軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

60「一登なら心配ないんじゃね?」④

――もう殺そう。

由良夏樹は結論付けた。

基本的に、自分は寛容で寛大な人間だと思っている。

それを甘いともとってもらっても構わない。

しかし、限度がある。

自分に害を与えるのなら、我慢しよう。

もともと興味のなかった人間が羽虫のようにまとわりつこうと、鬱陶しいだけだ。まあ、いい。

だが、大切な家族や友人に手を出すのであれば、話が変わってくる。

「――もう笑えねえよ、お前」

由良夏樹は、松島明日香を殺すことに決めた。

「やめてくれ、夏樹くん!」

一登の叫びが聞こえたが、気にせず夏樹は聖剣を振り下ろす。

彼の心配しているのは杏のことだ。

夏樹は、杏を傷つけるつもりはないのだ。

「――死ね」

聖剣が明日香の思念体を斬り裂く。

「ちっ」

手応えはなかった。

ただ、斬ることはできたようだ。

明日香の思念体が、左右に分かれる。

「――どう、して」

「うるせえ、話しかけるな」

「どうしてどうしてどうしてどうして」

斬られたせいか、もとからなのか、明日香の様子がおかしくなる。

夏樹は気にせず剣を横に振った。

明日香の思念体が、横一線に斬り裂かれる。

やはり手応えはない。

明日香自身も痛みを感じていないのか、反応はなかった。

しかし、彼女の目は夏樹を捉え離さない。

「どうして! どうして、みんなこんな女ばかり!」

「知るか。俺はお前たちなんてどうでもいい」

明日香は杏に思うことがあるのかもしれない。

嫉妬なのか、また違うなにか別の感情なのか、夏樹にはわからないし、わかりたくもない。

わかる必要もなかった。

「そんなに杏が好きなら、杏に殺されてしまえ! ――絶望しろ!」

「なんでぜっくんみたいなこと言ってるんだよ……うざいなぁ、早く消えろ」

三度、剣を薙ぐと明日香の思念体は完全に消えた。

死んでないことは理解している。

どこにあるか知らないが、身体に精神が戻ったのだ。

「さてと、――一登」

「……うん」

「任せたぞ」

「――うん!」

交わす言葉はそれだけでいい。

夏樹は円たちに視線を向け、頷き、地面を軽く蹴った。

一登は、夏樹に「任された」ことで、力が与えられた気がした。

気のせいだろうとわかっているが、追いかけていた夏樹に託されたのが嬉しい。

「――火輪ちゃん」

「はい、ご主人様」

「――全力で、杏を救う。力を貸してくれ」

「わたくしの力はいかなる時もご主人様のものですわ」

「ありがとう」

一登が魔力を火輪の聖剣に込める。

――真紅の炎が翼となって吹き荒れた。

一登はまっすぐ杏を見る。

彼女は意識はなく、神剣を持つ腕だけが上がっている状態だ。

明日香によって神剣が目覚めてしまったのだ。

それでも、すべきことはかわっていない。

「――杏。今、助けるよ」

炎の翼を広げ、一登は火輪の剣を力いっぱい振り下ろす。

杏の身体を使い、神剣が迎え撃つ。

剣と剣が激突した。

――ぱきんっ。

神剣の刀身に亀裂が走った。