軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第13話 礼儀を忘れない男

ダンジョンはより深い階層に行けば行くほど広大になっていく。

下層ともなれば、時にはちょっとしたドーム球場が数個分くらい軽く収まるほどの空間が広がっていることもあった。

〈こんな広いところ初めて見たぞ〉

〈さすが下層〉

〈この光景だけで満足度高い〉

〈広すぎて怖いレベル〉

〈それな〉

立飛ダンジョン地下13階。

樹木が生い茂るこの階で発見したのは、そうした巨大空間とそこに聳え立つ巨樹だ。

「あそこにマッドビーの巣がありますね。美味しい蜂蜜が手に入りそうです」

〈どこにある?〉

〈分からない〉

〈ニシダがあるって言ったらあるんだろ〉

〈いずれにしてもだいぶ高いところにあるはず。どうやって上るんだろ?〉

俺は巨樹に向かって走り出した。

「じゃあ上っていきますね」

〈ちょっ、ぶつかる!?〉

〈激突するよー?〉

〈タックルして巣を落とすつもり?〉

〈それは無理だろ〉

〈マジぶつかるって!?〉

〈あああああああっ〉

〈!?〉

〈は?〉

〈やばばば〉

〈垂直に走ってるうううううううっ!?〉

〈物理法則を超越してて草〉

俺は巨樹の幹を足場にして走り上っていく。

「壁走りです。慣れれば意外と簡単ですよ」

〈絶対簡単じゃない件〉

〈完全に無自覚系の発言で草〉

〈前方から魔物! いや上方?〉

〈でっかいクワガタ! カッコいい!〉

前に立ち塞がった巨大クワガタの魔物を蹴り飛ばし、やがて巣の近くの枝まで到達した。

〈クワガタ吹っ飛ばされて草〉

〈歩行者がトラックに激突されたような光景だったな。ただしサイズは逆〉

〈ニシダの行く手を邪魔したらああなる〉

〈それよりニシダ止まったけど、着いたのかな?〉

「あそこですね。かなり大きな巣です」

俺が指をさして示した先にあったのは、ちょっとしたマンションくらいの大きさの巣だった。

〈デカすぎワロタ〉

〈そりゃマッドビーって人間くらいの大きさあるらしいし〉

〈そんなにデカいのかよ! 怖い!〉

〈巣の周りにぶんぶん飛んでる。どうやって蜂蜜採取するんだろ?〉

「じゃあちょっと行ってきますね」

俺は枝の上を駆け、巣に近づいていく。

〈まさか正面から乗り込む気?〉

〈そいつは自殺行為じゃ〉

〈なんだろ、ニシダだから不安ゼロ〉

〈だよな。むしろなんかワクワクする〉

「あ、こっちに気づいたみたいです。マッドビーは巣を狙う相手には容赦をしない攻撃的な魔物なので、見つけても安易に近づかないようにしてください」

〈注意喚起を忘れない男〉

〈みんなは真似しちゃダメだぞ!〉

〈真似できんくて草〉

〈うわマジで大量に襲いかかってきた! 怖い!〉

「ちなみにマッドビー一体一体の毒自体はそこまで強くないです。ただ、レイピアみたいな毒針なので、何発も身体に喰らうと穴だらけになって死にます」

〈怖すぎ〉

〈確かに針めっちゃ長くて太い!〉

〈先端恐怖症の俺には辛い映像……〉

〈ていうかこんな大量の魔物、一人で捌けんのか?〉

俺は迫りくる蜂をひたすら包丁で斬り落としていく。

〈ニシダに近づく前にどんどん下に落ちていく……〉

〈逆に蜂が可哀そうになるレベル〉

〈爽快感ありまくり〉

〈こういう大量の敵をぶち殺しまくるの好き〉

〈わかる〉

「さて。あらかた倒し終わったようです。まだ巣の中に何体かいそうですが」

巨大な巣の上に着地すると、穴の一つから中へ。

「お邪魔します」

〈礼儀を忘れない男〉

〈不法侵入だろw〉

〈蜂さんたち逃げてー〉

〈マッドビーの蜂の巣に侵入するとか、ガチの貴重映像じゃん〉

巣の中は階層状になっていて、各層は六角形を隙間なく並べたハニカム構造をしている。

「このハニカム構造は、軽量なのに高い強度と剛性を持つので、色んな分野で利用されていますね。建築材とか緩衝材とか。あと車や航空機のボディなんかにも」

〈勉強になる〉

〈急に知識をひけらかしてきて草〉

〈定食屋にしておくには惜しい人材〉

そして六角形の部屋には黄金色の蜂蜜がたっぷり入っていた。

〈きれい〉

〈輝いてる〉

〈すげー〉

たまにマットビーやその幼虫がいたりして襲いかかってくる中、蜂蜜を採取していく。

「お、あそこに女王蜂がいますね」

〈でかっ〉

〈でけー〉

〈お邪魔してまーす〉

女王蜂は普通のマッドビーの十倍くらいの大きさがある。

「身体が大きい反面、動きが鈍くて戦闘能力はほとんどないです。倒してしまうと巣が消滅してしまうので、ここはあえて見逃そうと思います」

女王蜂が生きていれば、そのうちまた蜂蜜が採れるようになるからな。

〈無限蜂蜜生成機関〉

〈永遠に搾取し続ける気や〉

〈シテ……コロシテ……〉

〈ニシダに見つかったのが運の尽き〉

そうして十分な量の蜂蜜が手に入れた俺は巣を後にした。

「さて、良い感じで食材が集まったので、そろそろ地上に戻ろうと思います」

〈なに作るんだろ〉

〈手に入ったのは鶏肉と蜂蜜か。美味しそう〉

〈わくわく〉

〈食べたいなー〉

「そうですね、ハニーマスタードチキンでも作ろうかなと」

〈めちゃくちゃ美味しそう〉

〈大好きなやつ〉

〈コカトリス肉とマッドビーの蜂蜜だろ? 贅沢すぎ〉

〈他じゃ絶対食べられない〉

「詳しいことは配信終了後に告知させていただこうと思います」