軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

415 妹 6

「捕らえろ? あなた達は、誘拐犯か盗賊なのですか?」

驚いたような顔でそう問う、マイル。

「へっ、今更、何を言ってやがる。もう分かっているんだろう、俺達が旅の途中でちょいと世話になってるだけのただのはぐれ者じゃなくて、そういう振りをした盗賊団ってことはよ!

いつもただ最初から襲ってばかりじゃ、こっちもしんどいからな。たまにゃあ、普通に料理された食いもんにありついたり、のんびりした時間も欲しいわけよ。

だから、しばらくはゆっくりさせてもらって、頃合いを見て全部戴いて移動、あとは普通に山間部の街道で働いて、またどこかの村で休ませてもらう、ってことの繰り返し、ってわけよ」

調子に乗って、ぺらぺらと喋る盗賊のボス。

そう、もう、『ごろつき』ではなく、立派な『盗賊』にレベルアップである。

「超簡単に、自白、取れましたぁ!」

「盗賊だということの宣言、村の人達だけでなく私達を襲って捕らえ、違法奴隷として売るということの意思確認が取れましたね。これで、私達の証言だけで盗賊として引き渡せます!」

マイルとポーリンが、嬉しそうにそう言った。

「……へ? 馬鹿じゃねぇのか? 駆け出しのガキがたった4人で、何が……」

「炎弾!」

ちゅど~ん!

勿論、レーナはとっくに脳内で詠唱を済ませており、それを無表情のまま盗賊達に向けて放ったのである。……ちゃんと威力は抑えてあり、見た目の割には殺傷力が低い。おそらく、手足や指が吹き飛ぶことはないであろう。

「なっ! 小娘のくせに、無詠唱で攻撃魔法だと!」

まぁ、驚くのは当たり前であろう。普通、無詠唱の攻撃魔法など、駆け出しの小娘に使えるような魔法ではない。焦って詠唱して、単発のファイアー・ボールがひょろひょろと飛んできて、それを余裕で躱して、次の魔法の詠唱が終わる前に一瞬で間合いを詰めて、剣の腹で 平打(ひらう) ち。

なので、こんなに接近した新米魔術師など、たいした脅威ではない。

でないと、魔術師ひとりに何人もの前衛職が手玉に取られるということであれば、『魔術師無双』になってしまう。

そういうことができるのは、Cランクの上位以上、ほぼBランク近くになってからである。

魔術師は、決して敵には近付かない。そして、前衛は、決して敵を魔術師には近付けさせない。それが、戦闘における鉄則であった。

そのため、のこのこと前衛の剣士達と一緒に近付いてきた魔術師ふたりを見て、盗賊達は完全に余裕の表情であったのだ。『さすが駆け出し、いくら対人戦の経験がないにしても、馬鹿にも程がある』と……。

それが、無詠唱で、しかもこういう場合の定番である、『低ランクの者にも使いやすい、ファイアー・ボール』ではなく、難易度が上の爆裂系魔法を。それも、これだけの威力と速度で撃てるなど、完全に想定外であった。

「くそ、次を撃たれる前に、突っ込めえぇぇ~~っ!!」

予想外の強敵が、ひとり交じっていた。ならば、その者が次の攻撃を放つ前に、力押しで倒す。

いくら無詠唱とはいえ、脳内で詠唱するにはそれなりの時間がかかる。そして他の3人は、気弱そうな魔術師……おそらく、治癒か支援系……、子供剣士、そして17~18歳くらいの女性剣士である。

魔術師は、見掛けや年齢に関係なく、才能がある者は強い。しかし、剣士は、鍛えた身体と経験が全て。なので、小娘の凄腕魔術師はいても、小娘の凄腕剣士というものは存在しない。それも、あんな貧相な身体の者は……。

