軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

405 それぞれの活動

「ふぅん……」

馬鹿高い保証金を預託して、図書館で新刊を借りてきたレーナ。

作者は、レーナお気に入りの新進気鋭、ミアマ・サトデイルである。

「スカベンジャーとゴーレムは他の魔物とは違う、ヒト種と敵対しているわけではないのでは、か……。マイル、これ、どう思う?」

「あ、ははは、はい! う~ん、そうですねぇ……。ここ最近の出来事から考えると、私もそう思います。

事実、私達はいつも攻撃されていませんよね。それは、私達が他のハンター達のように、出会い頭にいきなり攻撃、というのをやらずに、友好的に接したからでしょうけど、普通の魔物相手ではそうはいきませんからねぇ……」

いきなりレーナに振られ、慌てながらも無難な答えを返すマイル。

「まぁ、そうなんだけどね……。でも、それも、マイル、あんたがいたから、って気もするんだけどねぇ……」

レーナの言葉に、ギクリとするマイル。

「でも、それも、今更かぁ……」

「ですよねぇ……」

「そうだよねぇ……」

レーナに続く、ポーリンとメーヴィス。

「そして……」

「「「実家の秘伝です!」」」

「ぎくぎくっ!!」

3人に口を揃えてそう言われ、焦るマイル。

しかし、あれだけやらかしたのである。レーナ達に、マイルがゴーレムやスカベンジャー達に『好かれている』、もしくは『友好的な相手だと判断されている』と思われているのは、ほぼ確実であった。

「しかし、人外にも通用する、天然のお馬鹿さんかぁ。羨ましいような、全然羨ましくないような……」

「私は御免だね」

「私もです……」

レーナの呟きに、反射的にそう答えてしまったメーヴィスとポーリン。

「え……」

マイル、愕然。

「な、ななな……」

そして、爆発するマイル。

「何ですか、それはあああああぁ~~っっ!!」

* *

深夜。

草木も眠る、 丑(うし) 三(み) つ時。

暗闇の中で、図書館の書棚から次々と本が抜き出され、机の上へ並べられた。

そして高速でページが 捲(めく) られ、その後、元の位置へと戻される。

人影はなく、まるで本が自分で舞っているかのように見えたが、よく見ると、大きめの虫のようなものが本を運び、そしてページを捲っているのであった。そして、各ページをその 眼(レンズ) に捉え、記録していた。

その『虫のようなもの』は、ある程度作業を行うと、今日の分は終えたのか、きちんと本を片付けた後、しゃかしゃかと歩いて建物の隙間から外へ出て、それから羽ばたき、やや明るくなりかけた夜空へと消えていった……。

【※※※※※※……】

情報解析担当のスカベンジャーが、作業の手を止めた。

ヒト種の中で最も人口が多い『人間』の状況を調査するために、人間の街へ潜入させている虫型の調査機械。その一台が持ち帰った、とある書籍の情報。

それは、ヒト種に魔物の一種と思われているらしき自分達スカベンジャーとゴーレムを、ヒト種と対立する魔物ではなく別種のものではないか、共存が可能なのではないかと説いた、物語の形をとった啓蒙本であった。

【※※※※※※……】

そしてスカベンジャーは、調査機械に指示を出した。

この作者が書いた他の本を、優先して調査せよ、と。

その作者の名は……。

* *

「……それを、信じろと?」

「いえ。私達はただ、事実を報告するだけです。報告を受けた方がそれを信じるかどうかは、私達の所掌範囲ではありません」

それはそうである。裁判ではないのだから、相手に自分が言うことをどうしても信じさせなければならないという必要はなかった。報告内容の精度や信憑性を判断し、その情報をどう使うかは、末端の調査員ではなく、情報部門の上の者、つまり上司が判断することであった。

「…………」

しかし、自らが派遣した調査員の報告を信じなくては、調査を命じた意味がない。そして、この報告を否定する他の情報があるわけではなく、それどころか、どうにも説明のつかないいくつかの不可解な情報が、この報告を信じるならば、全てのピースがぴったりと嵌まり、理解できるのである。

