軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ゲームフェイズ1:『14』節制1

「え、ええー……アンタとぉ……?」

五右衛門は、『腕輪を引き千切るタイプの奴と組んでいいのだろうか』みたいな顔をしている。それはそう。五右衛門の判断は正しい。

「うん!あの、他の奴が一緒でもいいから!あ、俺はできたら海斗も一緒がいい!」

五右衛門がまた半歩バカから距離を取るのも気にせず、バカはずいずいと話を進めていく。……すると。

「ああ、もうチーム分けが始まっちゃうのか。じゃあ……そうだな。七香さん、俺と組まない?後は……七香さんが今、丁度抱き上げてることだし、タヌキも、どう?そうすると僕ら、『12』のアルカナルームに入れるわけだけれど」

デュオが、それとなく助け船を出してくれた。

……そう。要は、五右衛門が別の人と組めないくらいに他の人をこっちで吸収しちゃえばいいのである!そうすれば五右衛門は、バカと組むしかなくなるのだ!

「あっ、ではどうぞよろしくお願いします!七香さん、デュオさん!」

そうして、タヌキが素直にぽんぽこぽん、と応じてしまったので、七香とデュオとタヌキの3人チームが完成してしまった。と、いうところで……。

「えーと、じゃあ……五右衛門、一緒に行こうぜ!」

バカは改めて、五右衛門を誘ってみた。が、五右衛門はチラチラと四郎やむつ、そしてヤエを見ている。……向こうと組むつもりであろう!だがバカはなんとしても、五右衛門を捕まえたいのだ!一緒のチームになることができないと、お喋りして仲良くなるきっかけが得られないのだ!

……だが。

「樺島。無理に誘うものじゃない」

海斗はそう言って、バカの肩にぽんと手を置いて、『やれやれ』と言わんばかりの顔をしてみせた。海斗をすっかり見慣れたバカにだけは、『おやっ!海斗はなんだか、わざとこうして見せているぞ!』と分かる。分かったので、バカは大人しく、しょんぼりと五右衛門勧誘から撤退したが……。

「あー……じゃあ、その、ヤエさん。もしよかったら、僕らと組まないか?その、できるだけ先に、数字が大きめのところを攻略した方がいいだろうから……」

紳士的に、しかし、戦略めいて。海斗はそう、ヤエに声を掛けていたのである!

「え、あ、その……」

ヤエは、ちょっと迷った様子だった。だが、海斗が『勿論、気になることがあるなら断ってくれても構わないから』と優しく引き下がる様子を見せると、それにちょっと安心したらしい。ちょっとだけ、そんな表情を見せてくれて……。

「……じゃあ、その、よろしくお願い、します」

なんと!ヤエが先に、チーム入りを果たしてくれた!バカは嬉しくなって、ヤエの手を握って、『よろしく!よろしく!』と元気に握手した!

……更に。

「あー……だったらアタシもそこ入るわよぉ。なんだか、樺島君はアタシのこと、気になってるみたいだしぃ……ヤエちゃん、女の子が1人じゃ心配な事もあるでしょうし」

ヤエの加入が決まったら、五右衛門も付いてきた。バカ、びっくり!

……五右衛門を勧誘するなら、まずヤエから!そういうことであるらしい。五右衛門は早速、ヤエににこやかに話しかけている。やっぱり、五右衛門はヤエと仲良し、ということだろうか。その割に、ヤエは五右衛門に対して、ちょっと硬い印象だが……。

……何はともあれ、ヤエも五右衛門も捕まえてきちゃった海斗は、すごい。バカは改めて、そう思うのだった!

