軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ゲームフェイズ1:『14』節制

さて。

タヌキが『よく分からないんですけれど、つまりカード7枚を集められなくても脱出できるかもしれないっていうことですよね!?』と大はしゃぎし始めたので、バカも『そういうことだ!親方も先輩達も、すげえから!な!絶対大丈夫!』と一緒にはしゃいだ。

……そして。

「……え、あの、それを最初に皆さんに言っておくべきだったのでは……?」

そう首を傾げるタヌキに、海斗がどんよりとした顔で、告げた。

「……まあ、そうもいかないんだ。こっちも色々あってね。その、『悪魔』に計画を知られる訳にもいかないし……」

「あっ、そうでしたね……。うーん、デュオさんが悪魔なんだと、私は思うんですけれど……他の人にもお知らせしない方がいいですか?」

「ああ。ひとまず……次の『発表フェイズ』までは、秘密にしておきたい。いいだろうか」

「分かりました!では、ナイショにしておきますね!」

まあ、こっちにも色々、あるのだ。

……バカとしては、さっさと『駒井燕』を救助したいところではある。だが、悪魔が紛れているというのなら、悪魔にこちらの狙いは教えたくない。

そういう訳で、できればこっそり、『駒井燕』に接触したいところなのだが……。

「……しかし、あの、樺島さんの会社、って一体……?」

「うん!?キューティーラブリーエンジェル建設フローラルムキムキ支部だ!建設解体とか色々やってる!」

「きゅーてぃーらぶりーえんじぇるけんせつふろーらるむきむきしぶ……!?」

タヌキは、頭の上に『!?』と浮かべたまま、固まってしまった。

やはり、この社名、何かがおかしいのだろうか。かっこいい良い名前ではないのだろうか。バカはちょっぴり、しょんぼりするのであった……。

そうして、海斗が『ほら、もうエレベーターは到着してるんだぞ』と促して、バカとタヌキはエレベーターを降りた。

そして、『14』と番号の書かれたアルカナルームのドアを、開く。

「……海斗ぉ。俺、役に立たねえ気がする……」

「……そうだな。僕は、僕が大いに活躍できる気がしている」

バカは嘆き、しょんぼりとした。海斗は、『僕がやらなければ……』と、緊張と使命感と責任感に満ち溢れた壮絶な表情で、部屋に入ってすぐの看板を見つめている。

……看板には、『節制の間~全ての杯の水を同時に等しく満たしなさい。ただし、分岐を通った水はそれぞれの分岐に等分されるものとする。~』と書いてあった。

看板の奥には10の杯があり、それら杯の上にはパイプがあり……パイプは分岐したりくっついたりしながら連なっていて……ところどころに開閉栓がついており……そして水が入ったタンクが一番てっぺんにあって、そこに『注水』というボタンがあり……。

……つまり!バカには難しすぎるゲームがここに存在していたのである!

ということで、バカは部屋の隅っこで体育座りして待つことになった。

こういう時、バカは全く役に立たない。今も海斗が、『こっちに水が分岐すると、ええと、ここでぶつかって2倍になるから、ならこっちは閉める必要があって……』と頑張ってやっている。繰り返すが、バカは全く役に立たない!

尚、タヌキは役に立っている。今も、海斗の肩の上に乗っかって、『あっ、海斗さん!そこの栓は閉めないと!』といったアドバイスをしている。賢いタヌキである。

なのでバカはただ、そんな2人が頑張っているのを眺めるだけである。

……否。

「海斗ぉ……」

「なんだ?」

「カード入ってるケース、壊しちゃっていいかぁ……?」

バカはバカなりに、学んだ。

……壊しちゃっていいものは、壊しちゃった方が早い、と。

「……さっきの『月』の時のようにカード以外のものが出てきたら、処理はお前がやるんだぞ」

「うん!分かった!」

結局、途中まで頑張っていた海斗は『頑張っていたのがバカみたいだ!』と嘆き、タヌキに『い、いや!きっと無意味ではなかったはずですよ海斗さん!』と慰められた。

そしてバカは、海斗とタヌキの避難を確認してから、カードが入ったケースを殴りつける。

「……硬っ!?」

が、駄目であった!バカ、涙目である!折角、役に立てると思ったのに!

「そ、そうか。ならやっぱり、僕が頭脳で何とかするしかないな……」

バカが涙目な一方、海斗はほんのり、どことなく嬉しそうにそう言いつつ、改めてもう一度、パズルを解き始め……しかし。

「……いや、待てよ」

ぴた、と動きを止めた海斗は、巨大な水のタンクを見つめ、更に、杯を見つめ……何か、思いついたらしい。

「……樺島。あの水のタンク、外せるか?」

「え?うん」

唐突ではあったが、バカは海斗に指示された通り、よっこいしょバキッ、と、水のタンクを外して持ってきた。タヌキは『ひえええええええ』と慄いていた。

「杯も持ってこられるか」

「うん。余裕余裕」

更に、バカは杯もひょいひょいと持ってきた。

……そして。

「全部同時に、水のタンクの中に沈めろ」

「うん!分かった!よいせェ!」

海斗の指示通り、バカは指と指の間を駆使しつつ10の杯をしっかりと持ち……一気に10の杯を、タンクの中に沈めた。尚、これによってタンクはその上部をバキィ!と破壊された。タヌキがまた、『ひええええええええ』と慄いていた。

