軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

119 説明

夜明け近くにようやく眠り、やや遅い目覚めとなった『赤き誓い』の面々は、ラストオーダーぎりぎりで朝食を摂った後、ギルドへと向かった。

ポーリンの機嫌はとても悪く、眼はまだ赤かった。

昨夜はあれから、ようやく少し落ち着いたポーリンをみんなで必死で宥め、話し合いをした。

「どうして私を置いて行くのですか! あの時も、そして今回も! 私は、私は要らない子なんですかあああぁっ!」

「「「しいいいいいぃ~~っ!」」」

壁の薄い安宿で、真夜中に大声で叫ばれては堪らない。

他の部屋から苦情が、という意味ではない。

多分、苦情は来ない。

その代わり、目を覚ました他の宿泊客全員が、壁に耳を押し当てて、興味津々で聞き耳を立てているのは間違いない。良くも悪くも、『赤き誓い』は結構有名であり、その揉め事の情報となれば、仲間内での話題を独占できる。

マイルは、慌てて遮音結界を張った。

いつも温厚で、にっこり微笑んで悪だくみをするポーリンが見せた激情に戸惑う、レーナ達3人。

自分がその立場になれば逆上するだろうに、「ポーリンだから」と安易に考えてしまったのは、まだ15歳に過ぎないポーリンに過大な期待をしていたからか、それとも自分達の若さ故の浅慮によるものか……。

「い、いえ、別にポーリンを置いていったってわけじゃないわよ! ただ、マイルがひとりで逃げ出そうとしているのに気付いたから、仕方なく、私がついて行ってあげようとしただけなのよ。マイルひとりじゃ心配だから……。

そうしたら、たまたまメーヴィスも同じように気付いていたらしくて、ふたりともそれぞれ別個にマイルを待ち伏せしていただけで……」

「そして、そのまま旅立とうとしていましたよね、ふたりのその恰好から見て! どうして私に教えてくれなかったのですか! 気付かなかった私が悪いのですか! どうなんですか!!」

「「…………」」

マイルは、他人の振りをしていた。

自分は平等に3人共置いて行こうとしたのだから、責められる筋合いはない、と安心して。

人、それを「油断」と言う。もしくは、「希望的観測」。

ポーリンの顔が、ぎぎぎ、とマイルに向けられた。

「どういうことですか。吐きなさい。洗い 浚(ざら) い、吐きなさい!」

「はいいいいいぃ!」

……吐かされた。洗い浚い。

「実は私は、他国の貴族家の出身で、後継者問題で家を追われ……」

「「「それは聞いた」」」

「王族にも目をつけられ……」

「「「それも聞いた」」」

「人並み外れた魔力と、魔法に関する知識があって……」

「「「知ってる」」」

「え……」

結局、マイルがこの世界の誰にも絶対に話すつもりがない転生と神様のことを除けば、魔法の根幹的な解説以外、隠し事は殆どないのであった。

「……で、古竜達の本当の目的が気になって……。

でも、結果が現れるのが何百年先のことかも分からない古竜達の計画に、私達がどうこうしても始まらないし、自由気ままな旅のついでに、暇潰し代わりに時々確認しようかな、ってくらいの、軽い気持ちで……。

こんな適当な、あてのない流浪の旅に、家族や目的のあるみんなを誘うわけにはいかないから、パーティの資産を置いて、ひとりで行こうかな、と……」

マイルの説明に、メーヴィスは納得したかのようであったが、レーナは追及の手を緩めない。

「それだけ? 本当にそれだけなの? 他にもあるでしょ、目的が!」

「は、はい! 途中、どこかでいい男を見つけたら、そこに根を下ろして、幸せな生活を始めるつもりでしたあぁ!!」

完全に全てを吐かされて、もう、胃液も出ないマイルであった……。

「明日、王都を離れます」

「あ、はい。どの依頼をお受けになるのですか?」

「いえ、依頼で出掛けるのではなく、各国を巡る旅に出るつもりです」

「「「「えええええええ~~っっ!!」」」」

メーヴィスの申告に、受付嬢のレリアだけでなく、何とはなしに聞いていたハンターや他のギルド職員達が大声を上げた。

「な、なっ、な……。と、とにかくこちらへ! ギルドマスターとお話しして戴きます!」

4人は、いったんギルドマスターの部屋の前で待たされ、レリアだけが先にはいって説明。その後、部屋へ招き入れられた。

「どういうことだ! お前達は、ハンター養成学校を出ただろう! 税金を使って、無料で学校に行かせて貰った代わりに、最低5年はこの国に所属して活動するという決まりだろうが!!」

口角泡を飛ばす勢いで怒鳴る、ギルドマスター。

「あ、ハイ。そうですね」

「そうですね、じゃねえぇ! 知ってるなら、どうして旅に出るんだよ! 国内ならまだしも、どうして国外なんだよ!」

マイルの軽い返事に、ますます激昂するギルドマスター。

しかし、それに対して、マイルが理路整然と説明した。

「はい、確かに『5年間は、この国に所属して活動する』という決まりですよね。だから、それはちゃんと守りますよ」

「……え?」

「だから、私達はあくまでも、『ティルス王国の、ハンターギルド王都支部所属』ですよ。ただ、長期間、遠方に遠征するだけです」

「な……」

「ハンターが、護衛依頼や傭兵、稀少物採取等で他国に行くのは普通のことですよね。そしてその際、小遣い稼ぎで現地の仕事を請け負ったり、帰路も稼ぐため現地からの商隊の護衛依頼を受けたりしますよね。それと同じですよ。

私達『赤き誓い』は、あくまでも、ここ、ティルス王国王都支部所属。ただ、長期間の仕事に出て、そのまま現地の依頼を次々と受けたため帰りが遅くなった。ただ、それだけのことですよ。

だから、ハンターとしての記録書類もこの支部に置いたままにしますし、時々戻って来ますよ。メーヴィスさんやポーリンさんの実家もあるんだし」

「く…………」

その後、かなり揉めたものの、遂にギルドマスターが折れた。

その話し合いの途中で、マイルが「じゃあ、明日からの仕事は角ウサギ狩りだけにしましょうか。このあたりの角ウサギが絶滅するまで」と言ったこととか、レーナが「岩トカゲを300匹くらい狩ってくる、というのはどうかしら。相場価格でギルドに20匹くらい売って、その後すぐに半額くらいで残りを市場に流したりして……」と言ったこととかが関係したかどうかは、定かではない。

「後は、宿への説明ですね……」

「ああ……」

マイルの言葉に、メーヴィスが憂鬱そうに頷いた。レーナとポーリンの表情も暗い。

女将さんと大将はいい。結構ドライだし、商売だと割り切っているだろうから。

問題は、レニーちゃんであった。

泣き喚かれる。

皆、そう思っていた。

そしてみんなの心の中は、こんな感じであった。

どんよりどよどよ