作品タイトル不明
3「異世界人にも誠意があるんじゃね?」①
――異なる異世界に召喚されてしまった由良夏樹は、少女の首に聖剣を当て殺気を放っていた。
おそらく戦う術など持たないのだろう。
少女はガクガクと身体を震わせ、涙を浮かべている。
同じ空間にいる人間たちも、夏樹の殺気に当てられて大半が泡を吹いて失神している。
「――夏樹、やりすぎよ」
「……聖剣さん」
背後に現れた聖剣さんが、今にも少女の首を斬ろうとしている夏樹の腕に手を添える。
それだけで夏樹の腕は動かなくなった。
聖剣さんは夏樹と契約しているため、離れることはない。
門の神が、夏樹だけを対象にしていたのか、聖剣さん込みだったのかまではわからない。
だが、こうして一緒にいる。
ふたりならば、どんな世界だろうと怖くない。
「まず、情報を得ましょう。ここがどこで何をしたいのか、元の場所に戻るにはどうするのか、それらがわからないと行動するだけ無駄よ」
「そう、だね」
夏樹は剣を引いた。
代わりに少女の首を掴んで持ち上げる。
「あ、ぐ、う」
「こんにちはー。俺は、由良夏樹! ぴっちぴっちの十四歳でーす! え、カメラもう回しているんですか? やだー!」
「……夏樹、真面目にやらないと張り倒すわよ」
「うっす!」
聖剣に釘を刺された夏樹は、少女の顔を眼前に持ってくると、目を合わせて問う。
「あんたが俺を召喚したことはわかった。ただね、俺は望んでこの世界に来たわけじゃないの? これって、誘拐なの。お話わかる?」
少女は苦しさに顔色を悪くしながら、必死に顔を上下させる。
「話が通じるなら、あっちの世界よりもマシか」
「むしろ、あっちの世界よりもヤバい世界って珍しいんじゃない」
「違いない」
会話ができるなら、まず、会話からだ。
最初から話が通じなかったブレイバーズ王国の人間と違うことを祈り、夏樹は少女の首から手を離す。
床に膝をついた少女は、何度も咳き込みながら酸素を求めて荒い呼吸を繰り返す。
しばらく喋ることができなかった少女だが、呼吸がなんとか整うと、恐る恐る顔を上げた。
そして、再び頭を下げる。
「……こ、この度は、こちらの都合で無理やりお呼びしてしまったことを心から謝罪申し上げます」
「……うん」
「へぇ」
最初に謝罪があったことは、正直驚きだった。
攻撃的な夏樹に「何をする」と文句でも言ってくると思っていたからだ。
「言い訳にしかなりませんが、私たちは、いいえ、我々は他の世界から勇者様を無理をしてでも召喚しなければならないほど追い詰められているのです。身勝手だと承知していますが、あなたに勇者としてのお力があると見受けられます。どうか、私たちをお救いください」
「いいだろう。あんたたちだけが全部悪いってわけじゃないし、ちゃんと話ができるようだし。誠意を示してくれるのであれば、俺も誠意で返そう」
夏樹は勇者らしく優しげな笑みを浮かべて、彼女に手を差し伸べた。