軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ゲームフェイズ1:大広間3

「えっ、1人で?」

「ええ。……何よぉ、悪い?四郎ちゃんだって1人で入ってたじゃないのよぉ」

五右衛門の意思は固いらしい。どうも、1人で入るつもりらしい、のだが……。

「それは……その、危なくないか……?」

海斗がそっと、そう口を挟む。……海斗は、バカから聞いて知っているのだ。『5番の部屋では、血が流れるようなことが起きたっぽい』と。

だが、五右衛門はそれでも笑って『大丈夫よぉ』と言うばかりだ。

「まあ、四郎ちゃんに聞いたわ。それ聞く限り、まあ……危険が無い、とは言えないでしょうけど。でも、四郎ちゃんにはなんとかできたわけだしぃ?」

バカはおろおろする。それは、四郎が強い異能を持っているからなのだ。

四郎の異能は、氷を生み出す異能、なのだと思われる。最初の周で、七香の上に鋭い氷柱を構えていた、あの様子は忘れられない。

そう。四郎は戦うのに向く、強い異能を持っているようなのだ。だから、『皇帝』と戦ってもなんとかなるのだろう。

だが……。

「……うん。じゃあ、五右衛門、気を付けて、な……?」

……バカはバカだが、流石に気づく。

前回の『5』の部屋。『教皇』の部屋であるらしいそこにあった血だまり。五右衛門のものではない、服の切れ端。

……あれらから考えるに、五右衛門はどうも、教皇と戦って、勝てるらしい。

五右衛門が大丈夫なら、送り出すしかない。バカはそう思う。

そして、バカがそう判断した以上、細かなところを全て知っているわけではない海斗もまた、反対しなかった。

「まあ……カードを1人で確実に手に入れられる訳だからな。1人で攻略する、というのは、戦略としては正しい」

海斗もそう言って頷いて……それから、ふ、と小さく息を吐き出した。

「だが生憎、僕は慎重な性質でね……。できることなら、複数人攻略していきたい。……部屋にもよるのかもしれないが、複数人が参加することが前提でゲームが進むなら、1人で入るのは危険だろうから」

海斗もそう言えば、デュオは『そうだね』と難しい顔をして頷いて見せてくれた。

「幸い、『0』の樺島君が居るから、『1』や『2』のアルカナルームも2人で攻略できる。ありがたいね」

「そうだな……ええと、じゃあ、むつさん」

「へ?私?」

急に声を掛けられたむつはびっくりしていたが、海斗はちょっと気まずげに、『しかしこれしかない』という顔で申し出る。

「……その、『6』のアルカナルームに、僕とデュオとタヌキと樺島で入ろうかと思うんだが、いいだろうか」

「あ、うーん……そう、だなー……そっか、1人で入ったら、その分、カードは絶対に自分のもの、だもんね。えーと……」

それから海斗は、むつに『自分達が6番アルカナルームに入った時の、むつにとってのメリットとデメリット』を説明した。海斗は誠実である。この姿勢がとてもかっこいいと、バカは常々思っている。バカもこのようにありたいものである。

……そして。

「……うん。いいよ。『6』のアルカナルームは譲る。だって私、1人でアルカナルームに入る自信は無いもん」

むつがそう決断したことによって、チームが1つ、決定した。

「そういう訳で……タヌキ、デュオ。いいだろうか」

「はい!私は構いませんよ!」

「うん、まあ、俺も構わないけれど……なんで俺?」

「0+1+2+3が一番小さな数で人数を4人以上にできるからだ」

海斗は『当たり前だ』という顔で答えてくれたのだが、バカには何が何やらサッパリである。『ほげえ……』と何とも言えない顔をしつつ、只々、『海斗ってやっぱり頭いいんだよなあ……』と思うばかりなのだった!

「あ、でも、七香はいいのか?」

が、ここで七香のことが気になるのがバカの美点である。

七香は……デュオと一緒に居たいのではないだろうか。そして、さっき『13』の部屋を攻略した仲間から、七香だけはじき出してしまう、というのは不義理な気がするのだが……。

「私は構いません」

だが、七香はそう言って涼しい顔をしている。だからこそ、バカは余計に心配になるのだが……。

……少し迷って、バカは、てけてけ、と七香の傍まで行くと、七香にこっそり、小さな声で聞いてみた。

「あの、デュオ、一緒じゃなくていいのか……?」

すると、七香は少しばかりバカを見つめて、それから、ふ、と視線を逸らした。

「……少し、一人になりたいの」

成程。そういうこともあるだろう。バカは納得した。

同時に……『七香、大丈夫かなあ』と、心配にもなった。

だがやはり、バカには七香をどうこうすることはできない。バカはしょんぼりと肩を落として、とぼとぼ海斗の横へ戻るのだった……。

「あー……なら、残ってるのは俺達3人か」

そして、四郎が頭を掻きながら、むつとヤエを見つめる。

「……いいか?」

四郎としては、若い女の子2人組のところに自分が入るのが、なんとなく気まずいのだろう。バカもなんとなく、気分は分かる!女子会に突撃してく勇気は、バカには無い!

