軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

331 Bランクパーティ 4

「はぁ、疲れました……」

「誰のせいよっっ!」

マイルの台詞に突っかかる、レーナ。

あの後、商人達からの買い取りの申し込み、そしてそれに続き商人同士の争いが勃発し、大変な騒ぎになってしまったのである。

まともな状態のウロコを入手し、防具に加工して国王陛下に献上でもすれば、一躍、有名商店への仲間入りである。そして、王族や貴族達の間で知らぬ者のいない、大商店に……。

「そりゃ、後に引けるわけがないですか……」

「当たり前よっ!」

ここは、更衣室である。……勿論、お風呂の、である。

お風呂に入るためにわざわざこの宿を選び、そのせいであんなゴタゴタに巻き込まれ……、巻き込み……、とにかく、あんなことになったのであるから、せめてお風呂は存分に堪能せねば、というわけであった。

ゆっくりと装備を外してお風呂に行くためのラフな服装に着替えているメーヴィスとポーリンを置いて、スポーン、スパーンと脱いでさっさと着替えたレーナとマイルが、少し先発しているだけである。すぐにメーヴィスとポーリンも来るであろう。

そして、レーナとマイルが浴室に入ると……。

「あら、あなた達……」

先客がいた。

旅の商人も上級ハンターも、女性の数は男性に比べ圧倒的に少ない。なので、女性用浴室はあまり広くはないが、それでも一度に7~8人くらいが入れる広さはある。そこにいた先客は、先程のBランクパーティの、ふたりの女性ハンターであった。

無礼な態度は互いに謝罪したし、無駄足になるのを防ぐ情報を提供してあげたのであるから、関係は良好、……のはずであった。

しかし……。

仕方ない。仕方ないことなのであるが、どうしても、真正面から向き合うと、まともに眼に入ってしまう、ソレ。

「「…………」」

少し俯き、不愉快そうになるレーナとマイル。

勿論、同じ女性なのであるから、先客のふたりもその理由が分からないはずがない。少し気まずそうな顔で視線を逸らせた後……。

「ま、まぁ、まだ未成年なんだから、これから……」

「16歳よっ!」

「「…………ごめんなさい……」」

「「「「………………」」」」

きまずい無言の時間が流れていると……。

「レーナ、マイル、そんなに急がなくても……」

メーヴィスとポーリンがやってきた。

そして。

「「…………」」

今度は、先客のふたりがポーリンを凝視した後、俯いた。

どう見ても、成人したばかり、15~16歳にしか見えないポーリン。

そして、どう見ても、30歳前後らしきふたりの女性。

「「「「「「…………」」」」」」

メーヴィス、そして何だか居心地の悪そうなポーリンを含め、どんよりとした空気に支配された浴室であった……。

先程の食堂では、古竜に関する更に詳細な情報を得ようとするハンター達と、そんなことはどうでもいいから、とにかく古竜の素材を手に入れたい商人達とで、混迷を極めた。

ハンター達は、まだいい。別に競争相手がいるわけではないし、依頼失敗どころか、下手をするとパーティ全滅の可能性すらあり悲壮な覚悟で受けた指名依頼が無事に終わりそうで、少し待たされるくらい、全然気にもならない。

……依頼がキャンセルになったりはしない。既に受注済みであり、古竜に関するこの情報は『依頼を受けた後、自分達が手に入れた情報』なのであるから、あとは森の現場へ行って裏付け調査、あわよくば残されたウロコの破片でも回収できれば、依頼完了による報酬金と合わせて、結構な、いや、それどころではない実入りになるはずである。

現場は、後で詳しく教えて貰えることになっている。他の者達に先を越されることはあるまい。

問題は、商人達の方であった。

敵、敵、敵、敵、敵。

周り中、敵だらけ。

あまりにも多くの敵と、そして、あまりにも美味しい 戦利品(トロフィー) 。

ワイバーンとか地竜とかであればともかく、古竜など、出会うことすら、まずない。

そしてもし出会ったとしても、戦いになどなるはずがない。

人語を喋り、人間より優れた知能、巨大で 強靱(きょうじん) な身体、そして人間の想像を超えた魔力と、それを元に連発して放たれる強力な攻撃魔法。

また、古竜に手出しした場合、それは古竜の一族全てに対する宣戦布告を意味し、とりあえずその国は滅びる。そしてそれから、人間全体に対して古竜からの事情説明と謝罪の要求がくる。

……当事者達が国ごと滅びているというのに、どうやって事情を説明しろと?

まぁ、古竜の方に非があった場合には、『なかったこと』になるか、ごく 稀(まれ) には、古竜の方から『すまなかった』と言って、お詫びの印にウロコを1枚くれたりしたこともあるらしいが、そんなことは数十年か数百年に一度、あるかないかであろう。

……その、『古竜のウロコ』が、ここにある。

身体から剥がれた後は、くっついていた時のような強度は失われるらしいが、それでも充分な強度を持ち軽量であること、そして何よりもそのネームバリューと稀少価値から、ウロコそのまま、もしくはそれを加工して作られた防具とかは、とんでもない価値となる。

殴り合い、取っ組み合いが始まってもおかしくない状況であるが、それは一般の商人達の場合である。中堅以上の、そして遣り手の商人達は、そんな愚かな手段で争ったりはしない。

「「「「「「…………」」」」」」

「「「「「「………………」」」」」」

「「「「「「……………………」」」」」」

そして、『赤き誓い』とハンター達は、無言で睨み合う商人達を残し、そっとその場から立ち去ったのであった。

「後で、うちの部屋に来て頂戴。現場の位置と、もう少し詳しいお話を聞きたいからね。何しろ、私達はギルドに対して納得のいく説明をしなきゃならないんだから。

勿論、礼金は払うし、説明の間のお酒と摘まみは提供させて貰うわよ」

そろそろ風呂から上がろうと思った頃、女性ハンターからそう頼まれた。

「お金はいいわよ。摘まみと、果汁水をお願い」

レーナも、そんなことで小銭を稼ぐ気はないらしかった。ポーリンも、口を挟む様子はない。どうやら、ハンターとしての仕事と商売では稼いでも、それ以外のことでガツガツするつもりはないようである。

そして、ハンター達の部屋で 暫(しばら) く話し、マイル達が自分達の部屋へ戻ると……。

「「「「げぇっ!」」」」

部屋の前で、商人達が待ち構えていた。

「……明日は、別の宿に移るわよ」

「やはり、分不相応なところに泊まるのは、良くありませんよね」

「私達には、安宿がお似合いだよね……」

せっかく張り込んだ高級宿なのに、少しマシな食事と、少しお風呂で 寛(くつろ) げただけで、ろくに気の休まらない宿泊となってしまった。

そして、まだまだ休めそうにはない。

「「「マイルぅ~……」」」

「ご、ごめんなさいぃ……」