軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

398 呼び出し 1

「……呼び出しですか?」

あの後、急いで宿へ戻った4人は、自分達の部屋で手紙を開封した。

そして、その手紙に書かれていたのは……。

「はい、書かれていることを要約すると、『ちょっと、体育館裏まで 面(ツラ) 貸しな』ってことです」

「どんな要約よ……。そして、『体育館』って、何よ……」

ポーリンの問いに対するマイルの返事に、がっくりと肩を落とすレーナ。まだまだ、修行が足りなかった。メーヴィスは、慣れたもので、軽く流しているというのに……。

「とにかく、古竜さん達からの呼び出しです。こっちから行かないと、向こうからここへ来てくれるそうです」

それは、明らかな『脅し』なのであるが、マイルはそれに気付いている様子はない。

「「「…………」」」

「用事があるのは別の方らしく、ケラゴンさんはただ仲介をされているだけのようですね」

マイルの言葉に、レーナが呆れたように肩を竦めた。

「それって、『悪い話』確定じゃないの。問題がなかったならわざわざ連絡なんかしてこないでしょうし、ただの連絡事項やお知らせならこの手紙に書けばいいし、ちょっとしたことならばあの古竜が来て、獣人の案内でどこか王都の近くの森か山岳部で会えば済む話でしょ。それを、わざわざ別の古竜と会えということは……」

「兄貴、コイツらです、ってやつかな?」

苦笑しながら、そんなことを言うメーヴィス。

まぁ、あの時のケラゴンの様子から考えると、それはなさそうではあるが、ケラゴンよりも上位の者が、『赤き誓い』にとってはあまり嬉しくない用件で会おうとしていることは間違いなさそうであった。

「断って、王都に古竜の団体さんが来られても困りますよね……」

「来られて 堪(たま) るもんですか!」

「人竜大戦になっちゃうよ……」

『人竜大戦』というのは、ヒト種と竜種の全面戦争を描いたお 伽噺(とぎばなし) である。但し、あくまでも創作であり、過去にそういった出来事があったという事実はない。

……ちなみに、これは本当に昔からあったお伽噺であり、ミアマ・サトデイル先生とは関係ない。

「……行くしかないわね」

「行くしかないですよね」

「行くしかないよねぇ」

「行くぞペガス!」

「「「……誰? 『ペガス』って……」」」

* *

「……というわけで、やってきました、アルバーン帝国の東部、海に割と近いところ。そう、『古竜の里』の近くである!」

「……誰に説明してるのよ……」

芝居がかった言い方で、既にみんなが知っていることを得意げに話すマイルに、呆れた様子のレーナ。いつものことである。

「でも、わざわざこんなところまで呼び出すなんて……」

「古竜にとっては、これくらいの距離はあっという間だろうから、他者が移動にかかる時間だとか苦労だとかを察せないんじゃないかなぁ」

ポーリンの愚痴に、そう返すメーヴィス。

「そうかもしれませんねぇ。ま、王都の近くに来られても困りますし……」

そういうわけで、古竜の里の近くまで来た、『赤き誓い』一行であった。

「指定されていたのは概ねこのあたりだと思うけれど、目標物があるわけじゃなし、日時も特に指定されていなかったし……。古竜ならデカいから目立つけれど、多分 最初の接触(ファースト・コンタクト) は魔族か獣人でしょうから、見つけるのが少し面倒……」

「いました、あそこです!」

レーナが喋っている途中で、全く空気を読まずにそれをぶった切ったマイル。

「「「…………」」」

そう、いつものことであった。いつもの……。

「……『赤き誓い』か?」

向こうもこちらに気付き、近付いてそう聞いてきたのは、ひとりの獣人であった。どうやら、数日前からずっとここで待っていたらしく、近くにテントが張ってある。

「ケラゴンとやらの使い?」

「そうだ。上空に向けて、ファイアー・ボールを3発打ち上げてくれ」

「「「「自分達でできる連絡方法を考えないの?」」」」

毎度のことに呆れる4人であるが……。

「獣人は、魔法が使えない者が多いんだよ、仕方ないだろうが! じゃあ、何か? 今から俺が着火用の枯れ枝と焚き火用の乾木と煙を出すための生木を集めて、火を 熾(おこ) して 狼煙(のろし) の準備をするまで待つか? ええ?」

「「「「すみませんでした。ファイアー・ボールを打ち上げさせていただきます……」」」」

そして、マイルが3発のファイアー・ボールを打ち上げてしばらく経つと、古竜が飛んできた。

……9頭。

「うわぁ、団体サマのお着きだぁ!」

「「「多過ぎィ!!」」」

こんなに大人数……、いや、大竜数で来るつもりであったなら、ティルス王国ではなく、こっちへ呼び付けるはずである。こんな数の古竜が人間の居住地域の上空を飛べば、それだけで大陸中が大騒ぎになってしまう。おそらく、各国の軍隊が総動員されて、非常態勢が発令されるであろう。

どん、どん、どん……。

『赤き誓い』の前に、次々と着地する古竜達。

そして9頭が、6頭、2頭、1頭の3つのグループに分かれた。その、2頭の組の片方が、マイル達に向かって話し掛けてきた。

『久し振りだな、「赤き誓い」の諸君……』

(デスラー総統かッ!)

こんな時でも、平常運転のマイル。

「少し前に会ったばかりじゃないですか、ケラゴンさん……」

『我である! ベレデテスである!!』

『……そして、多分見分けがついていないであろうが、我がケラゴンである……』

もう片方の古竜が、そう言って横から口を挟んだ。

「私達には見分けが付かないって分かっているなら、最初から名乗りなさいよ!」

『『…………』』

レーナの突っ込みに、不満そうな顔のベレデテスとケラゴン。……それは、仕方ないであろう。

「で、そちらのご新規さん達は……」

マイルに話を振られて、ようやく自分達の役割を思い出したらしきベレデテスとケラゴン。

勿論、その役割というのは、ご新規さんと『赤き誓い』の仲介である。

そして、ふたりのうち上位者であり、呼び出しの手紙の差出人であるケラゴンが新規のメンバーを紹介してくれた。

『こちらにおられるのが、我らの指導者である、レイルン様である。そしてそちらの6頭は、戦士隊の精鋭達である』

「あ、この前までケラゴンさんが所属していたという……」

『その話はするな!!』

どうやら、触れて欲しくない話題らしかった。

(((普通、そこでその話題には触れないでしょ……)))

そして、相変わらずのマイルの空気の読めなさっぷりに、呆れた顔のレーナ達。

「あの~、ひとつ聞いていいですか?」

『何だ?』

唐突なマイルの言葉に、言ってみろ、というふうに、 鷹揚(おうよう) に先を促すケラゴン。

そしてマイルは、疑問に思っていたことを素直に 訊(き) いてしまった。

「あのぉ、私達と正対しているのに、戦士の皆さんは指導者さんの護衛位置につかなくていいのですか?」

『『『『『『…………』』』』』』

マイルの言葉に、驚愕で引き攣った顔のケラゴンとベレデテス。

6頭の戦士達は、凍り付いていた。

そして、ぎぎぎ、という擬音が聞こえそうな動きで、指導者の方へ顔を向ける8頭の古竜達。

……怒っていた。

指導者、激おこである。

何しろそれは、『お前は4人の人間の少女に襲われたらやられちゃうから、他の古竜達に護ってもらう必要があるだろう』と言われたも同然……というか、はっきりとそう断言されたわけなのだから。

それは、まだ世間知らずであり、『古竜の力は、世界一ィィィ!』とか思っている若造に我慢できるような言葉ではなかった……。