軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20「一緒にお酒飲んだらマブダチじゃね?」

ソーニャは感動していた。

人間の国で王女付きメイドをしていただけあり、各国の酒を嗜む程度だが飲んだことはある。

しかし、これほど美味い酒に出会ったことがなかった。

筒形の容器に完全密封されているだけでも驚きなのに、喉にガツンとくる炭酸のパンチ力は未知の体験だ。

「このビールうめぇええええええええええええええええええええええええ!」

えぐみなどは一切なく、苦味のあとにふんわりした甘さがある。

いつまでも飲んでいられそうだ。

「おっと、ビール一本飲んだだけで感動されては困るっすよ」

「まだまだ酒はあるんじゃぞ! 夏樹! ウイスキー用意じゃ!」

「へい! 喜んで!」

薄暗くなった異世界の空に叫ぶソーニャに、更なる別世界の酒がもてなされる。

夏樹がアイテムボックスから取り出したのは、割る用に買ってきたウイスキーだ。

ボトルを受け取った小梅が軽く氷結魔法を展開する。

「まず、どこのご家庭でも当たり前に使われる氷結魔法でウイスキーをしっかり冷やすんじゃ」

「ウイスキーがとろっとなったら飲みごろっす! 夏樹くん、次はグラスっす!」

「へい! お待たせしやした!」

グラスを受け取った銀子が小梅に手渡すと、再び氷結魔法を展開した。

「続いてグラスも霜が張る程度に氷結魔法でひんやりじゃ!」

「ウイスキーを入れた時に温度変化が起きないくらいが理想っす! グラスは凍らせなくても、氷を入れてからよーくぐるぐるするといいっすよ!」

レジャー用のテーブルの上に、たんっ、と心地よい音を立てて凍ったグラスが置かれる。

「夏樹、氷さんの出番じゃ! マドラーさんも忘れるでないぞ!」

「へい! お任せくだせえ!」

夏樹はアイテムボックスからアイスペールに山盛りの氷と、金属製のマドラーを小梅に手渡す。

小梅はマドラーをくるりと器用に回す。

「まず、ちょっと小ぶりの氷を入れるんじゃ。続いて中ぐらいの、んで、大きめの氷をグラスに合わせて入れていくんじゃ!」

「下から上に向かって、氷を大きくしていくのがポイントっす! その方が混ぜやすいっす!」

「さあ、出番じゃ! 主役のウイスキー様じゃ!」

「いえーいっす!」

とくとくとくっ、と音を立ててウイスキーがグラスに注がれる。

琥珀色の液体が香ばしい香りと共に、氷を撫でていく。

「まあ、量は適量でええじゃろう」

「グラスに合わせて三十ミリから四五ミリくらい入れるとちょうどいいっす!」

「そして、ウイスキー様を支えるのがソーダ様じゃ!」

「できるだけ氷に当てないように注ぐと炭酸飛ばなくていいっすよ!」

マドラーで隙間を作り、ゆっくり置くように炭酸を注いでいく。

「注いだ時点で混ざっとるんじゃが、一回転くらい混ぜるんじゃ。気分的にのう」

「かー、もう香りが最高っすね!」

「レモンを絞る絞らないは好みの問題じゃが、今回はなしじゃ!」

「さあ、おあがりっす!」

「へい! ソーダ割り一丁!」

折り畳み椅子に座ったソーニャが、出されたソーダ割りを手に取る。

褐色の小さな手が、よく冷えたグラスを握る。

「……容器が冷たいって新鮮だな。うわっ、しゅわしゅわしているぞ! ……いい香りだ。ドワーフの作り酒に似ているが、違う。なんだこれは」

「まあまあ、とりあえず飲んでみるんじゃ」

「話はそこからっすよ」

「わ、わかった。いただきます!」

グラスに口をつける。

ソーニャのソーダ割りを味わい、ごくり、と飲み込んだ。

そして、大きく息を吸い、叫んだ。

「なんじゃこりゃぁあああああああああああああああああああああ! うめぇええええええええええええええええええええええ!」

ソーニャは、グラスに残っていたソーダ割りを飲み干すと、小さくげっぷをしてから、名残惜しそうにグラスを置いた。

「……一瞬で終わっちゃった」

彼女の顔は寂しそうだった。

例えるなら、夏休みに出会った友達が新学期の始まりと共に去っていく――そんな寂しさが浮かんでいた。

しかし、友達はいつだって友達だ。

「なにを言っておるんじゃ! おかわりすればええだけじゃろう!」

「そうっすよ! 自分たちの飲み会はこれからっす!」

「い、いいのか?」

戸惑うソーニャに、小梅と銀子は親指を立てた。

「一杯飲んだらマブダチじゃ!」

「そうっす! 一緒に酒飲んだら親友っす!」

「……お前たち――ありがとう!」

ソーニャは気持ちのいい異世界人に涙を流し感謝した。

「へへへ、いいってことじゃ!」

「というわけで夏樹くん、次はもう少しいいやつをお願いしまっす!」

「へい喜んで! おかわり入りましたー!」

小梅たちの晩酌のせいで飲むことはないが、作り慣れたソーダ割りをさっと作った夏樹は三人の前にグラスを並べた。

夏樹は気の利く男なので、こんなこともあろうかとスーパーで買ったからあげを添えることを忘れない。

「――とぅくん、夏樹……おどれはなんてできる男なんじゃ」

「――とぅくん、夏樹くん……最高っすよ!」

「どやぁ!」

ドヤ顔をする夏樹に親指を立てた小梅と銀子は、ソーニャと乾杯してソーダ割りを飲む。

そして、唐揚げを口にいれた。

もぐもぐもぐ、とよく噛んで飲み込むと、再びソーダ割りを飲む。

「うまいんじゃぁああああああああああああああああああああああああ!」

「マリアージュぅうううううううううううううううううううううううう!」

「なんだこれうめぇえええええええええええええええええええええええ!」

この日、ソーニャは飲み友達をふたり得たのだった。