作品タイトル不明
間話「まもんまもんな自叙伝じゃね?」
――青森、某所。
りんご農家にして最近手広く畑を広げ、農業系動画配信者としても活動し始めたさまたんは、ベッドから起きると朝の仕事にいくために暖かいお茶を飲もうと台所に向かう。
「春になったけどまだまだ青森はさむいんだよねー、お茶を飲んで温ま――ひ」
そして、茶の間でグレーのスーツに割烹着を身につけたマモンがイナバウアーみたいなポーズをとっている姿と遭遇してしまい、変な声が出た。
「…………おはようございままもんまもん、さまたん様」
「…………おはよう。一応、聞くけど、何やってんの?」
「まもん!? なぜマモンがまもんまもんと悩んでいることを!? これが、紀元前から続くマモンとさまたん様のまもんまもんな絆っ!」
「朝からテンションたけーよ。あと、別に悩んでいることを察したわけじゃねえから。その格好がなんなんだって聞いただけだから!」
さまたんは、朝から血圧が高くなっている確信があった。
寒かった身体も大きな声を出したせいか少し温まっている。
「実は、さまたん様のお察しのようにこのマモン。昨晩からまもんまもんと悩んでおりました」
「いや、聞けや人の話」
「悩みすぎて昨晩からずっとこのまもんまもんなこのポーズでまもまもん」
「元の姿勢に戻れるか心配すぎるだろ! ていうか、見た目が怖いから戻れよ!」
「……まもっん」
「よいしょっと、みたいな感じで言ってんじゃねえよ」
マモンが身体を戻すと、さまたんがやかんに水を淹れて火にかける。
その間に、マモンが冷たい居間にストーブをつけた。
「灯油代も高騰しておりまもんまもんですが、朝の寒い時間帯くらいちょっとくらいつけてもよいまもんまもん」
「そうだな。んで、何を悩んでいるって?」
「実は、魔界から連絡がありまもなもん」
「――魔界、だと?」
さまたんに緊張が走る。
現役を引退して久しいさまたんは、現在の魔界の現状をあまり知らないでいる。
マモンもサタンに叛逆を起こそうとして失敗したことで、ペナルティを食らってしばらく魔界には立ち入り禁止だ。
その割には、平気で行き来しているが。
「何か問題でもあったのか?」
「はい。魔界のまもんまもんの学校からこのマモンの自叙伝を出さないかとオファーがありまもん」
「なんでだ!?」
「それは、このマモンの動画が魔界でも人気でまもんまもん!」
「スーツ着たおっさんが仲間とまもんまもん言いながら野菜収穫している動画がか!?」
「猪捌いたり、鍋にしたりもしていまもんまもん。最近は、焼きそばを作る動画もまもっています」
「バズっています、を無理やりまもんにするんじゃねえよ。じゃなくて! そんな動画が魔界で人気なの!? 大丈夫魔族!?」
サマエルは魔族の未来が心底心配になってしまう。
「そこで、このマモンの書いた自叙伝を教科書にしたいとお願いされまもんまもん」
「嘘だろ、おい!」
「正直なまもんまもんですと、このマモンの半生が子供たちのなるのか悩んでおりまもんまもん」
「だよね! 意外とちゃんとした考えがあってよかったよ!」
「しかし! かつての恩師に望まれているのであれば、このマモン! まもんまもんと引き受けたくも思っています!」
「恩師って、先生まだ教師やってたんだ!? それはいい話だけど、お前のまもんまもんが未来ある子供たちに感染したら誰がどう責任取るんだよ!」
「まもんまもん! なに面白いことをおっしゃりまもんまもん! まもんまもんの産みの親はさまたん様ではありませんか! つまり全責任はさまたん様にとっていだきまもんまもん!」
「ふざけんなぁあああああああああああああああああ!」
とりあえず拳を叩き込んで、サマエルはマモンの自叙伝出版を阻止した。
――やっぱり青森は平和だった。