軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第53話 キッチンザムライって呼ばれてるらしい

「「「ギョギョーーーッ!?」」」

半魚人の魔物サハギンの群れをまとめて片付けつつ、俺は多摩川ダンジョンの地下一階を進む。

〈サハギンは食えないのかな?〉

〈食えても食いたくないだろw〉

〈見た目がなぁ〉

〈人型はちょっと……〉

〈サハギンは水棲ゴブリンって言われてる魔物だしな〉

〈ミノタウロスとかオークも人型だろwww〉

「サハギンはあんまり美味しくないですね」

〈食べたことあるんかいwww〉

〈さすがニシダ〉

〈なぜ食べようと思ったw〉

〈お腹は壊さなかった?〉

「最初に食べたのは俺じゃなくて友人ですよ。お腹を壊したりはしないです」

〈やばい友人がおる〉

〈だからって俺も食べようとはならんやろw〉

〈それな。俺なら絶対拒否する〉

〈同じ穴の狢だよニシダ〉

「とりあえず一気に下層――地下11階以降まで進もうと思っています。仮に上層や中層に食べれる魔物がいても、そこまで美味しくないんですよね。基本的に魔物は強ければ強いほど、美味しい傾向があるので」

〈なんそれwww〉

〈強いほど美味いんや〉

〈確かにオークよりハイオークの方が美味いらしいしな〉

〈オークの最上位種とかどんだけ美味いんやろ……じゅるり〉

そうしていつものように転移トラップを利用しつつ、どんどん地下へと降りていく。

「はい、どうやら下層にまでこれたみたいですね。見ての通り、道の大半が水没してしまっています」

目の前に広がるのは広大な地底湖。

水深もかなりありそうである。

〈こんなとこ探索するのか〉

〈正直怖いな〉

〈ニシダこれに潜るん?〉

〈ドローンどうすんだろ?〉

「はい、潜って魔物を探すつもりです。服を着替えないといけないので、いったんカメラを切りますね」

〈切らなくても自動でモザイク入るから大丈夫〉

〈そうそう、自動モザイクがあるし、そのまま脱げばOKよ〉

〈お前ら何で執拗にそのまま脱がそうとしてんだよwww〉

〈前にモザイク遅くて全世界にアレを晒す羽目になったの忘れたのかw〉

〈おっさんの生着替えなんて誰も見たくねーだろ〉

〈え? 見たいんやが?〉

「ええと、自動モザイクは信用できないので……」

しっかりとカメラをオフにしたのを確認してから、服を脱ぎ捨てて代わりに水着を着用する。

〈服を脱ぐ音……ごくり〉

〈なんかセクシーやなw〉

〈どんな水着だろうか……ワクワク〉

〈おいやめろ、煽られたらちょっと期待してまうやろwww〉

着替え終わったところで、カメラを再びオンに。

〈ラッシュガードやん〉

〈露出ほぼゼロ〉

〈なんか残念w〉

〈まぁ魔物と戦うんやからできるだけ肌の露出ない方がええやろ〉

なぜか期待外れみたいな反応をされたが、おっさんの水着に一体何を求めているのか。

「このドローンだと水中での撮影はできないので、専用のドローンに切り替えます」

水中ドローンを起動し、水の中へと放り込んでから俺は水中へと飛び込む。

「底の方は真っ暗ですね。かなり怖い」

ドローンが光を照らしてくれているが、それでも底までは見通せない。

〈こええええええっ!〉

〈よく平気でこんなとこに潜れるよな〉

〈向こうの方でなんかめっちゃデカい影が動いてね?〉

〈ニシダ気を付けろー〉

〈ってか、何で水中なのにニシダ喋ってんの?〉

〈ほんまや〉

「風魔法の応用で、顔の周囲を空気の膜で覆っているので。これのお陰で呼吸もできます。まぁ、一時間くらいは息を止めてられますけど」

〈一時間www〉

〈そんなに息止まってたらもう死体やんけ〉

〈どんな肺してんのやろ〉

〈なんかのスキルでもあるんじゃね?〉

ひとまず俺は水底まで泳いでみることに。

〈速っ〉

〈ニシダ泳ぐのも速いのか〉

〈魚じゃん〉

〈って、さっきのデカい影がこっちに向かってきてるぞ!?〉

奥の方から猛スピードで何かが接近してきた。

全長5メートルくらいあるサメの魔物だ。

〈リアルジョーズやん!〉

〈喰われるうううううっ!?〉

〈迫力ヤバ〉

〈ニシダじゃなかったら安心して見てられんな〉

大きな口を開けて俺を丸呑みしようとしてきたが、その前に身体が真っ二つに割れた。

「エビルシャークというサメの魔物ですが、あまり美味しくないので食材にはできませんね」

〈瞬殺www〉

〈水中でもニシダはニシダだったか〉

〈なんで水中なのに包丁で戦えるんだ……〉

〈陸上でもおかしいけどな〉

さらにその後、クラゲの魔物やウミヘビの魔物に遭遇したが、いずれも食用には向かない魔物だった。

「お、底が見えてきましたね。砂が堆積しているみたいです。……ん? あれは……」

何かが光っていたので近づいてみる。

すると突然、左右の砂が盛り上がったかと思うと、巨大な壁が俺を挟み込むように迫ってきた。

〈トラップ!?〉

〈いや、貝だ!〉

〈ニシダ喰われるううううっ!?〉

「っと」

閉じようとしてくる壁……いや、貝殻を両手で抑えて止めた。

〈止めたwww〉

〈てか、何だこの貝の化け物?〉

〈シャコ貝みたい〉

〈あのビーナス誕生の?〉

「いえ、勘違いされやすいですが、ビーナス誕生の貝はシャコ貝ではなくてホタテらしいです」

〈へぇ〉

〈そうなんだ〉

〈よく知ってんなw〉

〈俺なんてシャコ貝もビーナス誕生も何か分からんのやが〉

〈わいもw〉

〈それより喰われそうになったのにニシダ冷静すぎだろ〉

「もちろん気づいてましたよ。この貝の魔物、美味しいので持って帰ろうと思いまして。デカいから割と可食部もあります」

〈美味いんだw〉

〈貝だからな。サメとかクラゲと比べれば全然抵抗ない〉

〈サメもクラゲも食べる地域はあるんだけどな〉

「あっちの方で大きなエビが歩いていますが、毒もあって美味しくないのでスルーしましょう。食べれなくはないですけど」

〈食べれはするんだw〉

〈毒あるのに……?〉

〈毒あるエビって珍しい〉

〈エビはエビでも魔物のエビだから〉

〈美味しくないと意味ないもんね〉

〈さすが料理人のこだわり〉

〈魔物もそんな視点で見られてるとは思ってもないやろなw〉

〈ニシダ海外勢からはキッチンザムライって呼ばれてるらしい〉

〈キッチンザムライwww〉

〈絶妙なダサさで好き〉

〈食材か、食材じゃないか。ニシダという生き方〉