軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

116 悩み

マイルは、悩んでいた。

これからどうしようか、と。

あの、遺跡の絵。

あれは恐らく、神様が言っていた『先史文明』の様子を描いたものだ。

本人達の手によるものか、その子孫達、あるいはその伝承を受け継いだ者達の手によるものなのかは分からないが。

そして、今になって遺跡の調査を始めた古竜の一族。

研究? 古竜に、人間の歴史、それも大昔に滅び去った文明の歴史を研究するような酔狂な性質があるのか? 本当に、考古学や歴史学を研究しているのか?

1匹2匹なら、古竜にも物好きがいてもおかしくはない。

しかし、一族を挙げての調査。銅貨1枚の得にもならず、自分達の歴史というわけでもないのに……。

そして、考古学や歴史学であれば、あの絵は貴重な資料となるはずだ。

少なくとも、『外れ』のひと言で無視して良いものではない、絶対に。

ならば、真の目的は何か。

古竜が、一族を挙げて、しかも獣人や魔族まで巻き込んで、各地で遺跡の調査を行う理由は?

まず簡単に思いつくのが、お宝探しである。

金・銀・パール、プレゼント。じゃない、金銀財宝である。

……しかし、古竜がそんなもののために一族を挙げて行動するか?

いや、確かに、地球のお話では、ドラゴンは財宝や光り物を好む、というものが多い。しかし、この世界では、そんな話は聞いたことがない。多分、地球のお話は、ドラゴンを倒す理由やモチベーションを上げるために付けられた設定に過ぎないのだろう。光り物を巣に溜め込むなどと、カラスじゃあるまいし……。

どうも、古竜が財宝狙い、という線は薄そうだ。

研究目的ではないのに、遺跡を狙う。

地球では、それは、良く言えば「トレジャーハンター」、悪く言えば「盗掘者」だ。

まぁ、この世界では、遺跡の所有者や管理者がいるわけではないので、「盗掘」にはならないのだろうけど。

で、学術調査や人間が財宝とみなす物には興味がないとすると、古竜達は、いったい何を求めているのか?

……決まっている。

多分、遺物だ。

それも、宝石や芸術品とかではなく、『使えるもの』。つまり、技術的遺産。

そんな大昔のものが使える状態で残っているのか、とは思うが、何らかの情報の形であったり、もしかすると真空保存、時間停滞フィールド、そして私のアイテムボックスのように異次元で保管する等、地球を遥かに超えた文明であれば、何があってもおかしくはない。神様(自称)達は簡単に実現しているのだから。

しかし、なぜ古竜がそんな物を探す? 今現在、世界最強と言われている古竜が、どうしてそんな物を欲しがる? それに、古竜はマイペースの生き物であり、世界征服を考えるようなメンタル性はないはずだ。

分からない……。

あまり頼るのは良くないけど、仕方ない。ここは、ちょっとだけ聞いてみることにしよう。

(ナノちゃん?)

『はい!』

(古竜達の目的って、知ってる?)

『はい』

(何?)

『それは、禁則事項です』

(え……?)

ナノちゃんに、拒否された?

『我々は、生物の思念波を受信することにより、強く放射された考えを読むことができます。普通の思考は読むことができませんが。それでも、その生物の、ある程度の意図は判断できます。

また、実際に言葉に出されたことは、我々の任務に拘わることはネットワークに流され、そうでないことは、それを聞いた者のメモリに残るだけとなりますが、他のナノマシンからの問い合わせがネットワークに流れた場合、それに対して情報提供を行います。

なので、その件に関しましても、問い合わせれば、古竜の里にいるナノマシンから、見聞きした何らかの情報が得られるでしょう。但し……』

(但し?)

『禁則事項に抵触しなければ、の話です。そして本件は、完全に抵触しています』

(これって、そんなに重大なことなの?)

『重大かそうでないか、ということは関係ありません。

我々は、特定の種族や勢力に肩入れすることは許されておりません。精々、気紛れで特定個体の危機を救う、くらいが自由裁量の限度です。

我々の任務は、受信した思念波の望みを叶えることです。それが善人のものであろうと、悪人のものであろうと。そして、その内容が、良いことであろうと、悪いことであろうと。

我々はあくまでも道具であり、自分の意思で何かを為すことはありません。包丁が、料理に使われようが、殺人に使われようが、それは別に包丁の意思ではないのと同じように。

なので、特定種族の情報を、他の者に教えることはできません。探知魔法で敵の位置を確認する、というような、単純な魔法行使の結果等は、また別の話になりますので、問題ありませんが』

(そうなんだ……)

その説明に、納得した。

そりゃそうだよね。でないと、レベル3になってナノちゃんとお話ができるようになったら、敵味方に関するあらゆる情報が全て教えて貰える、なんてことになると、世界征服なんか、簡単にできてしまう。さすがに、それはないだろう。

仕方ない、自分で考えるか。

(ありがと。後は、自分で考えるよ)

『お役に立てず、申し訳ありません』

さて、どうするか……。

私には、何の義務もない。

古竜が何を探していようが、それで何をしようと考えていようが。

でも、何か、モヤモヤする。

それは、ヒト種側で状況をある程度理解しているのが私だけ、ということのせいか。それとも、古竜と張り合えるのが私だけ、というせいか。それとも…………。

古竜達は、争いを望んでいるようには見えなかった。人間達に邪魔されたくなかっただけで、案外、平和的な目的なのかも知れない。

また、今回は3頭の古竜を相手にして何とか張り合えたけれど、あの3頭は、所詮は下っ端の使い走り、見習いの若者、そして物見遊山のお嬢様だ。本当の古竜の戦士、しかも一族丸ごと、とかを相手にして、何とかなる保証は全くない。

平凡な、普通の女の子としての幸せを求めているだけの私が余計なことに関わっても、却って混乱を引き起こし、互いが不幸になるだけのような気がする。

せっかく、仲間が、お友達ができたというのに……。

それに、この世界の未来は、この世界の者達が創り上げるべきだろう。異世界の知識を持った異分子が変に手出しをして掻き回すことなく。

しかし。

『そのため大失敗と判断され、だれも面倒を見ずに放置されてしまった世界なんですよ……』

『我々も少し責任を感じてはいるのですが』

神様は、確か、そう言っていた。

大失敗の世界。神様達の誰も面倒を見ず、投げ出された世界。

この世界は、たとえ危機に瀕したとしても、『神の救い』はない。