軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第73話 結婚したのかもしれん

濃霧が立ち込める地下13階を進み、新たな転移トラップを発見した俺たちは、一気に地下18階へ。

さらに次の転移トラップを探し回った。

複数台のドローンはこの視界が悪い中でもしっかりと後をついてきている。

〈やっぱニシダじゃん〉

〈ケンちゃんネルじゃないのに何でニシダが?〉

〈おーい、ニシダー、聞こえてるー?〉

〈向こうは気づいてないっぽいな〉

〈これ違法じゃね?〉

〈かもしれん〉

〈通報はやめろよ? 見れなくなるし〉

〈あー、確かに〉

〈悩ましい〉

〈変な正義感で動くなよ。視聴者数30人もおらんし、すぐにはバレないはず〉

〈ちょっとずつ増えてるけどな〉

〈まぁ消されるまでは見ようぜ〉

〈お前ら拡散したりすんなよー?〉

〈しかし何でこんなに映像が悪いん?〉

〈霧だろ。確かダンジョンによってはこういうところがあるらしい〉

「っと、その先、落とし穴だ」

「えっ、あ、ありがとうございますっ」

俺が指摘すると、メルシーズのサブリーダー、二宮アンナが慌てて回避した。

「探知スキル持ってるうちより早く気づくなんて! うちの面目が!」

五条皐月が頭を抱える。

「もしかして西田さんはスキルをお持ちなのですか?」

聞いてきたのはメルシーズのリーダー、一ノ瀬新之助だ。

「一応持ってはいるが、あまり使わないな。今もまったく使用していない。燃費のあまりよくないやつで、無駄に体力を消費してしまうんだ」

「では純粋なプレイヤースキルでトラップを見破ってるってことですか? こんなに視界が悪いのに……。一体どうやっているんですか?」

「むしろ視界に頼るからダメなんだ。目で見ようとせず、気配を全身で感じるんだ」

「気配を全身で感じる……えっと、分かるような分からないような」

まぁ魔物よりトラップの方が感知するのは難しいから仕方がないか。

〈誰か分かるやつおる?〉

〈分からん〉

〈分からん〉

〈分からん〉

〈うん、分からんなw〉

〈ニシダと一緒にいるのは誰だろ。割と大人数だな〉

〈外人っぽい女もおる〉

「はぁはぁ……き、霧がさらに深くなってきましたね……」

「そうだな」

「……そ、それにしても西田様、さすがに少しペースが速いような」

呼吸が荒くなってきている飯島氏に指摘されて振り返ると、メルシーズのメンバーたちが疲労感のある顔でぶんぶんと首を縦に振っていた。

どうやら少し飛ばし過ぎたみたいだな。

さすがに天童奈々とエルザのSランクコンビは余裕そうだが。

「悪い。軽いジョギング程度のつもりだったんだが」

「どこがですか!? 多分ずっと時速50キロくらいは出てたと思いますよ!?」

〈ニシダ怒られてて草〉

〈どこ探索してるんやろ〉

〈新宿歌舞伎町ダンジョンじゃね?〉

〈ほんとだ。ダンペディアに下層は霧で視界が悪いって書いてある〉

〈門山碧が行方不明になってるとこ?〉

〈それだ。もしかしてその救援に向かってるとか?〉

〈有り得るな〉

〈てか、一緒におるの天童奈々だろ? 和解したんか?〉

〈結婚したのかもしれん〉

〈展開早すぎだろwww〉

「はくしゅんっ! ……ちっ、誰かあたしの噂でもしてやがるんじゃねぇだろうな?」

「噂、ですの?」

「いや、日本には誰かに噂されると、くしゃみが出るっつー迷信があるんだよ」

……うーむ、俺もなんかさっきから鼻のあたりがムズムズするような?

仕方なく少しペースを緩めつつも、転移トラップを見つけ、俺たちは深層へと突入した。

地下24階くらいか。

あれだけ周囲を覆っていた濃霧がすっかり晴れて、上層のような洞窟が続いている。

ただし広さは上層の比ではない。

〈見やすくなったな〉

〈やっぱ天童奈々がいる〉

〈あの外国人美女、どっかで見たことあるんやが〉

〈ニシダに冤罪吹っ掛けた女じゃね?〉

〈それだ! 何で一緒にいるんだ? 和解したのか?〉

〈結婚したのかも〉

〈ニシダ結婚し過ぎで草〉

さらにこのダンジョンの深層には大きな特徴があって、

「壁や床がキラキラと光ってますわね?」

「あれは水晶だ。新宿歌舞伎町ダンジョンの深層は、水晶が無限に採掘できる場所だからな。もっと下階に行くと水晶だらけだぞ」

「あ、あなたには聞いてませんわよ!」

エルザに理不尽な怒りをぶつけられつつ、さらに転移トラップを探しあてて地下30階へ。

『……素晴らしい探索速度です。ここまでにかかった時間は僅か一時間半。門山碧が率いるパーティでも、最速で8時間はかかっていたのですが……』

〈さすがニシダやな〉

〈やっぱ門山碧の救援チームっぽい〉

〈ドローンから聞こえてくる声は誰やろ?〉

「ちょうどキリよく30階に飛べてよかった。ここでいったん転移トラップ法は使えなくなるから、階段を降りなければならない」

「そうなんですか?」

首を傾げる一ノ瀬新之助に、俺はこの新宿歌舞伎町ダンジョン特有のとあるルールを説明する。

「実は地下30階に中ボスがいるんだ。そいつを倒さないと先に進めないみたいで、転移トラップ法でも回避できない」

少々面倒だが、ダンジョンのルールなので従うしかない。

「ええと、ボスの場所は……多分こっちだな」

『正解です。……ナビゲートの必要、ありませんね』

やがて辿り着いたのは壁にめり込む巨大な水晶。

その根元辺りにあった両開きの扉を抜けた先に待ち構えていたのは、

「メエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」

バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリッ!!

白い体毛に猛烈な電気を帯びた巨大な一体の羊だった。

「あの美味しそうなマトンがこのダンジョンの中ボス、ライトニングシープだ」

〈マトンwwwww〉

〈ジンギスカンだ!〉

〈食材キタアアアアアアアアアッ!〉