軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

43「お別れの時間じゃね?」③

「それで、いいんすか?」

「もちろんです。もともと、こうして人と一緒に過ごす予定ではなかったんです。でも、思いがけず皆さんと一緒の時間を送れました。予定では、銀子ちゃんがよぼよぼになるくらいまではのんびりしていたかったんですけど、仕方がないですね」

「――照子ちゃん」

銀子が悲しげな声を出すが、天照大神は笑った。

「銀子ちゃん。自分にとっていちばんの大親友です。――どうか、お元気で」

「……照子ちゃん」

「お酒はほどほどにね。今はいいけど、三十過ぎたらぐっときますからね。あと、腐女子活動もそこそこに。せっかく夏樹くんというダーリンを見つけたんですから、引かれないようにしてくださいね」

「照子ちゃん!?」

「個人的に、銀子ちゃんがちゃんとしてくれるかどうかが心残りといいますか、そのままでいてほしいけど、そのままじゃやばいだろって思ってどうしましょうか?」

「私がいちばんどうしましょうって言いたいっすよ!?」

しんみりした別れは好みではないようだ。

天照大神は笑う。

銀子も笑った。

青春を共にした親友ともう会えないとなると、悲しくなるのは仕方がないことだ。

だが、そんな感情を表に出してしまっては気持ちよく見送れない。

「あ、できれば銀子ちゃんの収集物はいらなくなったら水無月家に預けておいてください。自分があとでしっかり回収しておきますので」

「ちゃっかりしてるっすね! 照子ちゃんの推している漫画を全部集めておくっすよ! そのキャラの同人誌も!」

「……さすが銀子ちゃんですね。楽しみです!」

「……おどれら、それでええんか! 別れがそれでええんか!」

一応は見守っていた小梅が我慢できず突っ込む。

「今生の別れにするつもりはないっす。太陽の神とか言っても、太陽神としての格はこっちの方が上っすから。さくっとぶっ殺して、銀子ちゃんが大往生する前には戻ってきますよ」

「じゃあ、私も頑張って長生きするっすね!」

「ま、俺様はお前らがそれでええならええんじゃが。どうせ、神々の時間などあっという間じゃ。また会うじゃろう」

「そうですね。そもそも小梅さんと自分は数百年会っていなかったですもんね。きっと再会の方が早いっすよ」

銀子や世話になった水無月家の面々にとっては長い時間だが、小梅や天照大神にとっては数十年などあっという間だ。

またすぐに会えるだろう。

「でも、照子ちゃん。一登くんのことはどうするっすか?」

「残念ですが……。彼への想いは、今の私の気持ちですので。神格を取り戻してしまうと、あまりそういうことは気にならなくなってしまうんだと思います。想いを育てる時間がもう少しあれば違ったのでしょうが……今回はさまたんに譲りましょう。私はあとで、その子孫を……」

「さすが神様っす! なんだかんだ言って諦めてねえっす!」

「いえーい!」

「いえーっす!」

ハイタッチする銀子と天照大神に、小梅はやれやれと嘆息した。

「水無月家の方々にはお別れ会をしてもらいましたけど、本当は一登きゅんたちにも盛大に送り出して欲しかったんですけどね! でも、夏樹くんもそうですけど、一登きゅんも異世界で力を手に入れちゃったじゃないですか。万が一、自分のために戦うなんてことになったら――それは望まないです」

「一応、聞かせてほしいっすけど、一登くんはさておき夏樹くんでも太陽の神は倒せないっすか?」

「無理ですね!」

天照大神は断言した。

由良夏樹では太陽の神を倒せない。

「夏樹くんの力が全盛期ではないこともそうですが、全盛期であったとしても難しいと思いますよ。人と一緒に生きるために力を削ぎ落とした自分の方が強いですから」

「どれだけ強いっすか、太陽の神って」

「強さ的な話ならそこまで脅威ではないんです。でも、会話もできない、思想も、行動理由も不明。戦いの過程で、人の世がどうなっても気にもしない。人を、世界を大切に思う我々とは相性がとても悪いんです」

「――なるほど」

「なので、バーサーカーな夏樹くんと周囲の被害なんて知ったこっちゃない太陽の神は混ぜるな危険です! マジで、戦わせちゃダメですからね!」

「……問題は、新たな神々どもが夏樹にちょっかい出してくることじゃのう」

「ですよね! 余計なことして仕事増やさないで、と声を大にして言いたいです! そんなわけで、ストッパーをお願いしますね!」

「無理じゃ!」

「無理っす!」

「使えませんね!? ヒロインパワーで何とかしてくださいよ!」

天照大神の叫びが河原に木霊する。

「まあ、夏樹もバーサーカーじゃが殺戮兵器ではないんじゃから、平気じゃろう」

「そうっすよ。そもそもどこに太陽の神がいるのかわからないのに、夏樹くんが行けるわけないじゃないっすか」

「……そうでしたね。良い意味でも悪い意味でも、なんか面白そうとかでちょっかい出しそうだったので、少し悩んでいました」

「照子ちゃんが夏樹くんのことをどう思っているかよーくわかったっす」

「まあ、難しい話はええじゃろう。よし、照子! 餞別じゃ、ラーメンおごっちゃるぞ!」

「やったー!」

「しばらく食べれないなら替え玉とトッピングなんでもありっすよ!」

「食い溜めするぞー!」

天照大神と小梅と銀子は、悲しみなど浮かべず、楽しい時間を過ごした。

天照大神は宣言通り、ラーメンをがっつり食べて満足した。

小梅と銀子も負けるものかと、替え玉を三玉食べた。

明日は体重計に乗らないことにした。

「じゃあね、照子ちゃん!」

「またのう!」

「うん! じゃあね、銀子ちゃん、小梅さん!」

また明日。

そんな軽い感じで、小梅と銀子は天照大神と別れた。