軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四十七話 魔力計発表、前編

アークスはクレイブやノア、そしてカズィと共に、魔導師ギルドを訪れていた。

来訪の目的は、魔力計に関してだ。

そう、今日この日この場で、公式に魔力計の発表が行われるのである。

といっても、発表は大々的なものではなく、内々のものだ。

国定魔導師や将軍たち、軍事面で重要な人物のみを集めた、ある意味秘密会議的なもの。

発表がそのような形式になった理由は、魔力計の持つ性質にある。

魔力計を使用する大きな利点は、魔法の習得を早めることだ。

それはつまり、一定以上の力量を持った魔導師を、短期間で輩出できるようになるということでもある。

それが直接的な影響を与えるのは、当たり前だが軍事方面だ。

魔導師が増えればそれだけ軍備増強につながるし、国軍所属の魔導師もまたその恩恵を受けられる。

それらのことを踏まえて。

魔力計を大々的に発表して、もしこれが市井に出回るということになったとしよう。

そうなれば魔力計はたちまち他国にも流れてしまい、王国のみでその恩恵を独占することができなくなる。

たとえ情報が漏れるのが時間の問題なのだとしても、秘匿の有無の差は大きい。

だからこその、重要な軍事物資扱い。

取り扱いはいまのところ国軍や魔導師ギルド、魔法医療に関連する施設のみとなったため、こうして限られた発表となったのだ。

発表の場所は、魔導師ギルドでは【藍の間】と呼ばれる一室だ。

ここは多人数での会議を行う際に用いられる部屋で、国定魔導師を集めた重要な会議を行う場合にも使用される。

室内は長方形で、窓なし。

床には刺しゅう入りの真っ赤な絨毯。

天井付近から垂れ下がったタペストリー。

柱にはいくつも、王家の旗が掲げられている。

部屋の真ん中にはガラス製、コの字型のミーティングテーブル。

その上に設置されるのは席次を示すネームプレート。

会議場としてよくイメージされるような場所を、中世ヨーロッパのお城風に味付けしたような内装であった。

室内にはすでに、ゴッドワルドとクレイブの呼びかけに応じた国定魔導師や国軍の将軍たちが揃っている。本来ならば他に重要な軍家の当主にも召集をかけるところなのだが、今回は前述の理由により厳選したものとなった。

そのため、パース・クレメリアの姿はあっても、ジョシュアの姿はない。

その辺り、ゴッドワルドとクレイブが考慮してくれたのかもしれないが。

(やっとここまでこぎつけた。長かったな……)

