軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

399 呼び出し 2

『な、な、ななな……』

(((あちゃ~……)))

やらかした。

それがはっきりと分かった、マイル以外の3人。

指導者の若造以外の、8頭の古竜達も引き攣っている……ような気がする。

『こっ、こっ、こっ……』

(鶏かな? そういえば、鶏の先祖は恐竜だと聞いたことが……)

『この、下等生物めがああああぁっっ!!』

(((あ~……)))

駄目だこりゃ、というような顔をして、頭を抱えるレーナ達。

どうやら、話が始まる前から決裂してしまいそうであった。

しかし、そこは年長者であり経験豊富な古竜の出番である。

『指導者殿、下等生物の愚かな言動を微笑ましく見守ってやるのが、 大竜(おとな) というものですぞ……』

『む……、それもそうか……』

……チョロい。

(古竜は人間より頭がいいという話、あれは本当なのだろうか……)

『赤き誓い』の4人の脳裏に、そんな疑問が湧き上がってきた。

しかし指導者が、以前ベレデテスが言っていた、幼年竜特有のあの病、『我は強く賢き古竜種である、世界に君臨し愚者を導いてやろう病』に 罹(かか) っていると思われることから、これはこの個体特有のことなのかもしれない。何せ、もう幼年竜と呼ぶような年齢ではないにも拘わらず、このような状況なのであるから……。

そして、何とか落ち着いた指導者が、マイル達に話し始めた。

『では、今回の会合の本題に入る。

我ら古竜に何度も逆らったお前達に、死を与えることにした』

「「「「 宥(なだ) めて落ち着かせた意味、全然なかったああぁ~~!!」」」」

(……ナノちゃん。ナノちゃん達は、上空は何フィートくらいまで存在しているの?)

駄目だこりゃ、と思ったマイルは、こっそりとナノマシンとの会話を始めた。

そしてマイルは、前世で父親が航空関連の仕事をしていたため、高度に関してはメートルではなくフィートを使う習性があった。

【私達を使える生物がいない場所には居ても無意味ですから、あまり高高度にはいませんよ。鳥や 飛竜(ワイバーン) が飛ぶ高さくらいまでです】

(なら、今からもっと上まで行ける?)

【はい、勿論! 権限レベル5であるマイル様の御指示であれば、勤務場所固定の者達ではなく、遊撃チームを一時的に派出できます。また、マイル様であれば、移動中に思念波到達圏外となっても、事前に与えておいた命令が継続可能となります。そして、命令を継続中の者に対し、近くにいる者を通じて指示を伝達されれば……】

(数万フィート上空のナノマシン達に、臨機応変に細かい指示が出せる、ってわけか……)

【御意】

(よし、じゃあ、手空きの者はこのあたりの上空に移動!)

そして、多くのナノマシン達が急速に移動を始めた。

上へ。上へ。上へ……。

「意味が分かんないわよ! あの、ウェンスとかいうのが突っ掛かってきて、ケラゴン達3頭に一方的に襲われて、そしてつい先日は帝国軍と亜人達の戦いになるかもしれなかったのをうまく誤魔化してあげただけじゃないの! お礼を言われてもおかしくないくらいよ!

それなのに、どうして殺されなきゃなんないのよ、おかしいでしょうが!」

レーナが憤然としてそう主張するが、指導者は意に介した素振りもない。

元々、話し合いをするつもりなどなかったのであろう。

ただ、自分の口から死刑宣告をし、『赤き誓い』が恐怖に震えながら足掻き、死ぬところを見て、溜飲を下げたかっただけ。そのために、わざわざ里の近くへと呼び寄せた。多くの古竜が人間の生息域へ行くことは問題があるし、自分がそれに同行するのも面倒だから。

……そう、最初からそのつもりだったのであろう。

しかし、それは当然、『赤き誓い』も予想していなかったわけではない。ケラゴンからも、その可能性は示唆されていた。なので当然、無策でのこのことやってきたわけではなかった。

(油、増粘剤、圧縮空気……。火焔直撃弾、発射用意……)

(ウルトラ・スーパー・デラックスホット魔法、発動用意……。赤き地獄、フルパワー……)

(燃えよ心、震えよ我が魂……。そして、マイルの名の許に、メーヴィスが命じる! 我が愛剣よ、元の姿に!!)

