作品タイトル不明
第109話 だから休めって定期
「というわけで、再び仙台にやってきました」
翌日、俺は函館から仙台に舞い戻っていた。
〈普通に始まったw〉
〈ニシダ働き過ぎで心配になる〉
〈どうやって仙台まで来たんだろ?〉
〈函館空港が動き出したのは昨日の夜のはず〉
〈キャンセル待ちしたんかな〉
〈また違法搭乗じゃね?〉
「途中から新幹線で来ましたよ」
〈北海道新幹線も止まってなかった?〉
〈そのはず〉
〈途中からとは?〉
〈新函館北斗駅からってこと?〉
「東北新幹線は動いていたので、新青森までは走っていきました」
〈間に海あるだろwww〉
〈津軽海峡を泳いだ?〉
〈狭いところでも20キロくらいあるんやで?〉
〈飛行魔法で飛んだんじゃね?〉
「いえ、津軽海峡を走りました。空を飛ぶよりも海を走る方が速いので」
〈ファッ!?〉
〈海を走ったwwwwww〉
〈やっぱ魔族を倒した英雄は違う〉
〈なるほど、走れば20キロ程度だし余裕余裕……なわけあるかーい!〉
〈そもそもニシダは空中を走れるからなぁ〉
さすがに硬い地面の上ほどは速く走れないが、それでも空中を走るよりはずっと速く移動できる。
まぁ海の上だと途中で休む場所もないし、疲れるのでなるべくやりたくはなかったが。
「他に早く仙台まで来れる方法がなかったので仕方ないです」
〈それなら仕方ないね(呆れ)〉
〈もう一日函館に留まるという選択肢は……?〉
〈お前は泳ぎ続けてないと死ぬマグロか〉
「さて、それでは今度こそ仙台城ダンジョンに潜っていきましょう。クラス7のダンジョンで地下35階までありますし、それなりに時間がかかりますからね。一応、今日の17時初の新幹線のチケットを取ってあるので、それまでに仙台駅に戻りたいです」
〈こいつ本気で明日は営業する気だ……〉
〈だから休めって定期〉
〈頑なに休もうとしない男〉
そうして俺は仙台城ダンジョンに入るため、受付窓口に行くと、
「ほ、本当に来た!」
「西田さんだ!」
「魔族を倒した英雄がっ……」
管理庁の職員たちに驚かれてしまう。
「昨日まで函館にいて、魔族と戦っていましたよね!? もう少し休んでください!」
「今やあなたはこの国の英雄ですよ! 自分の身体をもっと労わらないと!」
「せめてダンジョンに潜るのは明日にしてください!」
しかもなぜか必死に止められてしまった。
〈めちゃくちゃ説得されてて草〉
〈いいぞ職員さんたち!〉
〈もっと言ってやれ!〉
〈職員権限で入場を拒否するとかできるんじゃね?〉
「いや、明日からは店を営業しないといけないので」
「店の営業と自分の身体、どっちが大事なんですか!?」
「心配しなくても、そこまで疲れてないんで……大学時代にダンジョンの冥層に潜ってたときなんて、これより何倍もハードだったしな」
「もうあなた四十歳でしょう!? 若い頃とは違いますよ!」
「……それはそうだが、覚醒者だしなぁ」
覚醒者だからか、幸い年齢による衰えはまだ感じない。
ブランクのせいで少しステータスが落ちている感はあったものの、ここ最近色々とあったお陰で戻りつつあった。
〈そこらの四十歳と比べてはダメだろw〉
〈それでも休んだ方がいいのは確か〉
〈ポーションとかでどうにかなるのでは?〉
結局あれこれ説得を試みてくる職員を振り切るのに十分くらいかかってしまったが、どうにかダンジョンに入ることができた。
「ふう、余計な時間を使ってしまいました。急がないと」
〈職員さんたちの厚意がw〉
〈まぁ余計なお節介ではあった〉
〈ニシダを止めることなんて何人たりともできねぇよ〉
「さて、これで地下22階あたりまで来ることができましたね」
いつものように転移トラップを駆使することで、俺は深層の地下20階を越える階に辿り着いていた。
そこは見渡す限りの沼地が広がっている。
「仙台城ダンジョンの深層の大部分は、こうした沼地らしいです」
ぬかるみに足を取られやすく、探索が難しい環境だ。
泥の中に魔物やトラップなどが隠れていることもあるため、危険度も高い。
「まぁ水の上を走っていけば問題ありません」
俺は構わず沼の上を疾走した。
〈海の上すら走れるくらいだからなw〉
〈海と比べたら泥の方がよっぽど走りやすいんじゃね?〉
〈底なし沼もニシダには意味なしか〉
「おっ、魔物です。マウンテンフロッグですね」
〈でかっ〉
〈なにあの巨大なカエルは〉
〈マウンテンフロッグ……山みたいなカエルか〉
〈そのまんまなネーミングやな〉
全長二十メートル近い巨大なカエルである。
「大きいだけで動きは鈍重です。ただ、正面から近づくと高速で動く舌にからめとられて丸呑みされるため注意が必要ですね」
〈そう言いつつ正面から近づいていくニシダ好き〉
〈身体を張った注意喚起をしてくれるんやろ〉
バシュッ!!
「はい、こんなふうに」
高速で打ち出された舌を俺は横っ飛びで回避する。
〈速っ!?〉
〈想像より遥かに速かったわ……〉
〈てか、見えんかったんやが?〉
〈俺も〉
〈あんな勢いの舌を喰らったらそれだけで死ぬやろ〉
包丁で巨大カエルを両断しつつ、先へと進む。
「ちなみにあのカエルは意外と美味しいです。さすがに店では出せないので持ち帰りはしませんけど」
〈美味いんだwww〉
〈鶏肉に似た味って言われるもんな〉
〈さすがにカエル肉は抵抗ある……〉
〈ちょっと食べてみたかったな〉
〈キングサハギンみたく裏メニューで出してくれたらいいのに〉
「なるほど、裏メニューですか。需要がありそうなら、次に見つけたやつを持ち帰ってみましょう」