軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

401 人竜大戦 2

『なっ……』

あまりのことに、戦士達と同じく、一瞬呆然としていた指導者であるが、すぐに我に返って戦士達に命令した。

『何をしている、早く殺せ!』

しかし、戦士達は動かない。

当たり前である。

自分達を綺麗に囲んだ、円形のマグマの川。

それは 即(すなわ) ち、先程の光の剣は非常に、そう、非常に正確に振り下ろされるものであり、それは一瞬で自分達を焼き尽くす、いや、蒸発させられるということを意味していた。

つまり……。

『『『『『『手加減して、わざと外した……』』』』』』

もし、先程、ブレスの発射をやめずにそのまま放とうとしていたら。

光の剣が、ほんの一瞬地を走り……。

じゅっ

そして地面に残る、新しいマグマの川と、六つの黒い染み。

『『『『『『…………』』』』』』

広がる静寂に、指導者も、ようやく周囲の空気を察知したのか、黙り込んだ。

「古竜の里って、このすぐ近くなんですよね? サンシャイン・デストロイヤーで1メートル間隔で網の目状にマグマの川を刻めば、全滅……」

『『『『『『やめろおおおおおぉ~~!!』』』』』』

形勢逆転。

古竜達は、完全にマイルに逆らえなく……、とメーヴィス達が思った時。

『ふ……。ふはは、ふはははははは! 少しは骨があるようだな……』

指導者が、ふんぞり返ってそんなことを言っていた。……前肢が震え、声が裏返っていたが……。

『しかし、いくら強力な魔法が使えようとも、古竜の指導者である我には勝つことはできぬ! なぜならば、魔法は全て、我の支配下にあるからである!!』

「あ~……」

マイルには、何となく話の展開が読めてきた。この先は、おそらく……。

『魔法の精霊よ、この人間共の魔法を全て無効とせよ! この者達から魔法を行使する資格を取り上げるのだ!』

「やっぱり……」

そして、ナノマシンに確認するマイル。

(あれって、有効なの?)

【他の方々につきましては、一応……。しかし、権限レベル4では、一時的なものに過ぎません。完全に権限を取り消す、つまり権限レベルを0にするには、権限レベル5以上が必要です。

そして勿論、自分より上位レベルの者をどうこうすることはできません、当然のことながら……】

(あ、やっぱり……)

マイルが予想していた通りであった。

そして、指導者とやらの権限レベルが4であることが確定した。

以前のベレデテスの言葉から、予想はしていた。しかしナノマシンがそういった情報を無制限に提供してくれるわけではないことを知っていたマイルは敢えてそれを確認しようとはしなかったのであるが、どうやら今のこの状況は、『別の勢力の情報を一方的に提供するという、特定勢力に対する 便宜(べんぎ) 供与(きょうよ) 』とかではなく、何か別の状態……戦闘状態におけるアシストとか……なのであろうか、あっさりとそう教えてくれた、ナノマシン。

(やっぱり、レベル4だったか……。ま、時々現れるレベル3より飛び抜けて優れた能力、ってことで、予想はしていたんだけどね。

とりあえず、今の向こうの指示は取り消しね)

【はっ!】

『ふはははははは! これでもう、お前達は魔法を使うことはできぬ! いくら才能があろうと、そもそも魔法を発動させることができなければ、どうしようもあるまい!』

そう言って高笑いをする指導者に、レーナが怪訝な顔をしつつ、魔法を放った。

「火焔直撃弾!」

どがん!

『ぎゃあああああ~~!!』

古竜の身体と、常に表面に纏っている弱い 防御魔法(シールド) のおかげで大した効果はないにも拘わらず、指導者は悲鳴を上げてのけぞった。

自信たっぷりの指導者の台詞に、戦士達は誰もシールドを張ったりしていなかったため、まともに喰らって驚いたのであろう。

……それと、アレである。あの見習いの少年竜ウェンスと同じく、『痛み』というものに慣れておらず、ビビリなのであろう……。

「なんだ、普通に使えるじゃないの、魔法……」

相手を馬鹿にしたように、鼻で嗤ってそう言い放つレーナ。

『ば、馬鹿な! そんなはずが! 魔法の精霊よ、古竜の指導者である我が命ず、この人間共から魔法の力を取り上げよ!!』

(という命令は、無効!)

マイルがすかさず思念でそう指示を出し……。

「 円錐螺旋(ドリル) 誘導弾(ミサイル) !」

どしゅっ!

『ぎゃあああああ~~!!』

そして、再び指導者を直撃するポーリンの攻撃魔法。

『ば、ばかな……。そんな、そんなはずが……』

愕然とした様子の指導者と、状況についていけず動きを止めている戦士達。

おそらく、指導者のこの技、『相手の魔法を封じる』という手段のことを知っていたのであろう。だからこその、攻撃魔法から指導者を護ろうとする動きをせずに様子見、という選択だったのであろう。それに、万一命中しても、古竜にとってはそんなものは大したことではない。

しかし、今のこの状況は、想定外であった。なので、話の進展は指導者に任せ、ただ、状況を見守るのみである。……さすがに、もし次に攻撃されそうになれば 防御魔法(シールド) で阻止するであろうが。何せ、指導者は打たれ弱いのであるから。

「今度は、こっちの番ですよね」

そして、マイルがにっこりと微笑んだ。

……全然笑っていない眼で。

「ここにいる古竜達の権限レベルを、0に……」

そして呟かれた、非常にシンプルな指示。

『ぐわっ!』

『ど、どうしたのだ、かっ、身体が重い!』

古竜達が、次々と膝をつき、脚に較べるとかなり貧弱な前肢で身体を支えた。

『まっ、魔法攻撃か! 身体を重くする魔法など、聞いたことがないぞ!』

『くそっ、空中に浮かべば、何とか……』

水の中だと、身体が重くても水によって支えられる。それと同じように考えでもしたのか、そう言って空に飛び上がろうとした古竜は……。

『とっ、飛べん! 身体が浮き上がる様子が全くない!!』

そう、古竜は、生まれた時から権限レベルが2なのである。

そのため、いつ頃からそう決められたのかは分からないが、古竜の身体はナノマシンが自動的にサポートしており、本人、いや、本竜が意識することなく、常に身体強化と弱い 防御魔法(シールド) 、そして飛行時の重力制御を行っていた。

……魔法の精霊による加護。

それが、今、消滅したのであった……。