……しかし……。

「信じられるかあああああぁっっ!!」

マイル達は、別に口止めをしたわけではない。王宮に勤める者が、使命を帯びて調査任務に就いたのである。調査で得た全ての情報を報告することは、国に対する義務であり、忠誠の証であろう。それを、護衛依頼を受けただけのハンター風情が邪魔できるわけがなかった。

……但し、調査任務とは全く関係のない、ハンターの個人的な能力については、その限りではない。

契約を結んだハンターについて業務上知り得た情報を口外することは、ハンターにとっての禁忌中の禁忌。たとえ貴族や王族であろうが、それを無視した場合にはそれなりの報いを受けることとなる。

それは、ハンターギルドによる政治的なものである場合もあれば、ハンターによる個人的なものである場合もあるが、その両者に共通していることは、決して、敢えてそれを受けたいと思う者はいない、そういう類いの『報い』であるということであった。

そのため、マイルの収納魔法については報告されることはなく、また、『赤き誓い』が商人達に報告することがなかった、地下での出来事についても、当然、報告されることはなかった。

……それらがなくとも、充分に『到底信じられない、荒唐無稽な与太話』ではあったのだが……。

「亜人達が、何らかの目的で、とある場所を一時的に占拠した。……これは分かる。

そしてその目的の当てが外れて、撤収。これも分かる。

……しかし、『古竜の別荘地』! 何だ、そりゃあああああっっ!!」

そう言って叫ぶ上司。

だが、計画を上申して、予算と人員を割いて実行された作戦である。そして、その作戦の間に過ぎ去った、貴重な『時間』という資源は、いくら金を積もうが、取り戻すことはできなかった。なので当然、成果は報告しなければならない。

薄くなりかけた頭を掻きむしる上司であったが、彼はまだ知らなかった。

この後、『帝国の岩山から天空に駆け上る、謎の火箭の群れ』、『帝国軍の現場部隊や補給部門が大混乱に陥り、軍事行動の大半が停止状態となった』、『軍部に、聖女を讃える一派が発生しているらしい』、その他様々な不確定情報がもたらされ、自分達も大混乱に陥ることなど……。

* *

「……そろそろ、勘弁してくださいまし……」

そう言って、泣きが入っている、モレーナ王女。

そう、マルセラ達『ワンダースリー』の出奔……正式には王女の特命ということなので、出奔ではないのであるが……を計画し手引きした主犯として、両親である国王夫妻、マルセラに固執していた兄と弟、そしてマルセラを長男の嫁にと狙っていた多くの貴族達から責められて、王宮からの外出回数の削減、お小遣い5割カット、勉強時間2割増しの他、尊敬している兄と可愛がっていた弟からの冷たい視線に晒されて、さすがに心が折れそうであった。

しかし、一応、情状酌量の余地がないわけではなかった。

アスカム女子爵の捜索は、事情を知っている者達からは切望されていた。しかし、他国で兵を動かすことも、間諜達を派手に活動させるわけにもいかなかった。それに、そもそも捜すべき場所の見当すらつかないのでは、強引なことをしても、効果は望めない。

しかし、彼女との付き合いが長く、彼女の思考パターン、行動パターンを熟知している、同年代の少女達であれば?

誰にも警戒されることのない、年端も行かぬ少女達であれば?

そして、国を渡り歩いても何の不思議もない、新米ハンターパーティであれば?

そう、モレーナ王女の判断は適切なものであり、その知恵と計画性、そして誰にも察知されることなくそれを実行し成功させた手腕は高く評価され、『知謀の第三王女』、『謀略王女』として、密かにその評価を高めていたのである。

「……しかし、それとこれとは別じゃ!」

「マルセラの身に何かあったら、いったいどうするつもりだ!」

「姉上、酷い!!」

そして今日も、父親と兄、そして弟に叱られ、涙目のモレーナ王女であった……。

「……で、どうして報告が全然来ないのですかああああぁっっ!!」

そう言って、今日も枕を殴り続ける、ひとりの王女の姿があった……。