作品タイトル不明
83「合流じゃね?」
夏樹たちは、魔王の部隊と交流した。
知らせを受けて走って出迎えてくれたのは、魔王ギーゼラ・シラーだ。
漆黒のマントと軍服のような衣装を身に纏った彼女は、ところどころを傷を負っていていた。
「由良夏樹! 無事だったか!」
「ちーす! 魔王さんも元気そうで何よりでーす」
「あ、相変わらずだな」
「とりあえず、ヒールをどーぞー」
「む。助かる。私はあまり回復は得意ではないのだ」
ギーゼラの傷を癒した夏樹は、キャンプ地となっているこの場を探った。
「……重症者が結構いるね。回復しようか?」
「頼めるだろうか?」
「そりゃもちろん」
「ありがたい。深い傷を負った者たちを癒せるほど優れた回復魔法を使えるものはいないのだ。ガネーシャ殿にも炊き出しで世話になっている。戦場で美味い飯が食える、それだけで兵士たちは喜ぶのだ」
回復の手段を持つ夏樹、祐介、千手、東雲、円の五人で重症者のいるテントに足を運んだ。
小梅たちはガネーシャの元に向かい、炊き出しを手伝うこととなった。
「――こりゃ、また酷いな」
テントに入るとむせかえるような血の匂いがした。
「……人間の中にも強者はいた。とくに、その、改造されて魔族の力を取り込んだ者は強いと同時に兵士を動揺させたのだ。その結果が、これだ」
「まったく、人間はさぁ」
うんざりする夏樹の背中を千手が叩く。
「異世界人のことを考えても仕方がねえだろ。まずは、苦しんでいる奴らを助けるところから始めようぜ」
「――うん」
異世界人への負の感情を、改めて抱きかけていた夏樹だったが、千手のおかげで霧散した。
もう奴らのせいで心を乱されたくはない。
大きく深呼吸をすると、治療に取り掛かる。
幸い、まだ魔力はあるので片っ端から「ヒール」をかけていく。
祐介も同じくヒールをかけて重症者を次々と治していった。
大地の勇者の本質に覚醒した彼の回復魔法は魔力ゴリ押しの回復魔法でしかない夏樹のヒールとは効果が違った。
夏樹のヒールは傷を塞ぐが、祐介のヒールは傷だけではなく体力面でも回復させている。
「……さすがだね、光の祐介くん」
「今までの佐渡が闇みたいなこと言ってんじゃねえよ」
ぺしん、と千手に頭を叩かれる。
千手は夏樹にツッコミをいれながら、重症者に霊術を施していく。
完全に治すことはできないが、死なない程度に止めることはできる。順番を待つ怪我人がしなないように手際よく応急処置をしていた。
「……だってさ、祐介くんって出会った頃からダークサイドじゃん」
「……まぁな。否定はできねえな」
この世界で尊厳も何もかも踏み躙られ、死んで地球に戻っても、夢だったのか現実かわからず部屋の中に閉じこもって足を抱えて怯えていた。
その後、明るくはなったが、祐介は常に負の感情を持っていた。
祐介の方が、いろいろ割り切って暴れた夏樹よりも根は深かった。
もちろん、夏樹が何も傷ついていないわけではないが、祐介の方が心の傷は深かった。
しかし、今の裕介は違う。
無駄にキラキラと輝いている。
正直、鬱陶しいほど。
「ま、愛は偉大だってことだな」
「……千手さん」
「なんだよ?」
「ちょっと疑問なんだけど、ソーニャさんってまさか地球についてくるつもりじゃないよね?」
「……俺は知らねえが、佐渡がこの世界に残るって選択肢はねえだろうなぁ」
「祐介くんが光にいるか闇にいるかは、ソーニャさん次第だね」
「だな」