軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

429 マイルの決断 2

(チャンス!)

マイルの鈍感さに皆が唖然としている時、レーナはこの絶好のチャンスを見逃さなかった。

そう、マイルがマルセラ達に不信感を抱き、先程までの流れが止まった、このチャンスに懸ける!

「マイル、私達の誓いを忘れちゃいないわよね? 私達の友情は不滅だと、みんなで誓ったあの言葉を!」

会心の一撃!

そう考え、むふー、と鼻息も荒いレーナ。

しかし、マイルがそれに答える前に、マルセラが反撃した。

「え? 昨夜お聞きしたお話では、その誓いとやらは『たとえこの先、進む道行きが分かれようとも』とかいうことではありませんでした? つまり、別離は織り込み済みであり、そうなっても全く問題はない、ということでしょう?」

「「「あ……」」」

レーナ、痛恨の一撃!!

確かに、そう解釈できる。

ぐぬぬ、と唸るレーナであるが、上手い返しが思い付かない。

すると、横からポーリンが……。

「それは、あなた達にも言えるのではありませんか? 共に過ごした楽しい学園生活が終わり、それぞれが進むべき道へと分かれたならば、いつまでも続く友情を胸に、御自分の道を歩まれるべきなのでは?

それを、自分の進むべき道を捨てて、別れた友人を追いかけて縋り付くとか、自分の新たな道を新たな仲間達と共に歩んでいる者にとっては、迷惑なだけなのでは?」

「「「ぐはぁ!」」」

マルセラ達、痛恨の一撃!

互いに血を吐きながら続ける、殴り合いのマラソン。

それは、不毛なまま、どんどん精神を磨り減らす戦いであった……。

そして遂に、マイルが仲裁に入った。

「お願い、私のために争わないで!」

「「「「「「それはもう、ええっちゅーねん!!」」」」」」

マイルがこういう時によく使う、どこかの地方の 訛(なま) りが入った突っ込みを返す6人。

……結構、気が合うようであった……。

「……とにかく、決めるのは私達ではなく、アデルさん御自身ですわ。さぁ、アデルさん、はっきりとおっしゃってくださいな、どちらと行動を共にするかを!」

遂にマルセラが、最後通牒というか、マイルに決断を促した。おそらく、マイルが自分達を選ぶという、絶対の自信があるのであろう。

そして……。

「ごめんなさい……」

マルセラ達に向かって、辛そうな顔でそう言って頭を下げるマイル。

「「「…………」」」

そして流れる、静寂の時間。

こういう時の時間は、長い。

ほんの十数秒が、 途轍(とてつ) もなく長く感じられる。

そんな時間が過ぎて……。

「やはり、そうですか……」

「「「「え?」」」」

マルセラの思いがけぬ言葉に、驚くマイルとレーナ達。

「いえ、分かってはおりました。アデルさんは、私達と一緒に行けない理由は何度も話されましたけれど、『赤き誓い』の皆さんと一緒にいられないという理由は一度も話されていませんでしたし。

それに、御自分の望みではなく、私達のことを第一に考えれば、それ以外の選択をされるようなアデルさんではありませんわよね」

にっこりと微笑んで、そう話すマルセラ。

「分かりますわよ、それくらい。アデルさんがそういう方ですから、私達はアデルさんとお友達になったのですから。

御自分のことより、他者のことを優先する。パンがひとつしかなければ、自分は先に食べたと嘘を吐いて、全て他者に与える。そんな、馬鹿なお人好しのアデルさんですから、私達は、わ、わだじだぢは……」

ぐしゅ、ぐしゅ、と鼻をすすり始め、そして遂に泣きだしてしまったマルセラ。そして、モニカとオリアーナも一緒に……。

「「「うわああああああぁ~~!!」」」

そして、泣き出したマイルがマルセラ達と抱き合い、みんなで一緒に泣きじゃくる。

「「「…………」」」

そしてレーナは、勝ち誇ることもできず、居心地の悪そうな顔をしていたが、メーヴィスに袖を引かれ、ポーリンと共にそっと部屋から出ていったのであった……。

夕食のため食堂に現れたマイルと『ワンダースリー』の面々は、あの後も泣き続けたのか、皆、眼を腫らしていた。

しかしそれでも、食事はがっつりと食べるのであった……。

そしてその夜、レーナ達からの申し出で、マイルは『ワンダースリー』の部屋へ貸し出された。

3人で借りた部屋ではあるが、『ワンダースリー』の部屋にもベッドは4つあったので、せめてこの街での滞在期間中はマイルと同室にしてやろうという、レーナ達の心遣いであった……。

* *

「……では、始めます!」

こくり

マイルの言葉に頷く、『ワンダースリー』の面々。

ここは、王都近くの森の中である。

王都に一番近いためハンター達が乱獲し過ぎて、獲物となる動物も魔物も、そして薬草や山菜類でさえ碌になく、今では殆ど人が立ち入ることのない、不人気な狩り場。

マイルと『ワンダースリー』の面々が、ここで何をしているかというと……。

「まずは、身を護るための 障壁魔法(バリア) です。仔牛が突っ込んできたくらいの力でも防げる程度の障壁魔法、『 仔牛(こうし) 力(りょく) バリア』です!」

こくこく

そう、マイルがマルセラ達と別れた後に開発した魔法のうち、マルセラ達の命を護るために役立ちそうなものをいくつか伝授するつもりなのである。

……勿論、今度はしっかりと秘匿に関する念押しをして……。

まず最初に、バリア。

それに続いて、様々な便利魔法を。

攻撃魔法は、自分達で研鑽したもので頑張ってもらう。マルセラ達には、攻撃魔法でブイブイ言わせてもらうつもりはない。

なので、学園の時と同じく、支援魔法を中心に教えるマイルであるが、マルセラ達が既に独力で探索魔法を開発していたのには驚かされた。

我流の、効率があまり良くないやり方だったため、マイルの最新式のやり方であるアクティブ・ソナー方式と、そのひとつ前のやり方であるPPIスコープ(Plan Position Indicator scope)方式のものを教えたのであるが、それでもマイルのような現代地球の知識なしで独力でその発想に至ったというのは、驚嘆すべき才能であった。 なお、PPI方式も教えたのは、特定方位を重点的に探索する時にはPPI方式でスキャン方位を指定する『セクタースキャン』の方が便利だからである。そう、用途によって使い分けるのが、プロというものなのである。

そして……。

「では、最後に、アイテムボックスの魔法を伝授します。

これは、収納魔法に似ていますが、原理は全く異なる魔法です。なので、収納魔法とは違い、教えられれば簡単に使える者もいれば、いくら努力しても全く駄目な者もいます。

また、他者にその存在が知られると大変なことになりますから、その存在は絶対秘密、他の人達には普通の収納魔法だと思わせてください」

マイルの言葉に、真剣な表情で頷くマルセラ達。

マイルには、マルセラ達が荷物運びに苦労し、薄汚い格好を甘受するのを看過することはできなかった。なので、一緒に旅をすることができないことへのせめてもの罪滅ぼしとして、アイテムボックスの魔法を伝授することを決心したのであった。

マルセラ達ならば、決して自分を裏切ることはない。

そして、もし裏切られたとしても、アイテムボックスの魔法を伝授したことを後悔することはない。

今の自分が、現時点における全てのことを考慮に入れて選択したことなのであるから、それがどのような結果となろうとも、決して後悔することはない。

それに、万一の場合はナノマシン達が拒否するよう上位権限で指示しておけば、大惨事を招くこともあるまい。そう考えての決断であった。

「では、使い方を説明します……」