軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

348 山に潜むもの 4

「は~い、できたよ~!」

マイルの声に、子供達が集まってきた。

マイルが子供達16人と自分達4人、合計20人分の料理を始めたところ、リーダーの少年がしばらく悩みに悩みまくった挙げ句、他の者達を呼んでくるようにと年下の子供に指示したのであった。

そしてやってきた子供達は、とんでもなく旨そうな匂いを出しながら作られている料理を見て硬直、その後料理を作っているマイルとポーリンに纏わり付いて離れないため、邪魔なのと危険なのとで追い払ったのである。

少し離れたところから、じっと見詰められながら料理を作るのは、やりにくい。すごくやりにくかったが、何とか殺気並みの視線に耐えながら料理を作り上げたマイルとポーリンであった。

そして……。

「「「「「 旨(うめ) ええええぇ~~!!」」」」」

「うむ、そうであろう、そうであろう……」

えっへん、と胸を張るマイル。

懸命に知恵を絞った結果なので、マイルが偉そうにするのも仕方ない。

いくら街にいた時よりは食生活が向上したとは言え、たまたま大物を仕留められた時以外は、決して満腹するまで食べられるというわけではない。そして、調味料も碌な調理器具もないここでは、味付けもなく、ただそのまま、生、焼く、干す、くらいしか選択肢はなかった。

そう、この子供達にとって、食事とは楽しむものではなく、生きるために必要な必死の作業なのであった。

なのでマイルは、この子供達に、食事の楽しさ、食べることの、『餓えを満たす』ということ以外の幸せを教えたかったのである。

その思いはレーナも同じであったが、レーナが調理に加わると、子供達が『幸せ』どころか『不幸』になりそうな予感がしたためマイルが拒否、手伝いはポーリンが行うこととなった。そしてレーナは、マイル達が料理を作っている間に、子供達の身体を調べ、怪我に治癒魔法を掛けてやることで我慢していたのである。

メーヴィスは、子供達が料理の邪魔をしないようにと、子供達が持っている竹槍や棍棒を使った戦い方や、身体の鍛え方を教えてやっており、大人気であった。

メーヴィスは、『なぜ私は、子供や老人、女性にばかりモテて、殿方にはあまりモテないのだ……』とか言って 溢(こぼ) しているが。

そしてその間にマイルとポーリンが作った料理は。

焼肉。

いや、子供達も焼いた肉は食べていたであろうが、『焼いた肉』と『焼肉』は、違う。全く違う。

『焼いた肉』は原始人も食べていたであろうが、『焼肉』は、文明人の食べ物である。

部位ごとに切り分け、ひとくちで食べられる大きさ、最も美味しく食べられる絶妙な厚さ、焼き過ぎず生過ぎずの焼き加減、そして焼肉の命、味付け!

軽く塩と胡椒、そしてほんの僅かな唐辛子を振ったもの。

マイル特製のタレに軽く浸けてから焼き、再び食べる前に少しだけタレをつけたもの。

高価な香辛料も、果実、醤油、砂糖、ニンニク、水飴、塩、蜂蜜、植物油、玉葱等を混ぜ合わせて寝かせたタレも、子供達には縁のない、別世界の品々である。おそらく、そのあたりの貴族に食べさせても絶賛されるであろう代物なのであるから、 過剰攻撃(オーバーキル) もいいところである。

がつがつと料理を 貪(むさぼ) り喰う子供達は、話し掛けても返事をしてくれそうにはない。なので、苦笑しながら食事が一段落するまで待っているレーナとメーヴィス、そして、お代わりの準備でそれどころではない、マイルとポーリンであった……。

「……で、その怪しい連中が出没するようになったわけですね……」

「うん」

いつものように、子供達から話を聞くのはマイルの担当である。

レーナはすぐに語気を荒げるし、子供は、すぐにポーリンの本性に気付いて警戒するから、精神年齢が近くて裏表のないマイルが、こういうのには一番適しているのである。しかも今回は胃袋を鷲掴みにした本人なので、これ以上の適任者はいなかった。