アークスは室内に設けられた簡易の待機場で、歓喜の震えに身を浸す。

制作と調整、さらに増産のため二年の時間を費やした。

もちろん年齢が年齢であるため、発表する時期も考慮に入れなければならず、慎重にならざるを得なかったが、幼い身としてはひどく長かったように思える。

ふと、隣にいたクレイブが声をかけて来る。

「なんだ? 緊張してんのか?」

「ええ。やはりこういう場ですし……」

すると、後ろにいた怖い顔もといギルド長ゴッドワルドが。

「アークス・レイセフト。楽にしていい。不備があれば我らがその都度対応する」

「あ、ありがとうございます。ギルド長」

「そもそも俺たちがお前以上にこれに詳しいわけはないんだがな」

「それもそうだ」

ギルド長は口元に小さな笑みを作って、クレイブの言葉に同意する。

……楽にしていいとは言われたが、やはり緊張をすべて取り除くことはできず。

「なに、そこまで気張らねばならないような面子ではない」

「ほら、見てみろよ」

クレイブの言葉に従い、パーテーションの脇から様子を窺うと、なにやら集まった面々はそれぞれ会話に興じている様子。

将軍たちは魔法関連と事前に聞いているためか、直接関わりないと思って静かなもの。

しかし、一部魔導師たちはしきりに話し込んでいる。

一見して年齢のわからない細身の男性魔導師。

紳士服を着た気品あふれる老魔導師。

気だるそうに背もたれに寄りかかり、手の中でクルミを持て遊ぶ魔導師。

白いドレスに身を包んだ、前髪の長い女性魔導師。

さながら魔女っ娘を思わせる三角帽子をかぶった少女魔導師。

みな、特徴があり、格好も個性的な面々だ。

そんな彼らに向けて、聞き耳を立てると――

クルミを弄んでいた男性魔導師が、大きなため息を吐く。

「めんどくせえなぁ……」

重要な人間ばかりが集まるこんな場所にもかかわらず、そんなことを憚らずに言えるのは、面の皮が厚いからなのか、なんなのか。

しかし、声には本気で面倒臭そうな雰囲気が滲んでいる。

すると、彼の正面に座ってた三角帽子の魔導師が、非難がましい半眼を向ける。

「そんなに億劫ならどうして来たのです?」

「だって溶鉄の旦那の仕切りだしよー。やっぱ出ねぇとマズいだろ?」

「誰の仕切りでも国定魔導師の会議には出ないといけないですよ。というか、どうしてそんなに面倒なのです?」

三角帽子の魔導師が訊ねると、クルミを弄んでいた魔導師が、やけに真剣な顔で答える。

「俺には今日、とてつもなく重大な用があるんだ」

「なんです?」

「睡眠」

「お前はいっぺん死ねです」

小さな口から放たれたのは、冷ややかな視線と言葉。

にべもない。

そんなやり取りがある一方、白いドレスを着た魔導師が、上座に座る男性魔導師に訊ねる。

「ローハイムさま。今日の発表に関して、なにかご存じなのではないですか?」

「ええまあ、それらしい話はギルド長からこまごまと聞かされていましたから」

「それは?」

「これから発表があるのですから、ここで私が説明することもないでしょう」

「そ、そうですね。申し訳ありません……」

白ドレスの女性の方は、野暮ということを指摘されたと深読みしたのだろう。

謝罪を口にして、やりすぎなくらいにペコペコと頭を下げる。

一方年齢不詳そうな男性魔導師は、やはりそこまでの意図はなかったらしく「謝らなくてもいいのですよ」と優しげな声をかけた。

すると、クルミの魔導師が、その男性魔導師に含みのある笑みを向ける。

「実は水車の大旦那も知らないとかじゃないですか?」

「ふふふ……」

返されたのは、真実をうやむやにしてしまうような含みのある笑み。

クルミの魔導師はその笑みで 煙(ケム) に巻かれてしまったらしく。

「なあ大旦那。ケチケチしないで教えてくれよ」

「水車様。こいつ絶対、聞いたら帰るなどと言うつもりです」

「あ? 当然だろ?」

「まあまあフレデリック君。今日の集まりは参加しても決して後悔はしませんよ」

「うぐ……」

さすがに上位者に諭されたためか、クルミの魔導師は押し黙る。

すると、今度は男性魔導師の対面に座っていた紳士服姿の老魔導師が口を開いた。

「なるほど。では、今回発表される研究は、それだけのものということであるのだな?」

「ええ。ですが、ガスタークス様はギルド長からお聞きになっていないのですか?」

「此度は新しい砦の設計が忙しく、それに加え弟子の育成もあったのでな。聞き耳を立てていられなかったのである」

老魔導師は次いで、隣にいた将軍の一人である、パース・クレメリアに声をかける。

「クレメリア伯はどうであるかな? アーベント卿とは縁もあろう」

「いえ。ロンディエル侯。今回のことは私の耳にも入ってはおりません」

「そうであるか……では今回の研究はかなり慎重に進められたのであるな」

「そうなのですかな?」

「うむ。こういった情報は必ず誰かに漏れているものである。研究に必要な物品を買い込み、書物を漁り、同じ国定魔導師の知恵を借りた際にな。それゆえ誰か彼かが知っているないし察している。だが、今回はそれが全くないのである」

