軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

350 山に潜むもの 6

子供達から色々と聞き、男達が現れるのはほぼ定期的だということから、数日間待機することにした『赤き誓い』の面々。

そしてその間、退屈凌ぎにと子供達に剣術を教えてやるメーヴィス、子供達の中に魔術師の才能がある者がいることに気付き、簡単な魔法を教えてやるレーナ、何やら『世間の荒波に負けずに生きていく方法』とやらの講習会を開いているポーリン……。

そしてマイルは、すぱすぱと木を切って、雨風を、そして野獣の襲撃を防げる堅牢な樹上家屋を建設していた。また、アイテムボックスに入っていた、盗賊から回収した安物の剣だとか、なぜか1本だけ入っていた鍬だとかを、子供達に寄付した。

家も勿論であるが、剣と鍬を受け取った子供達の喜びようは凄まじかった。もう、喜びすぎた子犬のように 嬉(うれ) ションするんじゃないかと心配になるくらいである。

……しかし、喜んでいた子供達が、急に真顔になって心配そうにマイルに相談してきた。

「ゴーレムやシャカシャカ様がやってきて、剣や鍬をじっと見詰められたら、どうしよう……」

シャカシャカ様というのは、スカベンジャーのことである。……たしかに、6本の足で素早く動く様子は、シャカシャカ、という擬音が聞こえてきそうではある……。

そして、どうやら子供達は、スカベンジャーをゴーレムより上位だと考えているようであった。

「う~ん、いくら金属が好きだといっても、手に入れた金属を全部渡していたら、いつまで経っても生活レベルが全然向上しないよ? 鍋や包丁も持てなくなっちゃうわけだし……」

相手が子供だからか、いつもは『ですます調』で喋るマイルも、普通の子供らしい喋り方である。

実はマイルは、以前ロックゴーレムやスカベンジャーに出会った後、彼らについては色々と考察を重ねていたのである。そして、その存在について、ある程度の予想は立てていた。

「ゴーレム達は、金属を集めてはいるけれど、それを人間達から無理に奪おうとは考えていないみたいだよ。金属を身に着けたハンターや猟師達を自分達の方から積極的に襲うことはないみたいだし、襲い掛かってきたハンターを返り討ちにした時も、身に着けていた金属をそっと外して持ち去るだけであって、抵抗力を失った者にとどめを刺したりはしないようだし……。

人間の方から攻撃した場合に奪われるのは、まぁ、ペナルティなのか、敵対者は保護対象外なのか、それとも敗北者の所有物は勝者のものになると考えているのか、分からないけどね。

とにかく……、」

「とにかく?」

「別に、みんなが全ての金属製品を渡さなくても、彼らは全然気にしないと思うよ。時たま、拾ったり手に入れたけど使い途のない金属片とかをあげれば充分なんじゃないかな。

別に家賃代わりとかじゃなくて、『敵対するつもりはないよ、いい関係でいようね』ってことが示せていればいいんじゃないかな……」

マイルの説明に、何となく納得したような顔の子供達。

そして、子供達を安心させるために、マイルはアイテムボックスに眠っていた『絶対にこれから先、二度と使うことのない金属製品』を、貢ぎ物用としていくつか子供達に渡してやった。

そう、大失敗して焦げ付かせてしまった上に穴の空いた鍋とか、もういつ折れるか分からない、盗賊が持っていたボロボロの剣とか、銅貨斬りのデモンストレーションで四分割された銅貨とか……。

剣は、念の為に、ぽっきりとへし折ってから渡しておいた。こんな、いつ折れるか分からないものを、子供達が狩りに使ったりしたら大変である。

マイルがその錆びた剣をへし折った時、子供達から『ああ!』という悲痛な声が上がった。

……やはり、それは剣として自分達が使おうと考えていたようである。危ない危ない、と、胸を撫で下ろすマイル。こんなものが原因で死なれでもしたら、寝覚めが悪いなどというレベルではない。

