軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

217 七つの顔の女だぜ! 6

「では、これがまだ2度目の襲撃だと?」

「は、はい、女神に誓って!」

この世界には、神も女神もいない。しかし、それを知らない者達には、まだそれらの御威光は健在であった。そして兵士やハンター、盗賊等の「自分の生命が、運によって大きく左右される者達」は、普段の言動に反して、結構信心深いのであった。何しろ、神に祈るのは 無料(ただ) で気休めになるので、信心して損はない。そして勿論、教会に寄付するようなことはない。

「どう思う?」

「う~ん、被害者はみんな、殺されるかどこかへ売り飛ばされているから、確認のしようがないわよねぇ……。ま、盗賊には変わりないんだから、犯罪奴隷になるのは一緒よ。こいつらが犯人、ってことでいいんじゃない?」

「待て、待てえええぇぇ~~!!」

メーヴィスとレーナの遣り取りに、焦りまくる盗賊の親分。

それは、一緒ではなく、大違いであった。

今までの盗賊行為の全てを被せられれば、終身奴隷30回分くらいである。おそらく、最も過酷な場所での労務が割り当てられる。一生。

まぁ、おそらくそう長い一生ではないのが、幸か不幸か……。

それが、盗賊行為は前回の1回だけということならば、もし被害者が売り飛ばされただけで生きており、奪回か買い戻し等が可能であれば、違法奴隷商人の情報を提供することで、少し過酷さの少ない仕事とか、年季を30~40年くらいにしてやるとかの温情が期待できなくもない。

「本当だ! 盗賊の被害が多いから、今なら俺達が何回かやっても、全部そいつらのせいになると思ったんだよ! 反対に、俺達が全部被せられたんじゃ、堪んねぇ!」

「……それは、向こうもそう思っているんじゃないかな……」

盗賊の言い分に呆れるメーヴィス。

「いや、しかし、俺達にゃアリバイがある! 盗賊被害のいくつかは、俺達が依頼を受けて仕事中だったり、酒場で飲んだくれていた時のもんだ。だから、俺達を突き出しても、盗賊が他にもいるってことはすぐ分かるはずだ。それに、そもそも、俺達を捕らえた後も被害が続けば、それはすぐに分かることだ!」

「な、成る程、確かに……」

メーヴィスも、その言い分には納得せざるを得ない。

これで依頼を終えた場合、その後も被害が続けば、困ったことになる。

いや、依頼通りに盗賊を捕まえたという実績はでき、依頼成功にはなるであろう。しかし、それは『赤き誓い』にとって満足できる結果ではない。

「続けましょう!」

マイルの言葉に、頷く3人。

「こんなもんでいいんじゃないですか?」

マイルの言葉に、若干引きながら頷く3人。

その前には、地面に埋められて、首から上だけが出た8人の盗賊達が……。

身体中を例の釣り糸でぐるぐる巻きにされた上、すっぽりと地面に埋められて、魔法で土をぎゅうぎゅうに固められ、猿ぐつわを噛まされ、目隠しをされ、耳を塞がれた男達。

そして、耳を塞ぐ前に、しっかりと言い聞かせてあった。

あまり叫ぶと、帰り道に回収に寄る前に喉の渇きで死ぬかも。

そして、うるさくすると、魔物や猛獣が寄ってくるかも。

こいつら盗賊、という木札を置いておくから、旅人とかに見つかったら殺されるかも。

……だから、私達が回収しに来るまで、静かに、息を殺していた方がいいよ、と。

皆、真っ青な顔で、こくこくと頷いていた。

既に猿ぐつわを噛ませてあったので、言葉は喋れなかったのである。

そして更に、念の為にと葉が茂った木の枝を切って頭に被せ、マイルがバリアを張っておいた。声と匂いは遮断するが、空気は通すやつである。マイルが離れればバリアはそのうち消滅するであろうが、まぁ、気休め程度にはなるだろう。

「では、参りましょうか、お嬢様」

「うむ、参るとするか!」

「……マイルだけに?」

「誰が上手いこと言えと……」

そして、主従の旅は続くのであった。

「ここは行き止まりだぜ!」

「「「「出たぁ!」」」」

(チョ~コベー……)