……そして。

「やっぱりな。悪魔のデスゲームはこうでなければならないな。ああ……」

「海斗すげえええええ!やっぱり海斗、頭いいなあ!」

『14』のカードが入ったケースは、無事『ふぃーん』と軽やかな音を立てて開いていたのであった。

バカは大喜びであったが、海斗はどことなく、疲れた顔をしていた。そしてタヌキは、『わああああああああ』とやはり、慄いていた。

「じゃ、タヌキ!このカードはタヌキのだな!」

さて。バカは、カードを拾い上げると、タヌキに差し出した。なのでタヌキも、慄いてばかりもいられない。

「いいんですか?その、本当にありがとうございます……」

タヌキはぺこん、と深くお辞儀するとカードを受け取り、いそいそ、と、お腹のあたりにカードをしまった。

……あのあたりにポッケがあるのだろうか。バカはものすごく気になったが、タヌキをひっくり返して見るのは失礼な気がしたので、確認するのはやめておくことにした……。

「さて。5分以上経ってしまった気がするが……他のチームも居るかもしれないからな。急いで戻ろう」

そうして、バカ達は14番のアルカナルームを後にすることにした。再びエレベーターへ戻って、『大広間』のボタンを押して、ふぃーん、とエレベーターが上昇していく感覚を味わい……。

「あら」

そこで、のんびりしていた様子の七香と、ばったり出くわしたのであった。

「おー!七香、戻ってきてたんだな?」

「ええ」

バカがにこにこと話しかけると、七香は僅かな微笑みを崩さないまま、一つ頷いた。

「7番のアルカナルームはどうだった?」

「特に何も。……そちらは?」

「うん!コップ沈めてきた!」

「すごかったんですよ!?樺島さん、本当にすごかったんですよ!?よっこいしょ、で!バキィ!で!それで、ザバン!」

……七香は、バカとタヌキの説明を聞くと、あまり興味の無い様子で『そう』とだけ言った。……こういうタイプの人は、バカとしてはちょっと寂しい!

「あー……七香さん。誰か、ここに戻ってきた人はいましたか?」

さて、そんな七香に、海斗が話しかける。……今、使用中なのはタヌキの個室と、七香の個室、そしてヤエの個室だ。

さっきとは、使用中の個室が違う。……先程まで、孔雀の個室を使って『17』のアルカナルームに入っていたであろう孔雀とむつとデュオは、既に解散済み、ということらしい。

「いえ、私が戻ってきた時には、既にこうなっていました」

「……そうか。まあ、そうだよな。だから七香さんはここで待っていたってことだろうし……」

海斗は『それはそうだな』と頷くと、今、使用中の個室を見つめる。

「……五右衛門さんとヤエさんは、まだ戻ってきていない、ということだろうな。そして、消えている個室が残り2つであることを考えると……恐らく、四郎さんとデュオさんが、2人で6番のアルカナルームに入ったんだろう。残り1つは、むつさんと孔雀だ」

「そっかぁ!なんかよく分かんないけど、海斗すげえなあ!」

何故海斗が分かったのかはバカには分からない。が、とりあえず、『海斗は頭がいい!』というところだけは分かったので、褒め称えることにした。海斗はすごい!

「……さて。となると僕らも動いた方がいいか。そろそろ五右衛門さんとヤエさんのチームが戻ってくる、と予想して待つのも手ではあるが……」

そうして、概ね他チームの状況を把握したバカ達(というよりは、海斗)は、次のチーム分けを考え始めることになる。このゲーム、考えることがいっぱいである!

「でしたら、私と七香さんが組んで10番に入る……となると、樺島さんが1人で入れるアルカナルームを潰してしまうことになりますか……」

が、考えるにしても、考えなければならないことが山ほどあるのでバカは『ああ!これ、俺が役に立たねえやつだ!』と気づいた。なのでとりあえずスクワットしておくことにした。筋肉は細かいことの積み重ねで育つし、育った筋肉で皆に恩返しができるので……。

「そう……だな。しかし、1番の僕が居る限り、樺島以外の誰かと2人組になろうとすると、他のメンバー誰かが1人で入れるアルカナルームを潰すことになるから……いや、しかし、樺島が1人で入れるアルカナルームは見ておきたいし……」

海斗は色々と考えながら、ぶつぶつと呟いている。バカは、『海斗、がんばれ!』と静かに応援しながらスクワットを続けている。それを見ていたタヌキも横でスクワットを始めた。尚、タヌキのスクワットなのであまりスクワットになっていない。精々、『スク』止まりぐらいである。

……と、そんな様子が1分ほど続いた頃。

「……私は参加しませんよ?」

七香が、そう、声を上げた。

「ですから、アルカナルームへの参加は、そちら3人でどうぞ」

「……え?」

「えっ?」

「ええっ……?」

予想外な言葉に、海斗のみならず、バカもタヌキも、ぽかん、とすることになるのだった!