そして、『赤き誓い』によるブートキャンプが始まってから4日後、その連中がやってきた。

「来ました! 人間、14名!!」

定期的に 探信魔力波を発信し(ピンをうっ) ていたマイルが、料理の腕を止めて、皆にそう報告した。

「では、 手筈(てはず) 通りに……」

「「「やりますか!」」」

『赤き誓い』の皆がにやりと嗤ったとき、子供達が心配そうな顔をして言った。

「「「「「それって、料理作ってからにしてくれない?」」」」」

僅か4日間で、かなり図々しくなってしまったようであった……。

* *

まずは、連中の行動、というか、戦いを見ることにした、『赤き誓い』。

事前に相手の実力や戦い方を知っておくことは、兵法の基本である。

それに、戦いの様子を見ることによって、連中の目的のヒントが掴める可能性もある。何か特定のものを狙っていたり、不自然なやり方をしていたり……。

「いました、あそこです!」

木の陰から、マイルが指し示した方向を窺うと……。

「あ~、それっぽいわねぇ……」

レーナが言う通り、確かに、あの時の誘拐犯……というか、邪神教徒達に似た雰囲気の連中であった。

しかし、現代の地球ではあるまいし、いくら同じ組織の者達であったとしても、遠く離れた国の者達が、全員全く同じデザインの、お揃いのマントを 誂(あつら) えられるわけがない。 製造者(テイラー) 的にも、流通的にも……。

なので、ただのシンボルとして皆が『黒いマント』を着用しているだけであり、そのデザインや材質等はバラバラであったのだ。

そして、お揃いの衣服やアクセサリー等を仲間のシンボルとして用いる団体はいくらでもある。職業的な親睦組織から奥様方の交流会まで、実に多くのものが。

その中でも、ある程度の経済的余裕がある男達の親睦会では、お揃いの色のマントを着用する場合がかなり多い。

そう、お揃いの黒いマントくらいでは、何の証拠にもならないのであった。せいぜいが、『もしかしたら』と思わせる程度に過ぎない。

そして、移動する男達をこっそりと尾行する『赤き誓い』。たっぷりと距離を取ってマイルの探索魔法で追跡するのであるから、気付かれる心配はない。

それに、そう待たされることもあるまい。縄張りに進入した者は、すぐにゴーレム達に発見されるのだから。……そう、まるで何らかの探知手段があるかのように……。

「来ました、ゴーレムです。数、4!」

マイルが、小声で皆に知らせた。

14人の戦闘要員に対してゴーレム4体というのは、人間側にとって、かなりキツい。

ゴーレム1体当たり人間3.5人であるから、ハンターだとCランクの上から4分の1に入るメンバーで、しかも連携の取れるパーティ仲間であれば何とか対等、という感じであろうか……。

なので、適当に戦って逃げる、というのであれば、何とか負傷だけで済むかも知れないが、変に拘って逃げ時を失すれば、数人が死んでもおかしくはない。

「大丈夫かしら……」

レーナ達も、困ったような顔をしていた。

別に犯罪を犯しているわけでもない、ただ魔物であるゴーレムと戦っているだけの、そして子供達に食料を置いていくだけの優しさを持っている連中が、眼の前でゴーレムに殺されるのを看過するというのは、『赤き誓い』のみんなにとっては、ポリシーに反する。

しかし、この地域にいるゴーレムもまた、わざわざこちらから喧嘩を売りさえしなければ、人間を襲うことなく、凶暴な魔物を狩ってくれるという、益鳥や益虫ならぬ、益魔物なのである。

そして、もしこの地域のゴーレムが全滅、もしくは一定以下の数まで減少すれば、再びこのあたりの凶暴な魔物が増え、子供達が危険に晒されることになるであろう。

それに、そもそも、この戦いは男達が望んだものである。別に移動中に襲われたとかではなく、自分達から喧嘩を売りに来たわけなのである、何らかの目的を持って……。

なのに、ゴーレムに自分達まで敵であると認識されて子供達に迷惑を掛けるようなことになってまで、勝手に介入する必要があるのだろうか。

どうすればいいのか。

「「「「うむむむむむむ……」」」」

そして、男達が、接近するゴーレムに気付いた。

「ゴーレムだ! 数は、……4体!」

「駄目だ、多すぎる! 逃げるぞオオォ~~!!」

「「「「「「了解!!」」」」」」

そして、一斉に反対方向へと逃げ出す男達。

「「「「何じゃ、そりゃああああぁ~~!!」」」」

あまりの肩すかしに、顎が外れそうなマイル達であった……。