軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

154 ゴーレムの岩山

『オオカミしょうねん』

昔々、ケンという名前のオオカミ少年がいました……。

『アリとキリギリス』

キリギリス「少しでいいから、何か、食べ物を分けて貰えませんか」

アリ 「いやぁ、うちの分だけで、ギリギリっス」

キリギリス「そんなの、アリっすか?」

『マッチ売りの少女』

「そうだ! 凍死するくらいなら、いっそこのマッチで、街中を火の海に!」

「「「…………」」」

今夜の『日本フカシ話』も無事終わり、眠りに就く4人であった。

翌朝、魔法でお湯を出し、簡単な朝食を済ませた『赤き誓い』一行。

テントはマイルがそのまま収納し、普通のハンター達の数倍の速さで出発準備が完了した。目指すは、この岩山の頂上部。他のハンター達が不審な者達を見たという情報は、頂上へと向かう者達からもたらされたのであるから、当然である。

それに、もしハズレであっても、そのハンター達の目的であったもの、つまり岩トカゲと、岩山の頂上に生えている薬草、『岩山頂上草』が採取できる。

……しかし、もう少し、何というか、名前に配慮して貰えないものか、とマイルは思っていた。

「2時の方向、30メートル。岩トカゲ1、中型!」

「狩るわよ! メーヴィス、マイル、突撃用意! ポーリン、凍結魔法を詠唱、その後ホールド!」

「「「了解!」」」

マイルの索敵報告に、迅速に指示を出すレーナ。もう、慣れたものである。

前回の大量に狩った時に続き、既に今回もかなりの数の岩トカゲがマイルのアイテムボックスに収納されている。これで、受けた依頼が不首尾に終わっても、赤字になることはない。

岩トカゲをさっさと片付けて再び頂上を目指していると、またマイルが報告した。

「12時半、え……、ご、ゴーレムです! 数、3!

そうか、岩トカゲがいるのだから、前回の例から考えて、ゴーレムの存在も予想しておくべきでした……」

「「「え?」」」

マイルの言葉に、ぽかんとするレーナ達3人。

そして、メーヴィスが恐る恐る尋ねた。

「マ、マイル、この場所の名前を知っているかい?」

「え? はい、知っていますけど……」

「じゃあ、言ってみなさい」

レーナが、こめかみを揉みながら、しかめっ面で言った。

「はい、確か、『ゴーレムの岩山』、……あ」

戦う前から、激しい疲労感に襲われる3人であった。

どこん!

がしぃ!

めきょっ!

終わった。

岩肌の地面に転がる3体のロックゴーレムは、皆、脚部を破壊されていた。そして、腕を使って這いずるそれらの頭部をマイルとメーヴィスが剣で突き刺すと、完全に動きを止めた。

「やはり、頭部の眼と聴音器官らしきものを破壊すると、動かなくなりますね。活動に致命的な部分じゃないと思うのに、どうしてかなぁ……」

マイルは首を傾げるが、他の3人は、そんなことは全く気にしていなかった。

「何してるのよ、さっさと行くわよ!」

「は、はい!」

その後、岩トカゲやロックゴーレムを倒しながら岩山の頂上を目指していた『赤き誓い』の4人であるが、マイルとレーナは、何か違和感を覚えていた。

「……見られてる?」

マイルの言葉に、こくりと頷くレーナ。

メーヴィスとポーリンは、そっちのカンは今ひとつなので、きょとんとしていた。

「変ね。ギルドで聞いた話だと、顔を隠した怪しい連中が、数組に分かれて何やらごそごそと怪しい行動をしている、ってことだったでしょ。ハンターに出会うと慌てて逃げる、って。

見張りとかの話は聞いてないわよ」

「……向こうの活動の段階が進んで、状況が変わった、とか?」

レーナに、そう返すマイル。

「だから、どうしてこういう時だけ頭が回るのよ!」

レーナの叫びに、うんうんと頷くメーヴィスとポーリン。

「し、失礼な! ハンター養成学校でも、私、座学の成績は皆さんより良かったでしょうが!」

「そ、そりゃ確かに、そうだったが……」

納得がいかない、という顔のメーヴィスとポーリン。

そして、あからさまなその表情に、頬を膨らませるマイル。

「納得がいかないのは、こっちですよ!」

ポーリンが何とかマイルを宥め、話を戻す4人。

「じゃ、こうしていても埓があかないから、やりますよ?」

「お願い」

レーナに確認し、何者かに見られているのを想定して、ポケットから出した振りをしてアイテムボックスからスリングショットを取り出したマイル。

ポケットの大きさとスリングショットのサイズが合わないが、深く考えてはいけない。

そして同じくポケットから出した鉄球を 弾受け(パッチ) に挟み、素早く発射した。

いくらでも拾える小石ではなく、わざわざ作った鉄球を使用したのは、小石だと形が 歪(いびつ) なため命中精度が大幅に低下することもあるが、もし威力が強すぎた場合、命中と同時に割れたり砕けたりしたら大惨事になってしまうからである。鉄球ならば、急所さえ外せば、めり込むか貫通するだけで済む。

バシッ!

