゃが、同族の匂い……、あ、いや、本当の『匂い』ではなく、気配というか波動というか、そういう意味のものなんじゃが、それを感じるんじゃがのぅ……」

長老の言葉にこくこくと頷く、村長を含む他のエルフ達。

「そんなことを言われても……」

多分『神様』がエルフやドワーフのデータも『平均値』の中に突っ込んだせいだろうと思いはしても、あくまでも推測であって根拠はないし、そもそもそんなことを口にできるわけがない。なのでそう言うしかないマイルであるが……。

「でも、ドワーフ臭い気もしますよね?」

「うむ、確かに……」

「あ、やっぱりみんなもそう思ってたんだ……」

シャラリルの言葉に、次々と同意の言葉を漏らすエルフ達。

「「「「「あ……」」」」」

テーブルに突っ伏しているマイル。

「だから、話が全然進まないよ……」

そしてメーヴィスの言葉が、 虚(むな) しく響くのであった……。

「え~、ゴホン! では、仕切り直しまして……」

仕方なく、当事者であるマイルが司会役となって話を進めることになった。それが一番手っ取り早いだろうということで……。

「まず、私はエルフとの血縁関係はありません。少なくとも、十世代以内には……。勿論、ドワーフとも、です」

マイルの言葉に、素直に頷くエルフ達。

エルフ達も、『何となくそういう雰囲気を 微(かす) かに感じる』というだけであり、同胞達から普通に感じる、明らかな『エルフとしての波動』と同じように感じるというわけではないらしく、たまたまエルフに少し近い体質に生まれただけか、あるいは大昔に混じった血がほんの僅か残っていて、それがたまたま隔世遺伝で少し強めに出た程度、と考えたらしい。

これで、長老が気にしていた案件のひとつは片付いた。

どうやら、本人が所属する氏族の管理下から外れたハーフかクォーターが、人間の街で好き勝手やっているのではないかと心配していたらしいのである。

人間には教えていない、エルフだけの秘伝とか、エルフの中でも長老クラスや賢人会の者達にしか伝えられていない秘術とかを漏らされたり、人前で使いまくられたりしては堪らないので、そのあたりも心配だったらしい。

また、外見年齢が12~13歳の人間が高度な魔法を使うことから、エルフの間でもお伽噺に出てくる程度の、過去にも現在にも実在を確認されたことのない魔法である、『若返り魔法』の存在の可能性も、ほんの僅か、疑っていたらしい。……ごくごく、ほんの僅かではあるが……。

人間の何倍もの寿命を持つエルフであっても、若返りというものには興味があるのか。

いや、長命で若い姿での期間が長いからこそ、急速な(エルフにとっては。それでも人間よりはゆっくりとした)老化が進み始めた時、より強くそれを求めてしまうのかもしれなかった。

いくら長い寿命で退屈を持て余してはいても、これはまた、別問題なのであろう……。

「で、もうひとつの件ですが……」

そう、エルフ3人組からの報告にあった、間違いなく存在する、激しく興味を惹かれるもの。

退屈を紛らせてくれる、新しいもの。

そして、他のエルフの氏族から流出した秘伝である可能性も否定できない、自分達も知らない新しい魔法技術。

それが、長老始め、賢人会がマイルを里に招こうとした最大の理由であった。

「クーレレイア博士やエートゥルーさん、シャラリルさん達にお見せした、一般には知られていない魔法は……」

マイルの言葉に、ごくりと息を飲む長老と村長、そして三人娘達。

「実家の秘伝です!」

「「「やっぱり!!」」」