「え、あ、うん。勿論。よろしくね、四郎さん!」

「よろしくお願い、します……」

が、むつもヤエも、それぞれに四郎を歓迎している様子である。むつは相変わらず明るい様子であるし、ヤエは控えめながら、ちゃんと目を見て、ぺこ、とお辞儀している。いい人達である!

「あー、おう。まあ……力仕事だのなんだのは、任せとけや」

そして四郎は四郎で、『若いお姉ちゃん達のことは俺が守らねば』という気分になっているらしい。バカもなんとなく、この気分も分かる!分かるのだった!

……かくして、チーム編成が無事に決定した。

「じゃあ、決まりだな。僕と樺島とデュオとタヌキで『6』。五右衛門さんが1人で『5』。七香さんが1人で『7』。そして、四郎さんとむつさんとヤエさんが『18』の部屋、だな」

海斗がまとめてくれて、全員が『それでよし』と頷く。バカも頷いた。これでよし!

「……残り時間は20分弱。もしかしたら、発表フェイズに間に合わないチームがあるかもしれないが……その場合、発表フェイズ終了時点でできるだけ早く、大広間に戻ってきてほしい。その場合は一応、開始5分くらいまでは全員、大広間で待っていることにしよう」

海斗は全員を見回して、そう言った。……今回は、全員が『全員揃うまで大広間に待機』とやっているので、とっても分かりやすい。バカは『こういう方が安心できていいよなあ』とにこにこである!

「分かったわ。じゃ、皆、頑張ってねぇーん」

そうして、五右衛門が早速、ウインクと投げキッスを飛ばしつつ、個室へ入っていった。

「……では」

七香も、す、と会釈して、さっさと行ってしまう。なので、バカ達もまた、『6』のアルカナルームへ向かうべく、動き出すのであった!

ということで、バカ達はタヌキの個室に入って、エレベーターを起動させる。

させる、のだが……。

「……七香、大丈夫かなあ」

バカとしては、やっぱり七香のことが心配である。

アルカナルームの攻略もそうだし……やはり、『一人になりたい』と言っていたところも。

「まあ……大丈夫、と思うしか、ない、かな……」

だが、バカが心配する一方、デュオのように『大丈夫だと思うしかない』のもまた、事実である。デュオはそのあたりが既に割り切れているのか、ふ、と息を吐いて、苦笑する。

「……俺としては、七香さんがカードを集めることに不安があるけれどね」

「えっ」

「彼女のことだ。9枚以上のカードが揃ったら、脱出に7枚使って、それから、俺を連れて行くのに1枚……そして、俺の記憶を消す、とかで1枚使って、願いを完遂しそうだから」

バカは『あああ……そうだった!』と、大いに納得した。前回の最後……何故か、七香はカードをやたらいっぱい持っていて、そして、今デュオが言った通りのことをやったのだから。

「ちょ、ちょっと!デュオさん!いくらなんでも失礼じゃあありませんか!?」

が、そこら辺の事情を全く知らないタヌキは、ちょっと怒ってポンポコしている。

「七香さんに対して、その、あんまりにも不誠実すぎますよ!」

「ああ、うん……それは、本当にそうだと思う。返す言葉も無い」

タヌキの怒り具合に、デュオは苦い顔をするしかない。……七香に酷いことをしてきた自覚はあるのだろう。酷いことをしている、と自覚した上でデュオはそれをやって、そして、たまを救おうとしていたのだから。

「あの、あのな、タヌキ。デュオは……その、どうしても、助けなきゃいけない人が、いるんだ……」

「えっ!?そうなんですか!?」

が、やっぱり、デュオの事情も知っておいてほしいバカである。タヌキが『そういう事情が何かあるんですか!?』と尻尾を膨らませているのを見て、デュオは小さくため息を吐いて……そして。

「じゃあ、まあ……『6』のアルカナルームを攻略してから、少し、その話をしようか。まあ、タヌキとは、この体をどうするかの相談もしなきゃいけないし……」

……エレベーターは『6』と書かれたドアの前に到着していたのだった。

バカは、緊張しながらドアノブに手をかける。

『6』のアルカナルームは、まだ攻略したことがない。確か、他の誰かが攻略したことはあった気がするけれど……。

……バカは意を決して、えいや、とドアを開けた!

「……ほえ」

が、そこでバカは、ぱち、と目を瞬かせた。

部屋の中は芝生敷きで、大きな林檎の木があって……そして。

「あれっ!?たま!?たま、なんでここに居るんだ!?」

なんと……部屋の中には白い服を着た女性がたくさん居て、そして、その内の1人が……たまなのだ!