「ぎゃああぁ!」

命中した。

どうやら、鉄球は貫通したらしい。

貫通は、別に酷いことではない。下手に体内に残るよりは、その方がずっとマシである。もし鉄球が体内に残った場合は、肉体を大きく切り裂いて取り出さなければならないのだから。

勿論、急所は外してある。

これは、『赤き誓い』が一方的に先制攻撃を行ったように見えるが、この世界では、近距離で物陰に隠れて偵察行為を行うことは、奇襲攻撃の意図あり、として、攻撃されても文句は言えない。

何しろ、奇襲攻撃を受ければ、圧倒的に不利なのである。その兆候があれば全力で叩き潰すのが当たり前である。「攻撃を受けてからでないと反撃してはならない」、「正当防衛としての要件を満たすまでは」とかの寝言を言う者は、すぐに死ぬ。そうでない者は生き残る。

なので、世論がどちらに軍配を挙げるかは言うまでもない。死者は意見を表明できないのだから。

偵察していただけで害意はなかった? いや、隠れて偵察をしている時点で、充分敵対行動なので、倒すか捕らえて問題ない。

「さ、捕らえて尋問を……」

「動くな!」

「フレイム!」

「なっ! 魔法障壁!」

後ろから突然掛けられた制止の声に、すぐさま炎魔法を放つレーナと、慌ててそれを防ぐための障壁を張る不審者。炎魔法は物質化した氷が飛んでいく氷槍とは違うので、防御魔法で防ぐことができる。

そして、なんとか魔法障壁を張るのが間に合ったリーダーらしき男が、魔法を放ったレーナに向かって叫んだ。

「い、いきなり攻撃するとは、どういうつもりだ!」

そう言って怒鳴る不審者達は、男性の4人組であった。『赤き誓い』と同人数であり、皆、フードを被っている。

皆、一見、人間のようだが、そのフードをぴょこんと押し上げている、2つの突起物らしきものの存在。

((((ケモノ耳か! バレバレだよ!))))

あの発掘現場の獣人達は、ケモノケモノした、何というか、直立歩行する動物、というか、変身後の狼男、というような者が大半であったが、中には、幾分人間に近い者もいないわけではなかった。

そして、宿屋のファリルちゃんを見たばかりのマイル達は、騙されることはなかった。

人間達に獣人だとばれないよう、隠密行動の者達には人間に近い外見の者、おそらく人間の血を濃く受け継いだ混血の者を選んだのであろう。

「何言ってるのよ、当たり前でしょ! 至近距離に潜んでの偵察行為に、突然の襲撃。『動くな』っていうのは、お前達を捕らえる、という宣言じゃない。誰が黙って従うって言うのよ。

何なら、一緒に王都に行って、警吏に申し出る? 私達はそれで全然構わないわよ」

「う……」

レーナの詰問に、言葉に詰まるリーダーらしき男。

「どういうつもりで私達を襲ったのか、正直に話して貰おうじゃないの。でないと、盗賊として討伐することになるわよ」

「なっ! 俺達を盗賊呼ばわりだと! 人間共め、何という侮辱……」

「馬鹿、黙れ!」

レーナに反論する男をリーダーが慌てて制止するが、もう遅い。既に、自分達が人間ではないということを白状したも同然である。まぁ、その頭のフードの出っ張りがある時点で、最初からバレバレなのであるが。

「何か、前にも聞いたことのある遣り取りですねぇ……。

まぁ、他国で皆さんのお仲間が遺跡を調査しているのを見掛けましたから、大体のことは分かっていますから。

それに、皆さんのそのフードの出っ張り。バレバレですよ。暑苦しいから、めくったらどうですか?」

「き、貴様達、どこまで知っている!」

最早正体を隠すのは諦めたのか、マイルの言葉に、そう言いながらフードをめくるリーダー。それを見て、他の3人もフードをめくった。やはり、耳を覆われていては音や言葉が聞き取りにくいし、耳を圧迫されていては不快感が……、とマイル達が考えていると。

めくられたフードの下から現れた、つの、ツノ、角……。

「う、牛獣人!」

思わずそう呟いたマイルに、男達が同時に叫んだ。

「「「「魔族だあああぁ~! 獣人じゃねえええぇ!!」」」」

「え?」

「「ええ?」」

「「「えええええ?」」」

魔族と獣人は友好的だと聞いていたが、どうやら魔族は獣人と同じに見られるのは我慢ならないらしい。人種問題というのは、実に難しい……。