相変わらず、わけの分からないことを連想するマイル。

そして、今度現れたのは、4人の男達。後ろを振り返っても、他の者の姿はない。

「ハズレかしら?」

「ハズレっぽいですねぇ……」

レーナとマイルが言う通り、どうもハズレっぽかった。

今までの被害状況から、盗賊達が4人だけ、ということは、少々考えづらい。そしてもっと人数がいるならば、後ろを抑えないということは、やはり考えづらい。ということは……。

「さぁ、有り金全て、出して貰おうか……」

そう言って、にやにやと笑う盗賊達。

((((え……))))

そして、不審に思う、『赤き誓い』の面々。

ここは、皆を捕らえてアジトへと連れ去り、身ぐるみ 剥(は) ぐのはその後ゆっくりと、というのが定石なのでは。高く売れる若い女を見逃すはずもなく、そしてどうせ連れていくならば、ここで身ぐるみを剥ぐというような無駄なことをするはずがない。いくら盗賊が馬鹿とはいえ、むこうも一応は「プロの盗賊」なのであるから、それくらいのことが分からないはずがない。そして、前に立ち塞がったまま、それ以上接近しようとはせず、間隔を保ったまま。明らかにおかしな行動であった。

「さぁ、観念して、おとなしくしな」

そう言うだけで、何らの行動に出ることもない。それは、まるで……。

「時間稼ぎ?」

マイルが、小さな声で呟いた。

「だから、どうしてあんたは、こういう時だけ頭が回るのよ……」

「ま、マイルだからねぇ……」

「いつもこうだといいんですけど……」

どうやら、他の3人も同様の結論に至っていた模様である。

そしてそのまま十数秒間にらみ合いを続けていると。

「まて! そこの盗賊共、待てええぇ~~!」

後方から、何やら変なのがやってきた。

『赤き誓い』のみんなが振り返ると、こちらに全速で走ってくる4人の男達の姿が。どうやらハンターらしい。

「面倒そうなのが来たわね。獲物を横取りされるのも、話がややこしくなったりするのも御免だわ。メーヴィス、マイル、瞬殺で!」

「「了解!」」

そしてふたりは、前方へと駆け出し、文字通り瞬殺で4人の盗賊達を打ち倒した。勿論、先程の盗賊達に対してと同じく、剣の側面で叩く「平打ち」である。殺すと犯罪奴隷の代金の分け前がなくなるし、色々と面倒である……、いや、人道的見地から。多分。

「盗賊共、我ら『 天翔(あまがけ) る双龍』が……、って、え?」

駆け付けた4人のハンター達の前には、平然とした少女達と、地面に転がった盗賊達の姿があるのみであった。

「「「「え……」」」」

愕然としたハンター達に、レーナが説明してやった。見れば分かるのであるが、そうしないと、固まったハンター達が再起動しそうになかったので。

「私達を助けようとしてくれたらしいのは、一応、感謝しとくわ。でも、これくらいなら自分達で相手できるから大丈夫よ。心配ないから、このまま先に行って頂戴」

「「「「…………」」」」

レーナの説明に、動揺の表情を浮かべるハンター達。

「い、いや……、そういうわけにはいかない! 反撃される恐れもあるし、ここは、私達が盗賊の護送を引き受けよう!」

「獲物の横取りですか! それとも、護送の依頼料を払えとでも? 私達にこの程度の連中なら簡単にあしらえる力があることは、今見て分かったでしょう。あなた達の助力など必要ありません!

この連中は、私達が運び、ギルドに引き渡します!」

せっかくの稼ぎを 掠(かす) め取ろうとする連中は、絶対に許さない。ポーリンの強い意志を曲げることは、誰にもできないのであった。

「う……、そ、それでは、危険を排除するために、この場で盗賊共を殺しておくべきだ! おい!」

リーダーらしき男の指示で、本人を含めた全員が剣を抜き、盗賊達に歩み寄った。そして剣先を地面に倒れ伏した盗賊達に向け、勢いよく突き出した。

キキン、キンキン!

「「「「え……」」」」

絶対に間に合うはずのないタイミングであったにも拘わらず、ふたりの少女によって全員の剣が弾かれ、再び驚愕に眼を見開いて固まる4人のハンター達。

「何、勝手にうちの獲物に手を出しているんですか! 殺したら値が下がるでしょうがあぁっ!」

「「「……」」」

ポーリンに先に怒鳴られ、言うことがなくなって言葉に詰まるレーナ達。

そして皆、短絡的な、そして他者の獲物に勝手に手出ししようとしたハンターの男達のことを不審に思っていた。

((((怪しい……))))