軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

427 合同受注 6

結局、あの後は、『赤き誓い』が近接戦闘の腕を見せることなく、普通に狩りをして終わった。

適当なゴブリンやコボルトの群れに出遭わなかったし、オークやオーガの群れは、魔法で戦うならばともかく、得物が 杖(スタッフ) であるレーナとポーリンには、近接戦闘で相手するには荷が重すぎる。そしてメーヴィスを除き、『ワンダースリー』以上の腕前を見せられるとも思えなかったため、無理に近接戦闘に拘るのはやめたのである。

獲物の輸送については、マイル抜き、というルールの『適用除外』として、全てマイルの収納に収めることとなった。せっかくの獲物を持ち帰らないなどということは、倒された獲物に対して申し訳ないし、狩猟の神とポーリンが許すはずもなかった。

「「「…………」」」

そして夕食時、普通に振る舞ってはいるものの、何となく様子がおかしい『赤き誓い』の3人。

明日は、朝食を摂った後、そのまま帰路に就く予定である。そして昼過ぎに王都に着く。

来る時より時間がかかるのは、勿論、獲物代わりの 重し(ウエイト) として、マイル以外の6人が砂袋を 担(かつ) ぐからである。

そこは、 統裁官(マイル) の指示による適用除外とはならなかったので……。

『赤き誓い』と『ワンダースリー』は、それぞれ自分達が用意したものを食べているが、場所は同じであり、一緒に焚き火を囲んで座っている。

別に敵対しているわけではないので、離れて別々に、というわけではない。もしそんなことをされたら、マイルがどちらにつけばいいのか分からなくなってしまい、両者の真ん中で、ひとりポツンと立ち尽くしてしまうであろうことは容易に推察できたので、両パーティとも、そんなことはしない。

それでも、両パーティは、それぞれマイルとは親しいものの、その他は互いに以前一度会っただけであり、それも、マイルが『ワンダースリー』とゆっくり話せるよう、レーナ達は黙って見守っていただけである。……つまり、初対面と大して変わらない。

共通の話題も、ハンターとしての活動内容以外にはあまりなく、そしてハンターとしての話は、今、その勝負をしている関係上、話題にしづらかった。

……ということは、両者に無難な話題を振って会話を盛り上げるのは、両者の共通の友人であるマイルの役目ということになるのであるが……。

(……無理! 無理無理無理無理無理いいぃ~~!!)

そんな超高度なリア充テクニックを、マイルが使えるわけがなかった。あまりにも、難易度が高すぎる……。

なのでマイルは、『ワンダースリー』と喋り、『赤き誓い』と喋り、『ワンダースリー』と喋り、『赤き誓い』と喋る、という、大忙しで、地獄のような状態に……。

(ひいいいいいぃ~~!!)

普通であれば、マルセラ達もレーナ達も、そのあたりはきちんと配慮できる者達のはずであった。

しかし、場合が場合なためか、どちらも、威嚇というか牽制というか、相手の出方を窺う、というような態度であり、とても腹を割って仲良く談笑、という雰囲気ではなかった。

おまけに、まだ『今回の合同受注』は終わっていないため、マイルにはハンターとしての仕事や戦い方、魔法関連のアドバイスをすることは禁止されたままである。これでは、マイルが 接待役(ホステス) を務めることは不可能である。そういう制限がなくても難しいというのに……。

そういうわけで、しばらくはぎくしゃくとしていたが、一応はどちらも『マイル(アデル)の友人』という立場であり、そして更に、同じ若い女性だけの新米パーティ(『赤き誓い』は、最近『新米』を返上したが)同士であり、そのうち互いに言葉を交わすようになり始め、ほっとするマイルであった……。

* *

翌朝の食事は簡単に済ませて、そのまますぐに帰投。

マイル以外の6人は大荷物(獲物の肉を模擬した砂袋)を担いで帰るので、腹一杯食べたりはしない。

そして……。

「……重いですわ……」

「…………」

ただの砂袋だというのに、貧乏性のせいか限界ぎりぎりまで担いだマルセラと、それを見て同量の砂袋を担いだレーナが、苦悶の顔でよろよろと歩いていた。

「ピー! レーナさんとマルセラさん、ピー!!

そんなにふらふらになってたら、魔物や盗賊の奇襲を受けたら碌に戦えずにやられちゃいますよ! それに、そんなに無理をしたら、明日一日、下手をすると更に数日間、仕事ができずに筋肉痛で寝込むことになっちゃいますよ。それって、却って大損です!」

さすがに、口を挟まずにはいられなかったマイル。おそらく、双方に共通する指摘だから贔屓にはなるまい、とでも考えたのであろう。

「「あ……」」

自分達の失策を理解したのか、バツの悪そうな顔で背負った砂袋の数を減らす、レーナとマルセラ。そしてその砂袋を収納するマイル。

砂袋といっても、袋を用意したり、砂があるところへ行って詰め、縫い合わせるという手間がかかっているのであるから、捨てたりはしない。また、いつか役に立つこともあるであろう……。

