軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21「杏と話をするんじゃね?」②

由良夏樹が綾川杏と最初にであったのは、まだ幼い時だった。

「杏のお兄ちゃんになってくれるんだね! 嬉しいな!」

そうはにかんだ杏の顔を、――今の夏樹はもう思い出せない。

「――説明しよう! 三代目ギャラクシー河童勇者は異世界に召喚された勇者である! 聖剣さんに選ばれた宇宙の平和を守る河童の守護聖人として今日も戦うのだ!」

「ええいっ、いい加減にせんかい!」

「あぼるっ!?」

いつものノリでギャラクシーな河童勇者を始めた夏樹を小梅の細く長い足が蹴り飛ばす。

今度は顔だけではなく、全身が壁に激突して、家が揺れた。

「……痛い! 痛いよ、小梅ちゃん! 暴力は良くない!」

「まさか夏樹の口から暴力がどうこう出てくるとはさすがの小梅様も思わんかったのう!」

「え? そんな! 愛と平和がすべてのなっちゃんなのに!」

「あ、そういうのええんじゃ」

「…………うっす」

夏樹と小梅のやりとりを見ていた杏は、目を白黒させている。

「え? え? やっぱり、夢? これって夢?」

「夢じゃないってば」

杏はやはり夢なのだと思い込んでしまったが、一登がそうではないと再び言う。

「でも、この家は杏の家じゃないし」

「説明するのが難しいんだけど……杏が異世界で勇者をやっていたのは覚えてる?」

「…………うん」

「杏もいろいろあったみたいだけど、俺たちもいろいろあったんだ」

「そう、だよね。杏ね、剣に飲み込まれて……死んじゃったの?」

「生きているよ。ちゃんと無事。でも、杏が目覚めたくないって思っているって聞いたから、みんなで迎えにきたんだ」

「――でも、杏は……」

杏は、せっかく顔をあげていたのに、また下を向いてしまう。

「杏、帰ろうよ」

「……杏は、みんなに酷いことしたもん。杏が全部悪いもん。だから……戻れない」

しん、としてしまう。

反省はしているのだろう。

後悔もしていると思う。

だから、彼女は目覚めたくないのもわかった。

(……うーん、無理やり目覚めさせることってできないのかなぁ。反省しているのはわかったけど、それならちゃんと起きてとりあえず誠司さんだけにでも謝ればいいのに)

言いたいことはあるが、空気が読める夏樹は黙っている。

一登が頑張って説得してくれるのならそれでいい。

「杏ね、後悔しているの。なんで、お兄ちゃんにも、お母さん……ううん、春子さんにもあんな酷いことしちゃったのかって。お父さんにも謝りたい……でも、会う勇気がないの」

「なら、一緒に俺が謝りに行くよ」

「え?」

「俺はずっと杏が心配だった。兄貴のせいってこともあったんだろうけど、杏も意固地になっていたから途中で諦めちゃったけど、本当に謝りたいのなら、ちゃんと謝ろう」

一登が杏の前に膝をついて手を差し出す。

「ま、なんだ。俺も暇だから一緒に付き合ってやる」

「……ガープさん」

「異世界で同じ釜の飯を食った仲だしな。アマイモン様も杏のことは心配なさっていた」

「……アマイモンさんも」

杏は、一登の顔を見る。

一登はいつもと変わらない優しい笑顔を浮かべた。

「……一登、ずっとごめんなさい。それ以上に、ありがとう」

涙を流した杏は、そっと一登の手を握った。