なので、盗賊の親分の判断は正しかった。客観的に、公正に判断しても。

……普通であれば。

……そう、相手が、見たままの、普通の相手であれば……。

* *

「というわけで、全員を捕らえたわけですが……」

そう言うマイルの前には、ロープで縛り上げられた、17人の盗賊達。

焼け焦げと小さな切り傷はあるが、大きな負傷はない。

……いや、『今は、ない』。

自分で歩けるだけの状態までは、マイルとポーリンが治癒魔法で治癒したので……。

両刃の西洋剣なので『峰打ち』というのは存在しないが、剣身の腹で打つ『平打ち』により相手を殺さなかったマイルとメーヴィスであるが、峰打ちだろうが平打ちだろうが、鉄の棒で殴られるわけなので、骨折くらいはするし、下手をすると内臓破裂や死亡も充分あり得る。それを、ひとりも殺さずに倒せたのは、彼我の実力差があまりにも隔絶していたため、ふたりに充分な余裕があったからである。

相手を殺さずに倒す技術もさることながら、平打ちなどという、剣の正しい使用法から外れた使い方をすると結構簡単に折れてしまうため、いくら余裕があろうとも、普通はそんなことをするべきではない。……絶対に折れないという確信のある、特別製の剣を持ってでもいない限りは。

勿論、それはレーナとポーリンの魔術師組にも言えることであり、少し手加減を間違えたり、うっかり直撃させたりすると、同じく相手を簡単に死なせてしまうことになる。

皮肉にも、『弱かった』ということが、盗賊達の命を救ったわけである。

……とりあえず、今のところは。

盗賊達の縛り方は、勿論、『ポーリン縛り』である。

「だから、その縛り方は私が考案したわけじゃないですってば! 勝手におかしな名前を付けないでくださいよっ!」

ポーリンが何やら抗議しているが、マイル達はスルー。

『赤き誓い』の中では、どうやらこの縛り方は、『ポーリン縛り』という名に決定されたようである。

「はえ~……」

マイルとメーヴィスの思惑通り、きらきらとした眼で4人を見ているメリリーナちゃん。

((計画通り……))

そして、新世界の神のようなことを考えている、マイルとメーヴィス。

村人達は、少し離れた場所から、黙って『赤き誓い』を見ていた。

一応、感謝の気持ちがないわけではない様子ではある。

しかし、下手に声を掛けて感謝の言葉を口にすると、謝礼金を要求されるのではないか、と心配しているのか、居心地が悪そうな顔でそわそわしているだけである。

別に、自分達は盗賊討伐を依頼したわけではない。

あのハンター達が勝手にやったこと。

自分達には関係ない。

そう言いたいが、さすがに、まだ謝礼金を要求されたわけでもないのに、自分達からそう宣言するほどの恥知らずでもなく、そして礼を言いたくとも、他の村人達の了承もなく勝手に『謝礼金の要求に繋がりそうな言葉』を口にすることもできない。

そのような感じで、動きが取れない様子……。

しかし、『赤き誓い』の4人にとっては、そんなことはどうでもよかった。

マイルの望みを叶え、子供達を助け、その笑顔を護り、そして憧れと賞賛にきらきらと輝く瞳で見詰められて、むふー、と満足そうな鼻息を出して、 金蔓(かねづる) である盗賊達を引き連れて王都へと凱旋する。

……それで、充分であった。

(……あとは、子供達からの『メーヴィス、カムバ~ック!』という声を背に、振り返ることなく、カッコ良く……)

マイルの『にほんフカシ話』の一節を思い出しながら、自分のあまりのカッコ良さに、口の端をヒクヒクさせながら子供達を背に立ち去ろうとしたメーヴィスであるが……。

「あ、ちょっと待ってください!」

「え?」

後ろから掛けられたマイルの声に、立ち止まって、思わず振り返ってしまった。

「ああっ、しまったああああぁ~!!」

……せっかくの名シーンが、台無しであった……。

がっくりと、肩を落とすメーヴィス。

いや、そもそも、子供達は誰も『カムバ~ック!』などとは言っていないし、 数珠(じゅず) 繋ぎになった盗賊達を引っ張って行かねばならないので、そんなカッコいい去り方はできないのであった……。

せめて村人達が、集めたお金を入れた革袋を渡してくれれば、それを投げ返して立ち去るという、『サボテン・ブラザース』ごっこができるのであるが、村人達はお金を集める様子がないし、そもそも、ポーリンがいる限り、それを投げ返すことなど許されようはずもなかった……。