そして、マイルが子供達から聞き出した話は……。

迫害され、犯罪組織に使い捨ての 矢弾(やだま) にされたり、違法奴隷として売り飛ばすために狩られたり、貴族や金持ち連中の嗜虐趣味や人狩りゲームの獲物にされたりする状況から逃れるために街から逃げ出すことを考えて、しかし、かといって小さな村に大勢の孤児達を受け入れる余裕があるわけもなく、途方に暮れていた時に、孤児達のひとりが口にした、亡くなった両親から聞いたというお 伽(とぎ) 噺(ばなし) 。

それは、『貢ぎ物をすれば、縄張りに住むことを許してくれる魔物』の存在であった。

とても信じられることではないが、街に残っても死、どこかの村に押し掛けても追い払われて死、適当な森に住み着いても、魔物や野獣に襲われるか、盗賊や人狩りに襲われて死。どうせ死ぬしかないならば、駄目で元々、奇跡に賭ける!

そう考えて、最後の大勝負とばかりに、水筒と食べ物、そしてあちこちから『貢ぎ物』を掻っ払い、その『共存を認めてくれる』という言い伝えのある魔物が住んでいるという地域を目指して旅立った。

「……それが、ここというわけですか……」

「うん」

「そして、その『共存を認めてくれる魔物』というのが……」

「うん……」

そして、山の中を 彷(さま) 徨(よ) い、掻っ払った僅かな食料もほぼ尽き、水場を見つけて何とかひと息入れていた子供達の前に、それが現れた。

ブラッディベアー。

普通の熊ではなく、魔物の一種である。到底、子供の足で逃げ切れるような相手ではなかった。

最早、これまで。

子供達がそう覚悟した時に、『それ』が現れた。

吠えるわけでもなく、無言。

表情もなく、慌てた様子もなく。

ただただ落ち着いた動きで、ブラッディベアーに立ち向かい、……そして瞬殺。

子供達の方を向いた『それ』に、みんなは慌てて荷物の中から貢ぎ物を取り出して、そっとそれを差し出した。

……金属。

屑鉄や銅貨を始め、ゴミ捨て場で拾ったもの、民家のドアの蝶番を外したもの、その他諸々の、集められるだけ集めた、金属類。

『それ』は、しばらくそれを見詰めたまま、静止していた。

そして数分後、『あれ』が現れた。

6本足で、4本の腕。大型犬くらいのサイズの、しゃかしゃかと素早く歩く、謎の生物。

……そう、スカベンジャーである。

『それ』、つまり、ロックゴーレムが呼んだとしか思えないタイミングで現れた、『あれ』、スカベンジャー。

スカベンジャーは、固まったままの子供達の姿をじっくりと眺め、そして『貢ぎ物』を掴むと、ロックゴーレムと共に姿を消した。

……ここに住むことを認められた。

子供達には、何となく、それが理解できたのであった……。

そして、なぜか大きめで凶暴な魔物は退治するが、小さいものや害のあまりない魔物、魔物以外の普通の動物等は完全に無視するゴーレムに守られるような形で、角ウサギのような小さな魔物や普通の動物を狩ったり、山菜や果実を採取したり、そして今では山菜の種や根を植えて畑モドキのものを作ったりと、それなりに何とか暮らしていけるようになった子供達。

「どうして、自分達が襲われるわけでも、そして食べるわけでもないのに、ゴーレム達は大型で凶暴な魔物を狩るのでしょうか? それに、大型の魔物でも温厚だったり、結構凶暴でも、魔物じゃない普通の動物とかは襲わない、というのも、よく分かりませんねぇ……」

ポーリンが不思議そうにそう言うが、ゴーレムがいる場所では、大抵は危険な魔物だけが生息していないというのは周知のことである。

普通は、わざわざそういうところへ行く人間は猟師かハンターくらいなものであり、決してゴーレムには近寄らず、手出ししない猟師は滅多に襲われることはないが、ハンターは時たまゴーレムとの戦いになって、 這々(ほうほう) の 体(てい) で逃げ帰ることがある。

しかし、猟師は確かに少しはゴーレムの恩恵に与っていると言えなくはないが、ゴーレムと共存している、とまで言えるわけではない。それは、ここの子供達も同様であろう。

ただ、ゴーレム達に『無害』としてスルーして貰えている。それだけのことである。

しかし、それだけでも、子供達にとっては充分ありがたく、そのがっしりとしたゴーレムの巨体は、自分達を凶暴な魔物から守って貰える守護神のようにも思えたことであろう。

「……そんなある日、あいつらがやってきたんだ……」

いよいよ、本題である。