軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

8「魔王さんって魔王っぽくなくね?」②

「はいはい、それじゃあ俺は祐介くんを助けるために――あれ? なんか知らない間に、ガネーシャさんに祐介くんとメイドさんが乗って高笑いしながら騎士を薙ぎ倒しているんだけど!?」

「なんじゃと!? おおう!? ……今、気付いたんじゃが、ガネーシャがおらんのう」

再びギーゼラを引き離そうとした夏樹は、強化された瞳に映る祐介とメイドとガネーシャの姿に、驚き、動きを止める。

隣に立った小梅も、びっくりして目を丸くしている。

「本当だ! ガネたんがいない!? あ、魔力が切れちゃった! 小梅ちゃん、百円入れて!」

「おどれは観光地にある双眼鏡か!?」

第二射を放つことはできなかったが、ガネーシャが祐介を救ってくれたようでなによりだ。

魔力を探知してこっちに来てくれるだろう。

「――さて、魔王さん」

「あ、ああ」

「俺のマブダチが無事のようだから、とりあえずお話ししよっか?」

「……わかった。我も勇者とゆっくり話をしたいと思っていた。正直、怖いが、向き合おうではないか」

「やだなー、なっちゃんこわくないよー。こわくないよー。河童大神様の遣いだからやさしいよー」

「その意味がわからん言動が怖いのだ!」

「ひどい! なっちゃんショック! 悲しくて泣いちゃう! あ、転移酔いしている仲間のために、お部屋用意してもらえますか?」

「だから、情緒!」

魔王は息が切れるまで夏樹にツッコミを続けた。

魔王城のとある部屋に、夏樹たちはいた。

「……では、改めて話をしよう。勇者由良夏樹よ」

「うん」

部屋は縦長で、長机がある。

まるで「ふふふ、奴は四天王でも最弱」と魔王四天王が話を始めそうな雰囲気のあるいい感じの部屋だ。

しかし、夏樹のテンションはあまりあがらなかった。

「……でもさ、話の前に……なーんで、魔族側は魔王さんと娘さん以外気絶しているのかな!?」

「みんな勇者が怖いのだ」

夏樹の対面に座るのは、魔王ギーゼラ・シラーと娘であるラーラ・シラーだ。

彼女たちを挟むように四天王が左右にふたりずつ座っている。

狼の獣人、サキュバス、単眼族、オーガが、仲良く気絶している。

四人は勇者由良夏樹との話し合いの会議を拒絶して部屋に閉じこもってしまった。

ラーラによって無理やり連れてこられたが、夏樹を見た途端に悲鳴をあげて気絶してしまった。

せめて形だけでもと思ったギーゼラによって椅子に座らせられている。

「……仮にも魔王とその四天王たちが情けないっすねぇ」

「つーか、扱いがなまはげなんだよなぁ」

夏樹と同じ側に座り、呆れているのは転移酔いから立ち直った青山銀子と七森千手だ。

「酒呑童子でもここまで恐れられとらんかったよ」

安倍東雲も、転移酔いから醒めたようで、会議に参加してくれている。

いくら夏樹が強くとも、まだ子供だ。

大人たちが一緒に話し合いに加わってくれると心強い。

「ふっ。いつだって強者は誤解されやすいものです」

幼くありながら誰よりも早く転移酔いから復活した義政少年も、この場にいる。

「――察するに、そなたたちが勇者由良夏樹の四天王でよいのだろうか?」

「ならば紹介してやるんじゃ!」

夏樹の隣に座る小梅がドヤ顔をして紹介を始める。

「まず、俺様こと小梅・ルシファーさんじゃ! 夏樹と同等の力を持つ、美脚天使とは俺様のことじゃ!」

「び、美脚天使? って、そなたは勇者と同等の強さを持つのか!?」

「あったりまえじゃ。俺様と夏樹はバトった仲じゃからな! 夏樹とガチバトルしてここにいる理由が、同じく戦ったおどれにはわかるじゃろう?」

「――いや、そなたの力を疑ってはいない。こうやって対峙しているだけで、強さは伝わってくる」

「そうじゃろ、そうじゃろう!」

小梅は満足そうに笑顔を浮かべた。

「ま、俺様を筆頭に、京都をシメる霊能力者の安倍東雲さんじゃ! 特技はメンヘラに好かれることじゃ!」

「……小梅はん、自分泣きますんよ?」

「あー、夏樹ほどじゃないが、人間枠では強者じゃろう」

「安倍東雲です。よろしゅう」

東雲は笑みを浮かべ、会釈をする。

小梅の紹介通り、人間という括りでは異世界組の誰よりも強い。

その力を感じさせないのが、東雲の強さでもある。

「そして、こやつが七森千手じゃ。同じく人間じゃが、安心せい。鬼とラブコメするような人外っ子好きじゃ! ちなみに、ツッコミ担当じゃ!」

「姐さん! そりゃないだろ! ていうかラブコメしてねえし、人外好きは佐渡だろ! あと、ツッコミ担当でもねえ! せめて魔眼使いって紹介してくれよ!」

「じゃろう?」

「ふむ。貴重な人材とお見受けする」

「……この魔王……俺を魔眼使いとかじゃなくて、ツッコミ要員として貴重な人材って認識しやがったぞ!」

千手が叫ぶが、彼の訴えは伝わらない。

魔王は手を合わせた。

きっと夏樹に対してもツッコミ役として期待しているのだろう。

「そんで、四天王最弱の青山銀子じゃ! 魔剣フェチでBL大好きっ子じゃから、気をつけるんじゃぞ!」

「私の扱い悪すぎっす! 全部正しいっすけど、言い方ぁ!」

「びーえる?」

「ふふふ、魔王さんにはあとでお近づきの品をお送りさせていただきますっす! あ、ところで、余っている魔剣ってありませんか!?」

「ええい、そんなん後にしろ! そして――」

小梅は椅子から立ち上がると、純白の翼を広げ仰々しく紹介した。

「名誉顧問の神奈義政先生じゃ!」

「どうも、神奈義政です。征四郎おじさんと一緒にこの世界にやってきました。いろいろ、ご迷惑をおかけするかもしれませんがご容赦ください」

「…………この子、本当に子供であろうな?」

「え? 僕五歳だよ?」

「こんな貫禄のある五歳がおるか!」

魔王は、椅子に座り優雅に挨拶をする義政少年を見て変な汗を流した。

――こうして、由良夏樹と愉快な仲間たちの幹部と魔王と四天王の話が始まった。