そして、ようやくのことで宿に戻った一行。

「……疲れましたわ……」

「そうですねぇ……」

「歩くのはともかく、いつもはこんなに重いものを運んだりはしませんからね……」

マルセラ達の前では、意地でもそんな言葉は吐かない、という態度のレーナ達とは違い、平気でそんな言葉を呟くマルセラと、それに同意するモニカ、オリアーナ。

そう、『ワンダースリー』は、練習のため他パーティと合同でオーク狩りとかをする場合を除いて、あまり重いものを運ぶ依頼は受けないのである。 専(もっぱ) ら、護衛依頼、高価な薬草や稀少素材の採取、売り物になるような素材はあまり取れない魔物の討伐依頼等、帰りの荷物があまり増えないもの主体である。

持ち帰る量で勝負、などという依頼は、何か理由がない限り、最初から対象外なのであった。

そして、『自分達は、そういうスタイルのパーティである』と割切っているため、専門外の部分で『多少の、努力だけではどうしようもない弱点』があろうと、あまり気にしなかった。

そんな依頼は受けず、自分達が得意な依頼だけを受ければよいのだから、それで問題ない。

そもそも、学園での1年8カ月に亘るハンター生活の大半は『 特定の仕事(しょうじょのごえい) 』だけを受けていたのである。偏った受注など、今更であった。

『赤き誓い』は、自分達こそがマイルのパーティ仲間としてふさわしい、ということを示そうと、 躍起(やっき) になっていた。

しかし、『ワンダースリー』は、マイル(アデル)が 仲間(ともだち) を選別することも、ましてやそれに『強さによる優劣』などを考慮することなどあり得ない、と考えて……、いや、『知って』いたため、そんなことは全く気にしていなかった。

マルセラは、レーナからの常時依頼共同受注の提案に対して、『とりあえず、互いの実力を見ないことには、話ができませんからね』と答え、それを受けた。

しかしそれは、決して『どちらが強いかで優劣を決め、それによってマイルが加入するパーティを決定する』などという考えではなかったのである。

レーナ達が、『ワンダースリー』の強さを知りたいと主張しているため、一応、それに乗ってやっただけである。

マルセラ達は、自分達が『赤き誓い』より優れているなどとは考えてもいなかった。

特化型の 歪(いびつ) な 職種(ジョブ) 構成であり、学生が学業の片手間で休養日に護衛依頼をこなしていただけ。……そして、実際に襲われたことなど、殆どない。

その、ほんの数回の『襲われた』というのも、たまたまチンピラや馬鹿な低ランクハンターがちょっかいを掛けてきただけであり、暗殺者や盗賊、貴族の私兵とかが襲ってきたわけではない。なので、対人戦闘の経験も殆どない。

……まぁ、『ちょっと特殊な魔法』とかで、かなり善戦できるであろうとは思われるが……。

宿に着いたのは 昼2の鐘(午後3時) の頃であったため、このまま昼食は摂らず、夕食をがっつり食べることにしたみんなは、『ワンダースリー』の部屋に集まり、それぞれベッドに腰掛けて、今回の反省会……ではなく、合同受注についての話を始めた。

もう仕事は終わっているので、マイルの『口出し制限』は解除済みである。

そして、まずはマルセラから……。

「やはり、ハンターとしては『赤き誓い』の皆さんの方が私達よりずっとお強いですわね。

まぁ、経験の差や、元々の才能から考えれば、当たり前のことですけど……」

「「「え?」」」

てっきり、『自分達の方が優れている』と言い出すものと思っていたレーナ達は、意外そうな顔をした。

『どちらが強いか』という話であれば、勿論、自分達の方だと自信を持って言える。しかし、『ハンターとしての能力』と言われると、この3日間、『赤き誓い』は醜態を晒しすぎた。マルセラ達がそこを突いて、『ワンダースリー』の方が優秀だと主張するだろうと予想しており、それに対しては反論できない、と思っていたのである。

しかし、マルセラはそうはしなかった。そして、自分達の負けを認めるとは……。

(マイルを諦めたのかしら……)

レーナがそう考えるのも無理はなかった。

しかし……。

「皆さんは、優れた能力でAランクを目指し、そして大金を稼がれるのですわね?」

「……え、ええ……」

そのあたりのことは、雑談の時に『私達の目標』として話している。

「なので……」

「なので?」

「皆さんはAランクハンターになることとお金を稼ぐことに 邁進(まいしん) され、そういうことを望んではおらず、地味に目立たず普通の幸せを求めているアデルさんは、私達と一緒にCランクハンターとして、のんびりまったり、面白いこと、楽しいことをやりながら世界を廻れば良いのですわ。しばらくの間……、そう、10年くらい。

そうすれば、私達は23歳。そこでBランクになって帰国すれば、修行していたという面目も立ちますし、その頃には王子殿下達ふたりはとっくに正妃を 娶(めと) っておられるでしょうから、アデルさんも安泰ですわ。

さすがに、正妃ならばともかく、アデルさんを無理矢理側妃や愛人にすることはできないでしょうから、そちらの心配もありませんし。

私も、その年齢ならば、もうしつこく付きまとわれることもないでしょうし……。

あとは、アデルさんの領地で、それぞれ良い殿方を捕まえて、4人仲良く家族ぐるみで……。

さ、仲良しのクラスメイト4人で、楽しく華麗な冒険の旅に出発ですわよ!」

……きらきら……。

マイルの瞳が輝いた。

(((やられたああああぁ~~!!)))

そして、愕然として眼を見開く、レーナ達であった……。