パースや他の将軍たちも、「ほう」と感心したような言葉を漏らす。

「何かしている、ということも聞かなかった。ということは、秘匿にはよほど念を入れたのであろうな」

老魔導師はそう言うと、再度正面に座る男性魔導師に視線を向けた。

すると、男性魔導師は、

「発表されるのはクレイブ君ではない魔導師の研究のようです」

「うん? 溶鉄の旦那の呼びかけなのにか?」

「どういうことなのです?」

「まず発表を待ちましょう。どうやら準備の方が整ったようですよ?」

魔導師たちは聞き出そうとするが、場にギルド長が現れたことで、みな静かにならざるを得なかった。

ギルド長ゴッドワルドが、簡易の待機場から進み出る。

やがて彼は所定の位置に着くと、厳格な声を発して、その場にいる全員に謝意を示した。

「多忙な中、集まってくれた方々に、まずは感謝を申し上げる」

ギルド長が集まった面々を見回すと、場の空気が引き締まる。

ギルド長ゴッドワルドは国定魔導師のその筆頭だ。

居並ぶ将軍たちですら、彼を前に畏まっている。余裕そうなのは、紳士服の老魔導師と、年齢不詳の男性魔導師、そして将軍たちの中では最も高齢らしいパースくらいのもの。

そんな中、一人だけ、おかしな態度を見せている者がいた。

魔女っ娘風の三角帽子とローブに身を包んだ魔導師。

彼女の様子を不思議そうに眺めていると、ノアが耳もとで囁く。

あれは国定魔導師の一人、メルクリーア・ストリングだそうだ。

しかも、見た目少女にしか見えない背丈と顔付きだが、あれで二十代半ばなのだという。

そんな彼女は何故か、顔を両手で覆っていた。

「……メルクリーアよ。お前はなぜ顔を手で隠す?」

「ギルド長は顔が怖いのです。だからです」

「…………」

どうやら、顔が怖いというだけで、ギルド長と真正面から顔を合わせたくないらしい。

ギルド長かわいそう。

しばらくすると、三角帽子の魔導師メルクリーアは、覆っていた手をわずかに動かして、

「……もう、大丈夫ですか?」

「ああ。そっちは見ていない」

ギルド長はそう言うが、実際はそんなわけもなく、ジッと彼女の方に視線を向けている。

一方メルクリーアはギルド長の言うことを素直に信じて手をどけた。

であれば、取り乱すのは当然で――

「ひっ!? こ、ここ、こっち向いてるです! 嘘です!」

「顔を見ただけで怯えるようなことか!」

「ひぅううう! ごめんなさいです! 申し訳ないです! 殺さないでです!」

ギルド長が怒鳴りつけると、メルクリーアは半泣きになって命乞いをし始める。

以前魔導師ギルドを訪れた際もそうだったが、なぜみんながみんな、ギルド長を見ると『殺す』というワードが出て来るのか。

そんな血みどろ粛清的な過去でもあるのだろうか。

……まああの向こう傷だ。間違いなくあるんだろうとは思われるが。

すると、老魔導師がどこかしみじみとした様子で、

「うむ。その存在だけで国定魔導師を恐れさせる。さすがはゴッドワルドである」

「ガスタークス様……」

どこかズレた感想を口にする老魔導師に、ギルド長もたじたじといった風。

ギルド長の挨拶が済んだのを見計らって、クレイブと共に、ギルド長の隣に向かう。

クレイブが今回の後見人で、ノアとカズィは助手だ。

助手にも職員にも見えない子供が出てきたことで、みな不思議そうな顔を見せるが、そのまま。

位置についた折、まずクレイブが一礼をして挨拶を行う。

「皆様方にはお忙しい中集まっていただき、感謝の言葉もありません」

いつものクレイブからは想像できない言葉遣いだ。

場にクレイブよりも地位の高い人間がいるからだろう。

パースに慇懃に対応していたいつかを思わせる。

クレイブの挨拶が終わると、クルミの魔導師が声をかける。

「溶鉄の旦那。今日は手短にしてくれよ? 呼びかけがあんたやギルド長じゃなかったらぶっちしてるとこだ」

「お前、ってことは何か? 集まりがガスタークス老やローハイム師の呼びかけだったら出てないって言うのか?」

「え? いやそういうわけじゃ……」

クルミの魔導師は、クレイブに軽口の穴を指摘されてしどろもどろ。

上座にいた二人の魔導師の顔色を窺うように交互に見て、「そういうわけじゃ」とか「言葉の綾で……」など言い訳を始めている。

すると、年齢不詳そうな男性魔導師が人差し指を立てて、

「フレデリック君は国定魔導師二代目困った君、ですからね」

「う……」

「言われたですね」

「……うるせーよ」

メルクリーアの指摘とうりうりに、クルミの魔導師は力のない声を返す。

その一方で、クレイブは他に気になった部分があったようで、

「いやーローハイム師。ちなみにその困った君の一代目は誰なんですかね?」

「それは説明せずともわかり切っていることでしょう?」

男性魔導師がそう言うと、全員がクレイブの方を見る。

クレイブ伯父、やっぱりなかなかやんちゃしているらしい。

師と呼ばれた魔導師がくすくすと笑い出すと、クレイブはバツの悪そうな表情を見せる。どうやら彼もゴッドワルドと同じで、クレイブにとって頭が上がらない人間の一人らしい。