ポケットの中で『ミクロス』の容器を握り締める、メーヴィス。

(栗原海里、アデル・フォン・アスカム、そしてマイルが命ずる……。ナノマシン! アイ、コマンド、ユウゥ……)

レーナが抗議している間に、皆はそれぞれ頭の中で呪文を唱え、戦闘準備を整えていた。レーナ自身も、喋りながら攻撃準備を行っていた。 約定(やくじょう) に従いベレデテスとケラゴンが手出しせず、そして指導者とやらは見ているだけとしても、6頭もの古竜の戦士との戦いである。しかも、前回のように一頭ずつというわけではなく、おそらく、6頭全てと同時に……。

『うるさい! さぁ、 跪(ひざまず) いて謝罪し、命乞いをしろ!』

全くこちらの言葉に耳を貸そうとはしない指導者に、レーナ達は完全に諦めた。

人間の言葉を理解しているはずなのに、言葉が全く通じない。そんな相手とは、いくら話しても時間の無駄である。まぁ、元々、古竜が人間如きと対等に話をしてくれると考える方が間違っているのかもしれないが。

ベレデテスとケラゴンは、完膚無きまでに叩き潰された敗北と、その後の温情による恩義とかもあるが、元々小動物に対する保護意欲が大きかったのであろう。もしくは、人間が、自分の窮地を救ってくれた犬や猫に対して抱く程度の感謝の念を持っているとか……。

ベレデテスとケラゴンは、既に諦め顔である。6頭の戦士達も困惑しているが、たかが下等生物4匹のために、自分の立場を危うくしてまで指導者を 諌(いさ) めるつもりは毛頭ないようであった。

((((駄目だ、こりゃ……))))

互いに眼で合図して、何とか丸く収めようとする努力は放棄することにした4人。

ならば、あとは……。

「あ~、大人達にちやほやされて甘やかされた、世間知らずのお子ちゃまかぁ……」

「子守役の皆さん、御苦労様です。心中、お察し致します……」

「古竜の中にも、頭の悪い個体がいるんですね……」

「しっぽ、斬り落としてあげようか?」

『ひえっ……』

最後の、メーヴィスの台詞に、思わずしっぽを股の間に入れて縮み上がる某古竜。

そう、避けられぬ戦いであれば、相手を怒らせて平常心を失わせた方が有利になる。

直接相手をする戦士達はあまり動揺しないにせよ、彼らに指示を出す指導者が正常な判断力を失っていれば、少しはこちらに利するかもしれない。

ほんの僅かな効果しかなくとも、そういうことを何個も積み重ねれば、いつの間にかそれは、2倍、3倍の効果となるであろう。

『なっ……。こ、殺せええええぇ~~!!』

あまり気は進まないが、小動物を数匹殺すことくらい、戦士達にとっては躊躇う程のことではない。なので、ずん、とマイル達に向かって足を踏み出した6頭の古竜達。

「はい、向こうの指揮官による理不尽な理由による殺害命令、そしてそれに従い私達に向かってくる6頭の古竜! 正当防衛の条件、成立です!」

そう、マイルが言った通り、これで、もし『赤き誓い』が指導者を殺しても、正当防衛が主張できるであろう。今は仕方なく指導者による茶番に付き合っている大人の古竜達であるが、指導者がいなくなれば、悲しみはするものの、それを理由に人間達に戦いを吹っ掛けるようなことはあるまい。

元々、古竜達は知的で温厚な種族なのである。あの、『我は強く賢き古竜種である、世界に君臨し愚者を導いてやろう病』に 罹(かか) っている幼年竜を除いて……。

なので、せっかくの『魔法の精霊に愛されし者』を失ってしまったことを悲しみ、ちゃんと教育し指導しなかったことを反省はしても、明らかに古竜の側に落ち度があり、ただ襲われて反撃しただけの人間達にどうこう、ということはあるまい。……そう、『済まなかった』としてウロコ数枚が貰えるという、数十年から数百年に一度あるという、あのパターンであろう。

なので……。

「 全武器使用自由(オールウェポン・フリー) です!」

マイルの言葉に、了解の返事もせずに一斉に放たれた、詠唱を終えて保留してあったレーナとポーリンの魔法。そしてメーヴィスは、ポケットから取り出した『ミクロス』を一気に 呷(あお) る。

いちいち何本もの蓋を開けなくて済むよう、今回のために造られた特製の大瓶である。容量は、通常サイズの3倍である。危険を示すため、瓶の色は赤。……3倍なので。

この大瓶の製造を頼まれた時、マイルはかなり抵抗したのであるが、メーヴィスから『骨折や腱の断裂を避けるために死んじゃったら、意味ないよね?』と言われ、反論できなかったのである。

それに、義手である左腕による身体への負担をなくすために施された処置により、身体に以前のような負担がかかることはない。なので、渋々マイルが折れたのであった。

「火焔直撃弾、発射!」

「赤き地獄!」

「EX・真・神速剣 参(さん) の太刀、『斬竜剣』!!」

「…… 位相光線(フェイザー・ビーム) 、発射!」

どひゅん!

ごおぉ!

ずばしゃあ!

ちゅん! ちゅん! ちゅん!

そして、『人竜大戦』が勃発したのであった……。