ということで。

「じゃあ、『12』にデュオとタヌキと七香さん。『10』に四郎さんとむつさん。そして、『14』に僕と樺島とヤエさんと五右衛門さん。こういうチームでいいな?」

チーム分けが無事に終了し、バカ達はそれぞれに分かれることになった。

デュオ達の『12』チームは五右衛門の個室、むつと四郎の『10』のチームは四郎の個室、そしてバカ達『14』のチームは本来、孔雀が居たはずの個室を使う。

『終わったらまた大広間に集合なー!』と元気に挨拶したバカは、早速エレベーターを起動して、『14』の部屋へ向かうのだった。

さて。

「五右衛門って……女の子なのか……!?」

「は!?」

エレベーターの中、バカは真剣な顔で五右衛門にそう、聞いていた。そして五右衛門を唖然とさせている!ついでに海斗も唖然とさせてしまった!ごめん、海斗!

「いや、だって、『ヤエが女の子1人じゃ心配だろうから』って言ってたから……」

「バカ、お前な、その、そういうことは聞くものじゃないだろう……」

海斗が気まずげにバカを小突いてきたので、バカは『聞いちゃ駄目なやつだったの……?』と、しょんぼりした。バカはバカなので、聞いちゃいけないことも聞いちゃうのである。勿論、そんな自分を自覚してはいるので、バカは只々、『ごめんなさい……』としょんぼりするしかない。

「あー……いや、いいのよぉ、そんな、気まずそうにしないでよぉ!却って気まずいじゃなーい!」

……が、バカがあまりにしょんぼりしていて、海斗が気まずそうにしていたからか、五右衛門は明るく笑ってバカの肩をバシバシと叩いてきた。なのでバカは確信した。多分、五右衛門はいい人である。

「えーと、ごめんなさいねぇ?アタシ、ま、こんな見た目でこんな喋り方だけどぉ……ストレートだし、別にトランスってわけでもないの」

「すとれー……とらんす……?あ、鞄、みたいな……?」

「……多分それはトランクだ。樺島。お前には難しい話だったな。あー、その、つまり……」

「あーもう!好きでこの話し方してるだけ!趣味のファッションオカマ、ってこと!だから気は使わなくて結構よ、ってことでよろしくね!」

……バカはよく分からなかったものの、『そっか!わかった!』と元気に頷いた。ひとまず、五右衛門が気にしていないということは分かったし、『気を遣わなくてもいい』ということも分かったので!

そして同時に……やっぱり、確信した。

五右衛門は、絶対にいい人である!

そんな話をしている間に、エレベーターは『14』の部屋の前に到着した。なのでバカは、元気よくドアを開けて……最初の周ぶりに見る、『水を杯に入れるパズル』を見たのであった。ちょっと久しぶり!

「え、あー……?何々、『節制の間。全ての杯の水を同時に等しく満たしなさい。ただし、分岐を通った水はそれぞれの分岐に等分されるものとする。』……ってことは、これ、パズルか何かってことぉ?やっだ、アタシ、こういうの得意じゃないのよねぇー……」

「おう!全部のコップを同時に水でいっぱいにすればいいんだよな!だったら俺、コレできるぞ!やっていいか!?」

五右衛門とヤエは壁に張り巡らされたパイプと、パイプの分岐にあるコック、そしてそれらパイプの先にある杯とを見て困惑していたが……バカは、『簡単!』とにこにこ顔だ。筋肉で解決できることについては、このバカは強いのである。

……そして。

「一旦待て、樺島」

バカは、海斗にストップをかけられたので、大人しくストップする。バカはバカだが、ちゃんと『待て』は聞けるバカなのだ!

「……あー、ヤエさん、五右衛門さん。その、このバカに任せると、この部屋を安全に、かつ凄まじいスピードでクリアできるんだが……やり方は、筋肉による別解、ということになる」

「え?」

「その……信じて、くれるか?」

そう。筋肉解法で解ける問題はバカの担当である。

そして、筋肉で解決できない部分……人の説得、という点においては、海斗がサポートしてくれる!よって、今のバカは向かうところ敵無し、なのであった!

