作品タイトル不明
20「ファンタジーと言ったらオークさんじゃね?」②
――オーク。
ファンタジーを代表する種族のひとつ。
冒険者を襲うモンスターであったり、魔族として戦士だったりと世界観によってその立ち位置は違う。
中には、女性を襲う、というイメージも持つ者もいるだろう。
外見も世界観によって様々だ。日本人には、豚を連想する外見が想像しやすいと思われる。
――そんな異世界を代表するオークが、隣にいてテンションが上がらない中学生がいるだろうか? 否。いない!
「お、オークさん!」
「オックンって呼んでほしいど」
「オッくん?」
「おう!」
「俺のことはなっちゃんって呼んでね!」
ウインクする夏樹に、オーク族の戦士オックンはちょっと困惑したようだったが、すぐに笑みを浮かべてくれた。
「わかったんだ。なっちゃん!」
「オッくん!! これで俺たち、マブダチだね!」
「お、おう?」
「とーもーだーちぃー!」
「おで、なっちゃんと友達?」
「おうよ!」
「おで! なっちゃんと友達!」
「おう!」
夏樹とオッくんはがっつり握手をした。
「あ、でも。俺って勇者だったから、魔族さんたちをめっちゃ殺したし、オークさんもぶっ殺したと思うんだよね」
「気にしなくていいど。オーク族も誇り高き戦士なんだ。たったひとりの勇者に大勢で挑んで負けたんなら、恨みはないど」
「…………ありがとう」
「いいんだど。おでは、なっちゃんと話をしてみたかんだど」
「俺と?」
オッくんは夏樹を見た。
彼の目は優しく、穏やかだ。彼の瞳から、夏樹に対しての恨みなどは見えない。
ただ、好奇心と興味が見え隠れしているように伺えた。
「おでは、なっちゃんの戦う姿を見ていたんだど」
「うん」
「とても悲しい戦いをする子だと思っていたんだど」
「そっか」
「だけど、安心したど。なっちゃんにも仲間がいたんだど。ちゃんと笑えているようで、よかったど」
「――オッくん」
夏樹は口元を手で覆って感動した。
気を抜けば涙が溢れてしまいそうだ。
召喚し使い潰そうとした異世界人は夏樹のことを気にしていなかったというのに、敵対していた魔族たちが夏樹をきにかけてくれている。
これはどんな皮肉だと思う。
魔族と接すれば接するほど、後悔などしていなかった過去を思い出し、ちくり、と心に痛みを覚えるようになってしまう。
(祐介くんじゃないけど、俺もできることなら魔族側に召喚されたかったよ)
心からそう思った。