軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2「新たな刺客が現れたんじゃね?」①

小梅、銀子、ジャックとナンシーに見送られて家を出た夏樹。

思えば、異世界から帰還後、中学校にまともに行っていないし、授業に出た記憶もない。

夏樹の通う中学校は、厳しい先生こそいるが、校風は緩めなので口うるさく言われることはあまりない。生徒と教師の関係も良好だ。

担任の顔は思い出せないが、クラスの席くらいは覚えている。

異世界で殺伐とした日々を送っていたからこそ、学校に通うという当たり前を楽しもうと思った。

思い返せば、異世界では字が読めない子供も多く、計算ができない大人もいた。

魔族との戦いと、貴族たちが平民に時間と金を費やさないこともあり、平民の生活水準はかなり低かった。

対して魔族たちは、貴族に代わる魔王軍幹部という立場の魔族たちがいたが、それぞれ未来のために子供を、民を大事にしていたことを覚えている。

放っておけば、いずれ異世界は魔族主体の世界になるだろう。

「にしても、狙ってやったとはいえまさか優斗の奴が本当に勃たなくなっちゃうなんて、ウケるんですけど。散々、使ったようだからもういいっしょ。思春期に発散できないのは辛いかもしれないけど、今までしていたことを考えれば安い安い」

たとえ、優斗に今後、心から愛する人ができたとしても、生涯を共にしようとする人が現れたとしても、今までの行いを悔い改めたとしても、封印を解くことは絶対にしない。

それだけは絶対にありえない。

「きっと反省もなにもしないんだろうけどさ。問題は、魅了が切れたことで、今まで優斗に夢中だった女の子たちがどう出るかなんだけど……やべぇ、どうでもいいわー。興味がわかねー」

個人的に、優斗ハーレムの面々に興味はない。関わりたくもない。

好き勝手されたのだから復讐されても自業自得だ。復讐する価値があるのかも疑問だ。

そもそも優斗の魅了はさして強くないので、女の子側も自己判断で優斗の傍にいたことは間違いないので、本当に勝手にやってほしい。

一登が巻き込まれたら助けるが、優斗だけの問題でしかないのなら放置一択だった。

「ねえ、夏樹!」

ふわぁ、とあくびをする。

昨晩は、みんなで盛り上がり過ぎたせいで少し寝不足だ。

とくに小梅と銀子がいい感じに酔っ払って、どちらが美脚か勝負するために生足披露したり、お互いに自信のある身体の部位を見せ合ったりしていたので、悶々としてしまったのは内緒だ。

大変良いものが見られてありがとうございます、とお礼を言いたくなってしまうほどだった。

「ねえ、夏樹ったら!」

うへへ、と脳内で小梅と銀子の昨晩の姿を再生していると、いきなり通学用バッグが掴まれた。

バッグを掴んでいたのは、ボーイッシュな雰囲気を持つショートカットの少女だった。短めのスカートの下にスパッツを履いた、いかにも運動できますという感じだ。足を惜しげもなく出しているのは自信があるのかもしれないが、小梅の美脚の足元にも及ばない。

「なんですか、急に?」

「無視しないでよ、夏樹!」

「あの、どちらさまですか?」

「え?」

「知らない人に、呼び捨てにされるとか怖いんですけど。防犯ブザー鳴らしてもいいですか?」

夏樹も中学生だ。変質者が怖いので、防犯ブザーを持っている。

今は変質者など気にしないが、うっかり殺してしまったら大変だ。防犯ブザーで対処できるならその方がいい。

「知らない人って、ふざけないでよ! あたしだよ、松島明日香だってば! わざとやってるでしょう! 小さい頃遊んだじゃん! 幼馴染みのこと忘れるとか、ありえないでしょう! ていうか、この間だって話したばっかりじゃん!」

夏樹は大きく首を傾げた。

日本に帰還してから、こんな子と話したことはないので、おそらく異世界召喚される前だ。夏樹にとっては体感時間で六年以上なのでかなり前のことだった。

幼馴染みと言われても、女の子の幼馴染みはいない。

夏樹にとって、幼馴染みと呼べるのは三原一登だけだ。

しかし、不意に思い出した。

いろいろあって忘れていたが、一登が注意するよう言っていた相手の名が松島明日香だった気がする。

「思い出した、バスケットボール部の」

「何言ってんの? そういう冗談はいいから! そんなことよりも聞いてよ。優斗ったら、朝からいきなり勃たなくなったかもしれないから試させろなんて連絡してきたんだけど」

「はぁ」

「ていうか、ちょっと顔がいいから付き合ってあげていたけど、なんであんな奴が好きだったのかよくわかんないんだよね」

「そうっすか」

「あ、付き合うっていっても気軽な関係だったんだけど、どうしてあんな男と気軽でも関係持ったのかわからないっていうか」

「大変っすね」

「そうなの! 別に好きでもなんでもないから! そこは誤解しないで欲しいの。それに、あいつって色々な女の子と関係持っているけど、あそこが小指より小さいんだから」

「ぶっはっ!」

勝手にしゃべっている明日香を適当にあしらっていた夏樹だったが、明日香の爆弾発言に我慢できず吹き出してしまった。

(な、なんで、一登といいこの子といい、優斗の股間事情を俺に話すんだよぉ!)