軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

61「みんながいれば百人力じゃね?」

「あ、そうだ……水無月家でどんなお話になったんっすか?」

小梅と頬を引っ張り合っている銀子が、尋ねてくる。

「その状態で話をするんだ……別にいいけどさ」

夏樹は、水無月家で起きたことを語る。

監視が付くこと、生贄のこと、土地神のこと、そして土地神の死を望まれていることを。

「はっ、たいそうな神じゃな。人間を生贄にしたところで百年も力が維持できない程度なら、素直に土地神としての役割を諦めれば良いじゃろうて」

「……小梅ちゃん、その口調でいくんだ?」

「個性は大事じゃからな!」

夏樹の残念そうな呟きに、どのような考えで現在の口調になったのか不明であるが、小梅は続けると主張する。

「しっかし、生贄っすか。まあ、昭和あたりまでそういう風習がなかったわけじゃないんすけど、現代でもそんなことをしようとするなんて……ちょっと理解が及ばないっすね。ま、名家には名家の事情があるんでしょうけど」

「そもそも俺ら神族は人間との関わりは最低限にしておるんじゃがな。土地神は自然から生まれたようじゃし、人間贔屓なんじゃろうな」

「……人間のご家庭で、ご飯食べて、風呂入っている小梅さんが言うと説得力があるっすねぇ」

「ああん?」

「やりますか!?」

「話が進まねー」

夏樹が咳払いすると、ふたりは喧嘩をやめて居住まいを正す。

「んで、殺すんか?」

「もちろん、殺すよ。というか、殺す以外に救う方法がないでしょう」

「そこで殺す選択肢をしても、土地神を殺せる人間がそうそういないっすけどね」

「俺様なら余裕じゃがな!」

「じゃあ、小梅さんがやればいいじゃないっすか」

「だーれが見ず知らずの人間のために面倒臭いことせんとならんのじゃ!」

「……ゴッドの孫がこんなんとか世も末っすね」

土地神を殺すのは良い。

那岐爺も、殺すことが消滅とは言わなかったので、救いがないわけではないのだろう。

夏樹には、殺傷能力の強い力しかない。

ひとつは、聖剣。雷の力を持つ、異世界において最強の剣だ。聖剣で異世界の魔神を殺しているので、その力は折り紙付きだ。ただし、制御ができない。かつて、異世界で今よりも力を持っていた夏樹でさえ、完全な制御下にはおけなかったのだ。使えないわけではないが、全力を出せず、またそれでも力は強すぎるので中途半端だ。

もうひとつは、海の勇者としての力だ。海の勇者とは、水、氷、闇の力を持つ。他にも大地の勇者とか、空の勇者とか、森の勇者とか居たが、強いか弱いかでははっきり言って弱かった。

海の勇者と聖剣の勇者の二重取りである夏樹だからこそ、異世界で無双できたのか、それともまた違う何かがあるのか。もしかすると、完全なる血統が関係しているのかもしれないが、わからない。

海の勇者としての力も、これはこれで使いこなせていない。聖剣は剣として使う一方で、聖剣の雷を使うことができるというシンプルなものだが、海の勇者は水、氷、闇属性の魔法を使うことに特化している。勇者であるため、その特化がとんでもなく、魔力も桁違いで、威力も増加するのだが、そのせいでやはり使い所に困る。

魔王から託された魔剣のほうが、現状では使い勝手がいいのだが、土地神を殺せるかとなると微妙だ。力が弱いわけではなく、単純な力ならば聖剣に近いのだが、相性がいいわけではなく、魔剣もまだ夏樹を使い手として認めていないので全力を出せていない。

「どうしたっすか、そんな考え込んで」

「いや、土地神を殺すのはいいんだけど、手加減が……」

「やべーっすね。土地神を殺すのに手加減を考える人間なんていないっすよ」

「力の制御が不安定なんだよ。小梅ちゃんに撃った雷でも、聖剣の力をちょっと借りただけだし」

「俺の自慢の翼をローストした力を、ちょっと借りただけ、じゃと。おどれはどんだけ力を持っておるんじゃ!?」

「さあ?」

「えっと、つまり、夏樹くんは力が制御できないから……どう困っているんすか?」

「水無月家が更地になりそう」

「こわっ、この子こわっ! 小梅さん、結界とか張ることはできないっすか?」

その手があったか、と夏樹が期待した目で見るが、「面倒な人間に関わりたくないんじゃ」と小梅は嫌がってしまう。

さてどうしようかと思った時、コンコンと部屋の扉がノックされる。

「はーい」

「ジャックだ。入ってもいいだろうか?」

「もちろんだよ。どーぞ」

「失礼する。春子殿が食事ができたとお呼びだ。あと、その、聞き耳立てるつもりはなかったのだが、すまない」

「別にいいよ。隠すことじゃないし」

「よかったら、私の力を貸そう」

「え?」

「宇宙的結界で親友の攻撃からこの街を守ろう」

「ジャック!」

嬉しそうにする、夏樹。しかし、ジャックの表情は固い。

「どうだろうか、小梅殿。水無月家という人間ではなく、夏樹と私という友人に力を貸してもらえないだろうか? 正直なところ、夏樹の力は強大ゆえ、不安が残る」

「ふん! いいじゃろう! その代わり、夏樹の血をもらうんじゃ!」

「え? 翼を治すためなら、血を渡すつもりだったけど」

「このぼけぇ! そこで夏樹が素直にうんと言わんと、力を貸せんじゃろう!」

「素直じゃないっすねぇ」

小梅の意図がわかり、夏樹は頭を下げた。

「ありがとう!」

出会ったばかりの親友たちの力があれば、怖いものなしだった。

「ジャック、小梅ちゃん、銀子さん、俺――思いっきり殺るね!」

「「「いや、手加減して!」」」