軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

34.試された心

リカルド様は何を言っているの?

「申し訳ありません。私は同時にいくつもの事をこなせる程器用ではありません。そのお返事はすべてが落ち着いてからにさせて下さい」

何故だろう。すごく腹が立った。

ずっと尊敬しているリカルド様なのに。

「……悪かった、邪魔したな」

そう言って立ち去る姿に飛び蹴りを決めたくなった。さすがに我慢するけど。

さっきの質問は何。

まさか、リカルド様は……私を好きだった?

こんな時じゃなければ喜べたかもしれない。

……なぜ今なの。

ううん、命が 懸(か) かった今だから、なのかな。

でも、それなら私は愛の言葉が欲しかった。

それなのに、なぜ卑怯な聞き方をするのよ。

上司と部下という関係のまま、あなたの親友を使って私の心を試したことが許せない私がおかしいのか。

……こんな気持ちのまま出発したら駄目な気がする。もう一度話をしなきゃ。

リカルド様を探していると、困ったことに兄と一緒だった。タイミングが悪いな。

「ルシア」

私に気が付いたリカルド様が気まずそうに私の名前を呼ぶ。

「兄様、ごめん。5分だけリカルド様を貸してちょうだい」

「……3分な」

うわ、短くしたな?何よ、その嫌そうな顔は!

この非常時に色恋沙汰かよ、みたいな顔をしないで。

「ありがと。リカルド様いいですか?」

「……あぁ」

兄が去り二人きりになる。リカルド様といて、こんなに気まずいのは初めてだわ。

「時間がないのではっきり言います。先程の質問は不愉快でした。

私達は特別な関係でしたか?私が鈍かったのかもしれませんが、本心を伝えずに私のことを試さないで」

「……悪かった。もう会えないかもしれないと思ったら……違うな。アルフォンソの為に頑張ろうとする君を見て不安になった」

あなたの親友なのに?アルフォンソ様を信じて戦おうと決めたことがダメだったというの?

「私はあなたともアルフォンソ様とも将来の約束などしておりません。

そして今は誰ともそういったお約束をする気はありません。申し訳ありません」

私はそんなに器用ではない。今考えることは、恋愛じゃない。心にそんな余裕がない。

「……わかった。では、必ず無事に帰って来てくれ。その時に俺の気持ちを伝えてもいいだろうか」

「はい。絶対に全員無事に戻ってきますよ。リカルド様もお気をつけて」

「ああ。君もな」

振られたばかりの、若干行き遅れの私なんかが辺境伯に思いを寄せられるなんて、本当は喜ぶべきことなんだろう。

ここでもっと可愛らしい女になれたらよかったのかな。

あなたの気持ちが嬉しいと微笑んで……アルフォンソ様が追放されてもあなたを選ぶと伝えればよかったの?

親友の不幸より、惚れた女が自分を選んでくれることを本当に嬉しいと思うというのか。

……ううん。リカルド様はそこまで考えて質問したわけではないのだろう。

ただ、自分を選ぶと言って欲しかっただけで。

恋とは理屈ではなく、何をおいても好きな相手を選ぶということなのかな。

ああ、セシリオの求めたものと同じなのかもしれないわね。そして、やっぱり今もそうやって考えることが出来ない私は……

「可愛げの無い女でごめんね、リカルド様」

「るーちゃんとあるはおでかけなの?」

「うん、お城に忘れ物をしちゃったから取りに行くんだ。私ひとりだと危ないからルシアが付いて来てくれるんだよ。ごめんね?」

「だいじょぶ!るーちゃんやさしいもんね」

「ありがとう。帰ったら一緒に遊びましょう」

ラファをぎゅっと抱きしめる。必ず守るからね。

「それじゃあ、行ってきます!」

そこからは本当に強行軍だった。休憩の時には足がガクガクしてしまうほどだ。

「ルシアは出来るだけ体力の回復に努めて。こちらのことは何も手伝わなくていい。じゃなくて手伝ったら罰ゲームだよ」

アルフォンソ様から謎の命令をされ、火の番や食事の準備等、何一つさせてもらえなかった。もっと体力を付けよう。

「殿下!よくご無事で!」

カハールのご両親は彼に似ず、優し気な方達だわ。殿下の訪れをとても喜んでくれた。

私達も久しぶりの美味しい食事とお風呂をいただき、本当に感謝しかない。

明日、宰相閣下に会う。お会いするのは初めてなのよね。カハールがいらんことを伝えてないといいけど。

「おう、ルシア。まだ起きてたのか」

「ガランさん」

「お前は本当に根性あるな。よくここまで弱音を吐かずについてきたよ。ありがとうな」

「まだこれからですよ」

「まぁな。ルシアは全部終わったらどうするんだ?そのまま研修続行か?」

「どうでしょう。国がどうなるかで変わりそうですよね」

きっと私の研修どころではないだろう。クラウディア様が無事かどうかでウルタードの対応も変わるだろうし。

「このまま永住しちゃえばどうだ」

「……どういう意味で言ってます?」

「お!なんだ、その反応。リカルド様もやっと告白したのか?おめでとさん!」

何だコレ。もしかしてリカルド様の気持ちを知らなかったのは私だけとか言わないよね。

「……告白はされていません」

「え、じゃあどうやって気付いたんだよ」

「教えませんよ!」

恥ずかしい。私ってそんなに鈍いの?

そういえば以前アルフォンソ様に、新しい恋に気づいたら?って言われたわ。まさかアレはラファじゃなくてリカルド様のことだったとか言う?

いや、分からないわよ。そんな対象として見てなかったもの。優秀な上司。これ一択だった。

だって辺境伯なのよ?男爵令嬢の相手じゃないでしょう。そんなリカルド様はまさかのアルフォンソ様にヤキモチ焼くし。……アルフォンソ様は本当に王子じゃなくなるのかな。

「おい、大丈夫か?」

「あ、駄目ですね。やっぱり今は恋愛関係を考えるのは無理みたいです」

「そりゃそうだな。全部終わったらの楽しみにしておくわ」

いや、なぜあなたが楽しみにするの。