軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

379 帝国の旅 3

「え? それが何か?」

夕食の後、自分達の売り物があと1日分しかないと商人達に告げたところ、きょとんとした顔でそう返された。

「元々、皆さんに依頼したのは護衛ですからね。そりゃ、若い女性に隣で商品を売ってもらえれば客寄せになってありがたいですけど、別に、それを私達から要望したわけではないですし、元々そんな支援を受けることなど想定していませんでしたから……」

お前達、いったい何を言っているんだ、というようにそう言われた『赤き誓い』は……。

「「「「ですよね~!」」」」

「知ってた」

「分かってた」

「当たり前でしょ!」

「だから、私が言ったのに……」

みんな、責任の……というより、『恥ずかしいことを言ってしまった、馬鹿』の役割を自分以外の者に押し付けようとして、適当なことを言っている。本当のことを言っているのは、マイルただひとりである。ポーリンは、頭では理解していたが、悔しさが先に立って、自分の失策のように思い込んでいたようである。

「そういうわけで、私達のお店は明日で終わりです。あとは、帰路で何かいいものがあれば買い込むくらいですかねぇ……。

なので、帝都では皆さんの護衛に専念します」

マイルがそう言ったところ。

「いえ、帝都は結構治安がいいですから、ここを出るまでは自由にしていただいていいですよ」

「「「「え?」」」」

思わぬ商人からの言葉に、驚く『赤き誓い』の4人。

「帝都の様子を確認しましたところ、特に治安の乱れやおかしな様子はありません。上層部が何を考えているにせよ、まだそれが国民達に大きな影響を与える段階ではないようです。

ならば、商業ギルドに届けを出して帝都の中央広場で露店を出している他国からの商人に、ちょっかいを出すような者がそうそういるとは思えません。

これが地方の街であれば、悪徳領主やら有力者やら地回りの連中やら食い詰め者やらと、色々と問題の種がありますが、帝都のど真ん中、神殿や警備兵詰所の真ん前で他国の商人に手出しする馬鹿は、あまりいませんよ……」

確かに、店を開く予定の中央広場は神殿に面しており、色々な行政機関の建物もあり、警備兵が詰めているらしき施設もあった。そして、帝都で他国の商隊が襲われたなどという恥を晒せるはずがなく、確かにそのあたりは安心しても良さそうであった。

「ですから、今までの契約外の御協力に対するお礼代わりに、数日間、帝都で自由にしていただいても結構ですよ」

「「「「おおおおお!」」」」

確かに、帝都のど真ん中で普通に商売ができないほど治安が悪いはずがない。特に、下手をすれば他国に帝国の恥が拡散される、国を跨いでの交易を行う商人達に関しては。

おかしな連中が絡もうとしたならば、警備兵やら神官やらが飛んでくることであろう。

ならば、お言葉に甘えて……。

「「「「ありがとうございます!!」」」」

それ以外の返事はない、といわんばかりの、『赤き誓い』の元気な声であった。

「……依頼を受けるわよ」

「「「勿論!」」」

別にお金に困ってはいないが、せっかく他国に来たのである。依頼を受けて、この国で実績を作るのも悪くない。

勿論、さすがに遠出するとか他の商人に雇われて遠くの街への護衛任務、とかは論外である。急に予定が変わって出発が早まる、ということもあり得るし、自分達が怪我をしたり厄介事に巻き込まれたりして護衛継続が不可能になるような危険は冒せない。

また、万一の時にはすぐに駆け付けられるよう、連絡の付く場所にいる必要がある。いくら自信があろうとも、そこはプロとして譲れない部分であった。

「帝都内での短期の仕事となると、10歳未満の準ギルド員であるGランクの子供がやるような雑用とか、引っ越し手伝いや荷役とかの力仕事の単発依頼、急に店員に休まれて困っているお店のお手伝いとかですよねぇ。いずれにしても、私達が受けるような依頼じゃあ……」

「あんたとメーヴィスなら、力仕事は適任だけどね」

マイルの呟きに、にしし、と笑いながら突っ込みを入れるレーナ。

「「なっ……」」

さすがに、マイルとメーヴィスも異議がありそうな顔であるが、レーナはそれを軽くスルー。

まぁ、いつもの軽い冗談なので、ふたりも本気で怒ったりはしていない。……それに、それは事実であるし……。

「ま、それはギルド支部に行って依頼ボードを見てから考えましょう。良い依頼がなければ、依頼は受けずに帝都を見物して時間を潰してもいいのですから。

別に、無理に意に沿わない依頼を受ける必要もありませんし……」

そして結局、ポーリンの意見が採用されたのであった。

そして翌日、昼過ぎに商品の大半を売り尽くした『赤き誓い』は、中途半端に残った商品を商人達に引き取って貰い、自分達の店を撤収。商人達に断って、ハンターギルド帝都支部へと向かったのであるが……。

「いいのがないわねぇ……」

レーナがそんなことを言っているが、当たり前である。そう都合の良い依頼が、しかも昼過ぎになって、残っているわけがない。

いや、残っている以前に、そんな依頼は最初からなかったに違いない。

帝都内ででき、Cランクパーティが受けるような仕事で、短期間で済み、良い経験になって、帝国のことが学べるような仕事。

「ないだろうねぇ……」

「ないでしょうねぇ……」

メーヴィスとポーリンの言葉に続き……。

「ありました!」

「「「何じゃ、そりゃあああ~~!!」」」

マイルが見つけた依頼カード。それは……。

『身辺警護 拘束期間:半日 3~4名 報酬額:金貨1枚 条件:Cランク以上、女性に限る』

「「「あ~……」」」

レーナ達が顔を 顰(しか) めるのも無理はない。

女性限定の護衛依頼の場合、ふたつのケースが考えられる。

その1、護衛対象者が若い女性である場合。

その2、護衛対象者がエロオヤジである場合。

この依頼が残っているのは、どういう理由なのか。

女性3~4名のパーティがいなかった。

筋の悪い依頼だということが皆に知られている。

報酬額が割に合わない。(危険度や困難度に引き合わない。)

その他諸々。

ひとり当たり、小金貨2枚半。

念の為、とか、チンピラ避けのための依頼であれば、街から出ずに済む半日の稼ぎとしては、悪くはない。しかし、かなりの高確率で襲撃や誘拐等が予想されるのであれば、安すぎる。

そして、勿論……。

「詳細を確認するわよ」

レーナの言葉に、こくりと頷くメーヴィス達3人。

そう、『赤き誓い』は受けるに決まっていた。

面白そうな依頼、筋の悪い依頼、……そして『赤い依頼』。

「そこが地獄の底であろうが、戦場のど真ん中であろうが……」

「お呼びとあらば、即、参上!」

「危険と困難を打ち破り、依頼を遂行!」

「悪党であれば、依頼主でもぶっ飛ばす!」

「それが我ら……」

「「「「『赤き誓い』っっ!!」」」」

そして周囲では、地元のハンター達がドン引きであった……。