クレイブはバツの悪さを咳払いで払いのけると、一度面々を見回す。

そして、

「……アリシアの奴がいないのはわかるが、ルノーとカシームはどうしたんだ?」

クレイブが疑問を口にすると、それにはギルド長が答えた。

「ルノーは南方の視察、カシームは急遽陛下からアリシアの監督する命を下された」

「そうか。できれば国内の国定魔導師全員を揃えたかったんだがな。三人は運が悪かったってことにしとこう」

クレイブがそう言うと、先ほどの男性魔導師が静謐な表情を見せ、

「運が悪い、ですか」

「ええ。最悪です。あとでルノーの奴が悔しがる姿が目に浮かびますよ」

「ルノー君が悔しがっているところなど想像もつきませんけどね」

「いえ、いくらあのむっつり顔でも、今回ばかりは歯ぎしりの一つもしますよ」

「やれやれ二人は相変わらずなのである」

だがその三人を合わせたとしても、国定魔導師が全員……というわけではない。

(……なあノア。国定魔導師ってこの前一人増えたから、全部で十二人だよな? その三人合わせても足りないぞ?)

(……名前が出なかったお二方は、他国の魔導師なのです。狩魔の魔導師シュレリア・リマリオンさまは同盟国サファイアバーグの魔導師にして将の一人。もうお一方、疾風の名を冠する魔導師は、ライノール王国傘下にある独立君主、ツェリプス王国国王、アル・リツェリ・バルダン陛下です)

(……あー、他国の魔導師にも任命してるのか)

確かに他国の魔導師ならば、ここにいないのも頷ける。

サファイアバーグは隣国だが王都からは遠いため、招集してもすぐには赴けないし、領地と家臣を持つ独立君主に至っては国政に追われているため呼び出しに応じることも難しいはずだ。

そもそもこの場合、両者ともに他国の人間であるため、招集に慎重になった結果……ということもあるのかもしれないが。

ふと、白いドレスを着た女性魔導師がこちらを見た。

「クレイブ様、一緒に現れたそちらの少女は? 御髪(おぐし) の色から、ご親類と思いますが……」

「うむ。あと五年もすれば飛び切りの美人になると思われるのである。むふふふふふ……」

老魔導師が、そんな無慈悲な予想と、不気味な笑いを口にして追随する。

直後だった。

ぶるりと原因不明の身震いが起きる。

見れば、老魔導師はスケベジジイの視線を向けてきていた。

「いやぁ、ガスタークス老。こいつは俺の甥でしてね」

すると、クルミを弄んでいた魔導師が目を丸くする。

「甥? 男なのか? そのツラで? いやまあガキんちょだからそういうこともあるんだろうが……」

一方でそれを訊いた老魔導師は、大きな衝撃を受けたかのように、挙動も表情も固まってしまう。

そしてそれはすぐに変化し、

「そうか、男か。そんなにカワイイのに男であるのか。うむ……それはとてもとても残念なのであるな……くぅ!」

女の子とばかり思っていたのだろう。老魔導師は露骨にしょんぼりし始めた。

というかそんなことでむせび泣くなと言いたい。

……やばい。あれは紳士のようだが、変態だ。いわゆる変態紳士という奴だ。

老魔導師を見る女性陣が、呆れているというよりは若干引いている。

ということは、完全に そういう人間(スケベジジイ) として認識されているのだろう。

だが、あの老魔導師、ガスタークスと呼ばれていた。

つまり、城塞の魔導師ガスタークス・ロンディエル。

その名前は、アークスも耳にしたことがある。

(お、王国の大英雄が変態紳士って……)