ということで、ヤエが『あ、はい』と頷いてしまったことで、五右衛門も『まあ……どうぞ?』と譲ってくれたため、バカは『バキイ!』と水のタンクを外し、『バキイ!』と杯を持ってきて……そして。

「ヨイショォ!」

ジャボン!と、全ての杯を同時に水に沈めて、全ての杯が同時に水で満たされた。そうして無事、カードケースが開いた。おめでとう!

「よし!できた!」

バカは杯ごと水に突っ込んだせいでビッシャビシャになった手を『ぴぴぴぴぴぴ!』と振動させて水を切り、残りはズボンのケツで拭いた。拭いてから、『そういえば俺、今日はハンカチ持ってるんだったのに!』と気づいた。まあ、そんなものである。

「……待って。結構、予想外なのが来たわね……?」

一方、五右衛門はかなり困惑していた。まあ、筋肉解法に初めて触れた人間は、概ねこんな反応になるものである。バカは、『驚かせてごめんなぁー』と謝りつつ、同時に、『でも、何度か見てくれたら多分、慣れてくれる!』とも思った。バカは前向きなのである。

「まあ……その、こんな具合だ。樺島にかかると、大体、こういう、想定されていない攻略方法でゲームがクリアされることになる、というか……」

海斗は『困惑されて当然だよな。僕が慣れ過ぎてしまっただけだよな……』とぶつぶつ言いながら、五右衛門とヤエに弁明している。バカは『海斗、頼んだ!ありがとう!』と堂々としている!

……そして。

「……その、樺島君って、結構頭、回る方、ってコトぉ……?」

五右衛門がそんなことを言ったので、バカは『俺、頭良く見えたの!?』と、ちょっと照れてしまった!

「ううん……その、俺、そんなに頭、よくないよぉ……。頭使う仕事は頭突き以外、海斗の担当……」

もじもじしながらバカが答えると、五右衛門は『ああ、そう……?』と、何とも言えない返事をくれた。バカはまだもじもじしている!

「……まあ、この通り、筋肉で解決する方法を見つけるのは得意だが、それを『頭が回る方』とは言ってはいけない。そんなかんじの奴だな……。その、すまないが、今後も恐らく、こういうかんじになる。だが、その代わりに樺島はとにかく強いし、頑丈だし、あと、善良だ。そこは安心してくれていい」

「な、何よぉ、それぇ……」

五右衛門は何とも言えない顔をしていたが、ヤエは『善良……』と、ちょっとだけ安心した顔をしていた。なのでバカは、ヤエに眩いばかりの笑顔を向けて、『俺、がんばる!』と宣言しておいた。

こうして、安心感はさておき、バカさと善良さだけはアピールできたバカなのであった!

さて。

こうして、カードが手に入ってしまった。手に入ってしまったのだが……バカは、自分の手の中のカードを見つめてから、ちょっと、思った。

これ、自分が貰っちゃっていいのだろうか、と。

「なあ、ヤエ、五右衛門。これ、いるかぁ?」

カードを手に、ひらひら、としてみせつつ2人に聞いてみると、2人とも、ぽかん、としてしまった。

「……そりゃ、要るでしょうよ」

「うん、だよなあ……」

ぽかん、とした五右衛門がぽかん、としたかんじに答えてくれたのを聞いて、バカは『やっぱり五右衛門はカード、欲しいんだよなあ……?』と、首を傾げる。

……五右衛門は、『脱出できなくてもいい』と言っていたことが、あったのだが。でも、カードが欲しい、となると……。

「あの」

……が、そこでヤエが、声を上げていた。

「私、いらないです。カード」

「え?……ヤエちゃん、それ、どういう……」

五右衛門が、さっきよりも唖然としながら、ヤエを見つめる。……その目から逃れるように、ヤエは、ちょっと俯いてしまった。

「……あの、ヤエはここから出られなくてもいいのか?」

だが、バカがそう、ちょっと困りながら聞いてみたら、ちょっとバカの方を見て、頷いてくれた。

……どうやら、『脱出できなくてもいい』のは、五右衛門だけじゃなかったようである。