軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

336 地竜討伐 3

ずん!

土竜の腕が振り下ろされ、眼を見開いて、無言のままそれを見詰める『ミスリルの咆哮』、マイル達、へたり込んだままの子供達。

……そして、左腕で土竜の腕を支えている、メーヴィス。

「「「「「「え……」」」」」」

土竜の方を見たまま、子供達に告げる、メーヴィス。

「……知っているか! ハンターの身体に熱い血が流れている限り、不可能なことなどありはしないのだということを!

うおおおおおおおぉ!!」

そして、 裂帛(れっぱく) の気合いと共に、土竜の腕を撥ね上げ、すらりと剣を抜くメーヴィス。

「真・神速剣!」

どしゅ!

どん!

ぐさり!

背(せ) 丈(たけ) の関係で、土竜の下腹部を 横一文字(よこいちもんじ) に切り裂いたメーヴィス。そして、その直後に着弾した、レーナのファイアー・ボールとポーリンのアイシクル・ジャベリン。

メーヴィスが斬った下腹部からは内臓がはみ出ているが、魔法攻撃の方は、それ程効いてはいないようである。

慌てて放った、迅速さ重視の詠唱省略魔法であるから、それは仕方ない。しかしそのおかげで、『ミスリルの咆哮』の若手剣士と槍士が駆け寄り、子供達を引きずって後方へ退避する時間が稼げた。そう、充分、目的を達成することに成功した攻撃であった。

「ど、どうして……」

物理法則に反する。

呆然とそう呟くマイルに、鼓膜を直接振動させることによりナノマシンが話し掛けてきた。

『……たかが普通の義手を作る程度のことに、私達が10秒もの時間を必要としたとでも?』

説明するというより、ただ、ドヤ顔で自慢したかっただけのようである。

『 慣性中和装置(イナーシャル・キャンセラー) 、運動エネルギー相転移システム、エネルギー亜空間拡散システム、そしてメーヴィス殿の全身強化と連接サブシステムの……』

(き、聞きたくないぃ!!)

怒り狂った土竜が皆に襲い掛かろうとするが、子供達を後方に退避させ、そして混乱と硬直から立ち直った『ミスリルの咆哮』と『赤き誓い』が、一斉に攻撃に出た。

「出番がないまま、終われるかよォ! うおおおおおお!」

「アイス・スピアー!」

「アイス・ジャベリン!」

「アイス・アロー!」

「必殺、神滅剣!」

グレン、『ミスリルの咆哮』の3人の魔術師、そしてマイルによる、タコ殴り状態である。そしてメーヴィスやレーナ、ポーリンも、2撃目、3撃目を加える。

攻撃魔法にアイス系が多いのは、毛皮をあまり傷めないようにして素材価値の低下を防ぐためである。

……先程のレーナのファイアー・ボールは、仕方ない。あれは、メーヴィスと子供達を護るための時間優先のものであったため、一番得意な魔法を使うのは当然のことであったし、それくらいの焼け焦げは、許容範囲内である。

そもそも、無傷の毛皮など、そうそうあるものではない。特に竜種に至っては、毛皮が無傷の状態で倒せるはずがない。

そして、子供達を退避させた後、急いで戻ってきた剣士と槍士は、既に地に沈んだ土竜を見て、がっくりと肩を落とすのであった。

それを見て、気の毒そうな顔をするマイル。

(あ~、せめてひと太刀入れて、参加したかったよねぇ、滅多にない竜種討伐なんだから……)

* *

「話が違うじゃない!」

あの後、土竜をマイルがアイテムボックスに収納し、野営の準備。そしていつものようにマイルが用意した食事を皆に振る舞いながら、本日の反省会というか、話し合いが行われていた。

マイルのアイテムボックスのことは、『ミスリルの咆哮』の面々も元々知っていたらしい。

……さすがに土竜の収納と大型テントを出した時には驚かれたが、グレンの『ま、お前らだからなぁ……』のひと言で済まされた。

そして今、レーナが依頼内容の 齟齬(そご) についてギルドにクレームを付けようと言っているわけであるが……。

「目撃したのは、竜種なんか見たこともない村人だ。そして、『トカゲのデカいのが地面から出てきた』と報告されれば、普通、地竜だと判断する。土竜が人里に下りてきた例なんか、殆どないからな。……ま、単なる間違いだな」

グレンは簡単にそう言うが、地竜だと聞いていたから、地中はノーマークであり、奇襲などあり得ないと考えていたわけであるから、下手をすると、全滅していた可能性もある。

「そう言えば、あの、獣人の発掘現場の時、地下から出てきた古竜を見て、レーナさんも『地竜だ』って言ってましたよね、古竜が人間の言葉を喋るまでは。そして、いきなりこっちから攻撃して……」

「うっ……」

確かに、そんなこともあった。それを思い出し、口籠もるレーナ。

「ま、この場合は無理もなかったとはいえ、討伐対象の間違いという、かなりデカい依頼内容の不備があったのは確かだ。そのせいで、俺達がかなりヤバかったのも、間違いねぇ。

一方、奇襲の危険は大きかったとはいえ、戦闘力そのものは地竜より土竜の方がかなり低い。攻撃力も、防御力もな。だから、ま、討伐対象が格下だったが依頼料はそのまま、ってあたりで勘弁してやっちゃどうかな。

ねじ込めば詫び金が出るかも知れねぇけど、ギルド支部も、故意や手抜きをしたってわけじゃねぇからな。目撃者の村人、それを聞いてギルドに依頼した領主、そして依頼を斡旋したギルド、みんな、別に大きな過失や悪意があったわけじゃねぇから、責任を追及してどうこう、ってのはあまり気が進まねぇんだよ。……どうだ?」

『ミスリルの咆哮』は、儲けはあまり考えない、『お礼参りの旅』の途中である。寛容になるのも、無理はない。そして『赤き誓い』も、別にそうお金に困っているわけではないし、修行し、名を売るための旅の途中である。あまりみっともないことはしたくない。

「……分かったわよ、うちもそれでいいわ」

「……あの、リーダー、私……」

パーティとしての判断を自分で勝手に決めたレーナに、悲しそうな顔でぼそりと呟くメーヴィス。

いや、メーヴィスも、その判断には賛成である。ただ、リーダーとして、それは一応みんなで相談して決めて、自分がパーティの代表として、そう宣言したかっただけで……。

「そう 言(い) や、メーヴィス、お前……」

メーヴィスの呟きが聞こえたのか、突然メーヴィスに話を振ってきたグレン。

「お前だけはまともで、こっち側の人間だと思っていたのに、お前も マイル(あっち) 側かよ……」

「えええええええ!!」

グレンの言葉に、心外だ、と言わんばかりの声を上げるメーヴィス。

「な、ななな、何ですか、その言い方は!!」

それを聞いて、怒るマイル。

もう、ぐだぐだであった。

そして、メーヴィスをじっと見詰める、キラキラと輝く8つの眼。

それは、童話に出てくる勇者様や、伝説の英雄に向けられるような眼であった。

((あ~、またか……))

少年少女ホイホイ。

呆れたような眼でメーヴィスを見る、レーナとポーリンであった。