作品タイトル不明
101「七森家で変化じゃね?」②
二カ所のトイレを占領していた七森康弘と七森英智は、停止から解放された瞬間、トイレをいろいろな意味で使えなくしてしまった。
数年という間、停止をかけられていたがふたりは恥ずかしい思いをしただけであり、肉体面では何も問題はなかった。
むしろ、数年で老けた周りに対し、ふたりは当時のままだ。
「……まさか、数年も停止させられているとは……千手の力はそれほどだったか」
風呂に入り着替えを済ませた康弘は、最初こそ千手に対しての怒りはあったが、「中学生の嫌がらせ」として受け入れていた。
康弘なりに、千手に対して思うことはあるようだ。
「ご当主様に、その千手様のことでご報告があります」
「……聞こう」
長年支えてくれている側近も少し老けていた。
気のせいか、どことなく距離があるような気がするが、気にしないことにする。
「千手様は、ご当主様と英智様を停止させた後、七森家を出奔なさいました」
「だろうな」
妻は、愛人の子である千手を心底嫌っている。
康弘は妻の感情を無視して千手を引き取ったのだ。
そんな千手が、自分のことはともかく息子を停止されたのだ。
出て行かずとも妻が追い出しただろう。
「千手様の才能は院でも知られておりましたゆえに、院が学園に入れることで保護しました」
「そうか」
「その後、七森の名を名乗りながらもフリーとして活動していたのですが……」
「まさか死んだとは言うまい?」
「いえ……なんと申しましたらいいのか、院の上層部から重要人物とされております」
「なぜ、だ」
「詳細はわかりません。ただ――」
「ただ?」
「中学生と仲良くしているようです」
「なんでぇ?」
院の上層部から重要人物とされていることも理解できないが、そこから中学生とどう話が繋がるのかわからなかった。
「まさか、その中学生は女か?」
「いえ、男の子のようです」
「――ふむ。もしや、千手はそういう趣味が」
「調べた限り、そのような関係には見えませんでした」
「……続けてくれ」
停止から解けたばかりのせいかうまく頭が働かない。
「千手様は、最近になって神無家と揉めたそうですが、なぜか神無家次期当主の神奈征四郎と友人関係にあるそうです」
「……他家の揉め事に首を突っ込んだのか。あの家は、自称当主が幅を利かせている。何か問題もあったのだろう」
「続いて、京都で酒呑童子一族を相手に立ち回り」
「どうしてぇ?」
「見事生還したそうです」
「嘘ぉ!」
「はい。真偽は不明ですが、――鬼たちに勝った、と」
「しゅごい!」
京都は、院の支配下にない。
鬼たちが支配する裏京都があまりにも恐ろしいゆえに、手出しできないのだ。
「そうそう。安倍一族は長老連中を含め全て引退しました」
「えー、あの老害たちがぁ?」
「はい。現在は神童安倍東雲が当主となり、京都の霊能力者たちを統率しています。そんな安倍東雲と千手様は友人のようです」
「交友関係すごくなーい?」
康弘は驚きを重ねて、混乱していた。
安倍家は院の霊能力者を嫌うで有名だ。
それでなくても京都の霊能者は院とは不仲なのだ。
一体全体なにがあったのか、と思う。
「さすがに、デマかと思いますが」
「まだあるのぉ?」
「件の中学生と一緒にUFOにのって宇宙進出したとかしていないとか」
「流石にそれはありえなくなーい? 本当だったらやばくなーい?」
「我々もさすがに噂に尾鰭背鰭がついていると思っていますが、一応」
「あい、わかった。千手とは一度話をしなければなるまい。その前にくだらぬ復讐などせぬよう英智に伝えておけ」
もともと才能も実力も長男英智よりも千手の方が上だ。
数年の間に、さらにその実力に磨きをかけただろう。
英智が怒りに任せて千手を襲っても返り討ちだ。
康弘としても、千手との関係を修復したいのだ。
「いえ」
「どうした?」
「すでに英智様は千手様に復讐しようと屋敷を飛び出しました」
「我が子ながら行動早くなーい?」