王国において、おそらく最も有名な魔導師が彼だ。

先代国王の代からいくつも武勲を上げた魔導師で、彼がいなかったら王国はすでに帝国に吸収されていたと言われるほどの大人物である。

……それが、変態紳士。

まさかの事実に少しだけショックを受けつつも、気を取り直して挨拶に臨む。

「アークス・レイセフトと申します。本日はよろしくお願いします」

礼を執ると、一部がざわめく。

ジョシュアが無能だと吹聴しているため、名を聞いたことがある者もいるだろう。

クルミの魔導師が疑問を口にする。

「で? なんで旦那の甥がいるんだ?」

「そりゃあこれから研究を発表するのは、俺じゃなくてこいつだからだ」

「はぁ? そのちっこいのが? 旦那じゃなく?」

「ああ」

クルミの魔導師は確認するようにギルド長の方を向くと、ギルド長も頷いた。

そして、ギルド長は室内がさらなるざわめきに包まれる前に。

「方々、静粛に。この件についてはいろいろと疑問もあるだろうが、まずはだ――」

ギルド長がそう言うと、【藍の間】に集まった全員は何をするのか察したのか、言葉をきっかけに一斉に立ち上がる。

「――会の進行役であるルノー・エインファストが不在であるため、このたびの宣誓は僭越ながら、国王陛下より魔導師ギルドを任せられるこのゴッドワルド・ジルヴェスターが執り行う」

ギルド長の、重く、厳格な声が室内に響く。

そしてそれは、さらに続き、

「まず、この場にいない国定魔導師たちについてだが、先ほども名前を挙げた第五席、護壁の魔導師ルノー・エインファスト。第八席、疾風の魔導師ツェリプス国王アル・リツェリ・バルダン陛下。第十席、狩魔の魔導師シュレリア・リマリオン。第十一席、眩迷の魔導師カシーム・ラウリー。第十二席、渇水の魔導師アリシア・ロッテルベル。以上の国定魔導師たちはみな忙しく、出席が叶わなかったこと、どうかご了承願いたい」

ギルド長はそこで一度言葉を区切ると、室内によく通るほど大きな声で、

「では方々。王家にとこしえの忠誠を」

そう口にした直後だった。

「――王家にとこしえの忠誠を!」

国定魔導師たちが。

将軍たちが。

みな一斉に、寸分の狂いもなく、一揃いに王家へ対する永遠不変の忠義を宣言する。

腕を胸に当て、踵を床に打ち付ける仕草から。

放たれたのは、建物全体を揺らすほどの重さを持つ 音声(おんじょう) 。

次いで、重力が数倍になったかのように、ひどく身体が重くなった。

(な、あ……!?)

思わず、心の中で呻く。

Gがかかったかのように視界が赤みを帯び、目の前がちかちかと点滅。

それが場にいる者たちの身体から自然とにじみ出た威風のせいだと気付くのに、そう時間はかからなかった。

見回せば、穏やかな顔は一変。鬼気にも迫るような表情を見せている。

魔法関連の発表であるため多分に力を抜いていた将軍たちのみならず。

ギルド長の顔に怯えていた小柄な女性魔導師も。

面倒くさいと言って気だるげだった魔導師も。

女子だと思いスケベな視線を送っていた老魔導師も。

いまは隣に立っている伯父クレイブまでも。

みな、真剣な表情を通り越した狂気とも呼べる信奉を顔に表し。

その心血のすべて王国のために捧げているということが窺える。

瞳には確かに、王家のために死することも厭わないという意志が燃え上がっていた。

……いまこの場に居並ぶ者たちに訊ねれば、おそらく同じ答えが返ってくるはずだ。

まさに鉄の結束である。

クレイブの武威を浴び続けてついた耐性がなければ、おそらく卒倒していただろう。

ふと、ノアが耳もとに顔を近付けてくる。

(……アークスさま、大事ございませんか?)

(……俺はなんとか生きてる。ノアは?)

(……私も、これは少々厳しいですね)

二人でそんなことをささめいていると、カズィが表情に疲労を浮かべ、

(……俺は帰りたくなった)

(……ダメ)

(……ダメです)

(…………だよなぁ)

やはり疲労を感じさせるため息を吐くカズィ。逃げ出したいのは同じだが、ここで踏ん張らなければこれまで頑張ってきた意味がない。

宣誓が終わると、ギルド長が本題を切り出す。

「今日の発表は、ここにいるレイセフト家の長男、アークス・レイセフトの研究成果および作製物に関してのものだ。王国の魔法技術の歴史に大きな変革をもたらすものであるため、方々は心して聞くようにお願いしたい」

「変革だって?」

「そうだ。私はそう確信している」

「いや、だが……」

「方々には疑問も多くあるだろう。しかし、まずは一度聞いて欲しい……ではアークス、前に」

ギルド長の言葉に、「はい」と返事をして、ノアに用意してもらった台に乗る。

背が低いのが恨めしいが、いまはともかく。

「――私が今日発表するのは、魔力の量を数値化できる道具です」

ついに来た晴れの舞台。

その一番最初の幕が、いま上がった。